【未解決事件の闇12】女性編集者失踪・容疑者Xが逮捕された別件の詳細
特集ルポ:未解決事件の闇12 ~伊勢・女性編集者失踪事件
容疑者Xは辻出紀子さんの事件で逮捕されることはなかった。警察が調べているうちに浮かび上がってきた別件で立件し逮捕されたのだ。それはホテトル嬢であるE子を逮捕監禁したというもので、辻出さんがいなくなる前年の1997年12月にXが犯行に及んだという容疑だった。その事件はどのようなものだったのか。調べていくと、辻出さんがなぜ失踪したのか。当時のE子の供述に辻出さんが失踪した理由が透けて見えてきた。
Xの実家は三重県南部の小さな町で実家の稼業を手伝いつつ、熱帯魚販売を営んでいた。さらには、かけもちで青年会議所(JC)の仕事にもかかわっていた。JCの仕事の関係でXは上京することが多く、E子と知り合ったのはそのタイミングでのことだった。1996年12月にXの客としてE子がついたのだ。
すぐに意気投合した二人は付き合うようになる。E子はXが既婚者だということは知っていたがたまに会うだけなので気にしなかったという。Xは上京するたびにE子のマンションに泊まるようになったが、セックスするか寝ているかだけなので、夏頃にE子は今後も付き合い続けるか揺れるようになった。
XはE子に対し「今どこにいるんや。何してるんや」と頻繁に電話をかけてくるようになった。E子が携帯の電源をしばらく切り、ふたたび電源を入れると留守電にはXの怒った声が入っていて、聞き終わり着信可能な状態にするとすぐにXから電話がかかってくるという調子で、多いときには10分に一回という頻度で電話をかけてくるようになった。
11月半ばに上京したXに借りていたお金を返すためにやむなく会ったところ、「やらせろ。金を払ってもやらせんのか」としつこく言ってきて、追いかけてきたXに拳で腹を殴られ、引きずり回されたという。
その一ヶ月後、Xは再び上京し、E子の引っ越した都心のマンションを見つけ出してやってきて、数日間、居座った。
彼女はXに借りていたお金をすべて返したが、Xは帰る様子がなく、それどころか、「これで終わると思うなよ。いつまでもおったる」と言って、居間のソファに陣取った。
Xの態度に腹を立てたE子は、自分がいなくなればXもあきらめて帰るだろうと考え、玄関から外に出ようとした。するとXは追いかけてきて、E子のパジャマの背中部分を引っ張り、E子の左の頬を拳で殴った。E子は殴られた反動でドアに後頭部をぶつけたという。
Xの激高ぶりにE子は抵抗をやめ、寝室へ行った。XはE子が逃げないようにソファを動かして監視した。そのうちXが部屋にやってきて、「金払ってもやらせてくれんのか」と言ってきた。「あんたとはお金もらってもやりたくないわ」とE子が言って断ったところ、Xは馬乗りになり、両手をE子の首に置いた。しばらくXはためらっていたようだったが、数分後思いっきり首を絞めてきた。身動きのとれなかったE子はされるがまま抵抗もできず、意識を遠のかせた。E子は死を覚悟し、されるがままとなった。Xは1時間ほど腰を振り、勝手に果てた。
さらにその後、XはE子の飼い犬のリードでE子を縛り付けた上、カッターナイフをE子の身体に押し当てて、「どうやって殺したろうかな、どうやって殺して欲しい」とE子を脅迫した、という。
「私はいまもXのことが恐くて仕方ありません。Xは怒らせると何をするかわからない人間なんです。私はXに二度と会いたくない。今回のように事情聴取のためXの写真を見るだけでも苦痛を感じるほどです。今でもXが私のところに来て何かするのではないかと思うと不安でたまりません。Xが捕まったら二度と外に出ないようにして下さい」
そう言ってE子は供述を終えている。
こうした生々しい供述は果たして本当なのだろうか。本当だ仮定すれば、失踪当日の夜の様子が類推できる。はっきりと物を言う辻出さんがXに迫られたとすれば、強く拒否したはずだ。Xはカッとし、辻出さんに対し、E子が受けた行為を繰り返したとしてもおかしくない。
ただし、E子の供述にも拘わらず無罪となった。そのことから、こうした供述の信憑性自体、鵜呑みにすることが出来ないのも確かなことだ。
Written Photo by 西牟田靖
事件は意外な展開を…。