能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|最終回 「なぜヘイトは無くならないのか」

「それ誰? 知らね」は「北斗の拳」の雑魚キャラのセリフ

吉田:批判にしてもいいこじらせ方というか。安直な何かに乗っかってるだけの罵りではない、憎んでるにしてもややこしい憎み方をしてるっていう。でも、Yahoo! は 「誰? 知らね」がすごい多いんですよね。

能町:訃報に対しても「誰? 知らね」みたいな。ひどいですよね。

ーー「誰? 知らね」っていうのは、吉田くんもよく言ってますけど、それによって自分が上の立場に立っているかのような錯覚であり、勘違いですよね。「知らない自分」を恥じた方がいいのに。

能町:「俺がお前を知らないのはお前が悪い」っていう。

吉田:「俺がお前を知らないのは、お前が大したことがない証拠!」っていう。言ってることが『北斗の拳』のザコキャラなんですよ、「知らね~えなあ!」ってケンシロウに言って一撃で殺されちゃうような。世の中、知っといた方がいいことの方が多いはずなんですけどね。ネットが普及して簡単に調べられるようになったときに、無茶苦茶便利でいい時代になったと思ったんですよ、いろんな辞書とかタレント名鑑とかプロレスの選手名鑑とか映画とかテレビとかのデータブック片手に調べながら原稿を書いてたのが、何でも一瞬で調べられるようになって。いろんな情報にアクセスしやすくなって、みんな物知りになっていくんじゃないかって感じの錯覚をしていたら。

能町:全然ですよね。

吉田:むしろワンアクションで調べられることを誰も調べなくなるっていう。ニュースも見出しを見るだけで本文もちゃんと読まないし、ましてやそのソースをちゃんと確認する人は皆無で。

能町:今はグーグル検索でトップに出てくるページがどんどんひどくなってるっていうのもあるし。誰かの名前を検索したら、必ず「○○って誰? 恋人はいる? 調べてみました!」っていう、フェイクですらない薄っぺらい情報サイトが大量に出てきて、邪魔でしょうがないです。調べようと思っても、有益なサイトにたどり着くまでが長すぎて。

吉田:その結果、調べても無駄って感じになっちゃってるのかもしれない。ちゃんと掘れば、いくらでも情報は出てくるはずなんですけどね。

―― 大変有意義な時間を僕自身も過ごさせて頂きました。これからもヘイトやフェイクなどの風潮が強くなってきたら釘を刺す意味でも、お二人にお願いしたいと思います。今日は有難うございました。(文中一部敬称略 聞き手◎久田将義)

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