膣内に鉱石を挿入!? 妊活女性の弱みにつけこむ「アナルパール詐欺」とは
先日アップされた新年一発目の原稿のテーマに “妊活” を選び、柄ではない妙に気色悪い文章を書いておいたのには訳がある。本来私が取り上げたかった内容は以下に書くものなのだが、全体の分量が多くなりすぎたため2回に分けさせていただくことにしたのだ。
はてさて、いまから約1年前に東京BNにこのような記事が掲載されたのを覚えておいでだろうか。
『STAP細胞・小保方さんを批判できない!? エセ科学大国ニッポンの現状』
http://tablo.jp/case/society/news001326.html
この記事は当時旬だったSTAP細胞騒動と、私が過去に追いかけた様々な詐欺集団の手口を絡めて語った内容だが、”妊活” についても同様の悪質な詐欺が横行しており、その一部は上の記事で触れた 「波動~トルマリン~マイナスイオン……」といった詐欺師の系譜に連なっているものと思われる。
例えば、すでにネットでは局地的に有名なとある詐欺は、霊験あらたかな石ころを女性器の中に入れ、女性器を浄化しましょうとかなんとか、真言立川流の亜流かと思いたくなるような話になっている。
(※注 この手の輩は迂闊に触れるとムキになって訴えてくる事が予想されるため、相手の背景に何がいるのかが掴み切れていない現状では、訴訟対策も考えつつボヤかして書かねばならない事を予めお詫びしておく)
もう少し詳しくこの詐欺について説明すると、水晶・鉱石・銀などを組み合わせて作られたアクセサリー(アナルパール似)を膣に挿入することで子宮が温められて活性化するだとか何だとかで、結論としては「女性としての能力が上がりますよ」だとか「閉経後の方でも取り戻せますよ」といったウリ文句になっている。どうしてこのようにモヤモヤっとした書き方になってしまうかというと、効果をハッキリ謳うと薬事法に引っ掛かるため、詐欺をヤラかしている当人達が奥歯に物が挟まったような書き方しかしていないのだ。むしろ自分達で堂々と「効果はありません」と断言している始末で、それを紹介するこの記事も輪をかけてモヤモヤすることとなる。
そのくせ薬事法とは直接の関係が薄い部分になると途端に凶暴になり、既存の漢方や理屈の通った健康法の類を一刀両断にしているのが面白い。何でも昔から使われてきた効果の見込める漢方よりも、愛するパートナーとの充実した性生活よりも、このアクセサリーを膣に入れる方法の方がより “女性を取り戻す” のに効果的なんだとか。もし私が女性ならば、アナルパールの出来損ないのような代物を膣内に入れるよりは、パートナーとイチャイチャちゅっちゅした方がよほど健康的だと思うのだが、詐欺師氏によるとそうではないそうだ。しかも何が引っ掛かるって、この詐欺を生み出した人物は男なのである。月のものが来たこともないお前に女性器の何が解るのかと問うてみたい。
このアナルパール詐欺(いま命名)には当たり前のことながら方々から疑問の声が挙がっているが、そんなのどこ吹く風とばかりに、冊子に好き勝手なことを書き散らしている。例えば利用者は思春期の少女から閉経後の女性まで幅広いだとか、気になる雑菌に対するクリーニングの方法だとか、真っ当な専門家が目にしたら憤死してしまいそうなトンデモ大バーゲン状態なのだ。誇り高い変態ロリコン紳士として、思春期の少女の大事な膜をこんなインチキアナルパールに奪われる訳にはいかない。
多少趣味と私情が挟まったことは深くお詫びするが、このアナルパール詐欺の利用者の声の中には、もはやカルト宗教じみてて見なかった事にしたくなる “メンテナンス会” の報告なども含まれている。それが何かというと、女性達が定期的に愛用の偽アナルパールを持ち寄り、テグスやハサミやラジオペンチを駆使してゴム・石・金属部分をバラし、経血などの汚れを拭き取り、石を組み直し、再び膣内に入れるのだという。「新しいパートナーに出会ったようにスッキリ新鮮♪」などとのたまっている方もおられ、カルト宗教って恐ろしいなと。もし出会いのキッカケが違っていたら、彼女達は立派なラジライフっ子として、手作りの爆弾でもこしらえていたことだろう。
単純に考えて、膣内に鉱石や銀などの金属を挿入するなど、自分から女性器を壊しにかかっているも同然の愚行である。そのような詐欺を働く連中なのだから、鉱石の種類にしても銀にしても本物かどうか解ったものではない。仮に本当に鉱石と純銀を使っていたとしても、膣内にどのような化学物質が残留・堆積してしまうか、また雑菌が繁殖してしまうか、粘膜に傷を付けてしまうか、危険だらけで何から突っ込めばいいのか解らない有り様だ。
あまりにも偽アナルパール詐欺が面白すぎて本題がすっ飛んでしまったが、妊活に必死になるあまり心のバランスをおかしくすると、このようなバカバカしい詐欺にも容易く引っ掛かってしまうのである。どうしてこんな稚拙な詐欺が横行しているのかといえば「美味しい客がいる」からだ。需要がなければ詐欺商法が生き長らえる事はできないのだから、逆を言うとその詐欺が続いているのは詐欺師が食っていけるだけの金が作れている証拠と考えねばならない。この記事を読んで「そんなバカな」と感じたひとが想像する以上に犠牲者がいるのである。
こんな他人の弱みにつけ込む悪どい連中に金をふんだくられないためにも、ひとつ前の記事に書いたように、どのような結果になるにしろ心のバランスを保つ事を最優先しよう。私だって「お互いアラフォーだから、もし子供が出来なかったら犬でも飼おうね。子育てしたかったら養子を貰えないか相談しに行こう」なんて半分諦めつつ女房とやる事をやってみたらあっさり子供が出来たのだ。子供が出来ず苦しんでいる方に向けるには酷い言い様だと自覚しつつ、それでも申し上げるが、悩むあまり心が壊れてしまっては元も子もない。女性は特に性の健康と心の健康が直結しているのである。妊娠の可能性をなくさないためにも、今後の人生設計のためにも、まずはパートナーとの穏やかな時間・空間を大事にする事を第一に考えて欲しいと願う。
Written by 荒井禎雄
Photo by eliot williams, photo journal.
そんなバカな…。