【消費者庁の闇】施行された「食品表示法」の恐ろし過ぎる裏の顔

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 様々な情報に埋もれがちだったため、もしかするとご存知の方が少ないかもしれないが、実は食品表示法が4月1日から施行されている。 これまでは食品表示について主に下記の3つの法律で管理していた。

・食品衛生法(衛生上の管理や防止など)
・JAS法(品質管理や原材料の表示など)
・健康増進法(栄養改善など国民の健康増進)

 これらの法律と照らし合わせて、例えば原材料名・内容量・産地(JAS法の管轄) が正しく表示されたり、食品添加物やアレルギー反応を引き起こす可能性のある材料が明記される(健康増進法の管轄)など、国民の食の安全が守られていた。 賞味期限や保存方法(要冷蔵など)のほか、遺伝子組み換え原料に関する情報なども同様だ。

 今回の食品表示法は、これらを一括化し、カロリー・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量) の表示を義務付け、またアレルギーに関する表示もより細かく定められた。

 消費者庁はこれをもって、表示が解りやすくなる事で国民の健康増進に役立つと主張しているが、実はこの法律にはあまりに恐ろしい裏の顔がある。それが 『機能性表示食品』 だ。

 冒頭の説明では表示義務が厳しくなるだけの法律かのように受け取られるかもしれないが、実はこの 『機能性表示食品』 の存在は、それを帳消しにするどころかマイナス効果の方が大きいのではないかと思える危なすぎる緩和である。

 これまで医薬品(及び医薬部外品) 以外で効果を謳ったり、ミネラルやビタミンを表示してそれ(何らかの効果) を匂わせる事が許されていたのは保健機能食品(特定保健用食品=トクホ、栄養機能食品) だけだった。 トクホの場合は認定を受けるために臨床実験で効果を証明せねばならず、それなりに厳しく管理されていたと言える。

 ところが、3つ目のジャンルとして登場した 『機能性表示食品』 は実験結果による証明を必要とせず、専門家の論文といった研究発表があれば “情報ソース” として認められてしまうのだ。 それでも下記のような形で 「特定の効果が期待できると謳える」 ようになってしまう。

※以下、消費者庁が公開している機能性表示食品の届け出に関するガイドライン http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150330_guideline.pdf のP24~の内容を筆者要約

(1) 実際の商品を使って臨床実験を行い、その結果を科学的根拠としている場合
(2) 実際の商品を専門家が研究し、その結果を科学的根拠としている場合
(3) 効果が期待できる原材料に関する研究結果を科学的根拠としている場合

 上記のうち、1の場合はトクホと同等であるし、2の場合も商品自体を研究者が調べているという点でまあヨシとしよう。 ところが酷いのが3である。 これは商品自体を調べた訳でもなく 「中に○○という材料が入っていて、それは××に効くと言われてるよね」 というだけで、1と2と同様の 『機能性表示食品』 として流通させられるのだ。

 厳密に言えば、これらは何を根拠とするかによってパッケージへの表示方法が定められており、よくよく読んでみれば1と3には大きな書き方の違いがある。 簡単に説明すると、1の場合は 「○○が含まれているから××に効果がある」 と堂々と謳える。 しかし3の場合は 「この商品には○○が含まれている。 ○○は××に効果があると言われている」 としか書けない。 ポイントは、1の場合は商品自体と効果を直接ヒモ付け出来ている。 3の場合は、機能性が期待できる材料である○○と、それがもたらす効果である××はヒモ付けされているが、その商品自体と効果は直接的にヒモ付けされていない。 だが、これは単なる言葉遊びであって、『機能性表示食品』 のマークが付いた商品として売り場に列ぶのだから、末端の消費者がそこまで注視するか疑わしい。

 現実問題として、トクホの認定を受けている商品であっても過度の期待は出来なかったり、世に溢れる健康食品に対して 「効果がない」 と消費者庁にクレームが入ったりしている有り様なのに、それをさらに緩和するとは何が目的なのだろうか。 これについて、安倍首相はアベノミクスの規制緩和の一環として以前からこう述べていた。 「経済効果を狙ったものである」 と。 早い話が、政府が主導して 「バカを騙して金を搾り取る商法」 を後押しするという事なのだ。

 施行されてしまった法律に対して今更どうこう言っても始まらないが、4月の番組改変期を過ぎて、TVCMや番組などがどう変化するか注目しておくべきだろう。 まず 『機能性表示食品』 がいかなるものかマトモな説明をせず、上の1や2の商品と3の商品を混同させ、熱心な騙し商売を始める事は誰にでも想像できる。

 これによって、安部首相が言うようにある程度の “経済効果” は見込めるのかもしれない。 だが、国家としてその品性のなさはいかがなものか。 私は様々なテーマで 「現政府は弱者を締め上げ、絞り取る事しか考えていない」 と批判して来たが、このケースでは弱者は弱者でも、社会的弱者ではなく “情報弱者” が狙い撃ちされるのだ。

 地味ではあるが重大なテーマなので、次回は 『機能性表示食品』 と、その制度を推し進めた安倍政権の危うい結び付きについて書かせていただく。

Written by 荒井禎雄

Photo by USDAgov

体を壊す食品「ゼロ」表示の罠

想像以上にヤバい裏側。

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