アメリカ進出に成功した野茂英雄投手がもたらしたもの 国内スポーツメディアの問題点 日本選手だけにフォーカスし過ぎ|中川淳一郎

「松井秀喜は4打数1安打1打点(中略)なお、試合はヤンキースが2-5でレッドソックスに負けた」

ここの「中略」部分では、ヤンキースの松井がこの試合で守備も含めどのような活躍をしたか、観客の反応はどうだったか? 現地メディアはどう報じたか、などが記述されている。最後の「なお」という言葉の意味は、つまり、試合の結果はさておき、海外チーム所属の日本人選手の成績だけが重要で、試合の結果は二の次、ということだ。

私自身、こうした報道はあまり好きではない。というのも、アメリカに約5年住んでいたのだが、テニスのウインブルドン大会やサッカーW杯、オリンピックを除き、海外在住のアメリカ人選手の活躍ぶりを報じることなどないからだ。そこにアメリカのすさまじき実力とプライドを感じたのだ。

たとえば、スポーツ専門チャンネルのESPNが「ランディ・バースがこの日2本の本塁打を打つ大活躍をした。なお、試合はハンシンがキョジンに5-8で負けた」なんて報道をするわけがない。

彼らは他国のバスケリーグと野球リーグのことをNBA、MLBの格下とみており、それらのリーグに行った選手を「都落ち」扱いする。あくまでも国内リーグのことだけ報じれば良いと考えていたわけで、バースが阪神時代に三冠王を取ろうが大々的には報じなかったのでは。

こうした報道スタイルを知っているだけに、日本人メジャーリーガーやサッカー選手がどれだけ活躍したかを報道の中心に据えるやり方に違和感と劣等感を覚えてしまったのだ。

結局「オラが村のヒーロー」が「世界様」でスタメンを取ったことや、チームメイトと見事な連携をしたことなどを絶賛するようなスポーツ報道が今でも定着しているのである。

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