【現地インタビュー】反安保でハンストを続ける学生たちに会いに行った

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 8月27日、学生たち4人がハンストをスタートした。安保法案の反対と安倍政権打倒が目的である。その様子がネットで公開されるやいなや、「点字ブロックの上に座っている」「日が出てる間、水も抜くイスラムの断食月よりぬるい」などと指摘が相次ぎ、たちまち炎上した。

 目的達成の見込みが薄いというのに、日常生活を犠牲にしてまでやってしまうのはなぜか。いったいどんな若者がハンストをやっているのか。彼らのことが気になり、大規模デモが行われた翌日の8月31日、話を聞きに行ってみた。

 場所は千代田区永田町。ハンスト現場である参議院会館前に出向くと、顔色の悪いかなり痩せている若者がひとり、目についた。彼がハンストを実行している学生らしい。その彼にさっそく声をかけてみたが、南無妙法蓮華経を唱えながら太鼓を叩く近くの団体のアピールの音にかき消され、声がなかなか聞こえない。彼の声は消え入りそうなほど小さく、注意して聞かないと良く聞き取れなかったのだ。以下はハンストをしているそのひとりの学生とのやりとりのすべてである。

●なぜハンストやってるのか?

--今で何日目ですか?

「今日8月31日で5日目です。かわりばんこではなく同時にやっています。食事はいっさいとってません」

--それこそラマダンみたいに日が落ちたら食べるとか。

「あれもデマです。夜も無期限でここに寝泊まりしているので(水やポカリは飲んでいるようだ)」

--学生さん?

「はい。上智大学外国語学科ロシア語学科2年で19歳。井田敬です」

--やっているのは何人?

「いま4人です。むこうで話をしてる2人もそうです(うち2人が翌日リタイア)」

--そもそもなんでハンスト?

「普通の手段だと安倍政権もきかないだろうと。これが最善の策だとは思ってないですけどね。僕らの危機感とか怒りとかを一番ストレート表現できる」

--安倍政権へはなぜ怒ってる?

「民意を無視する。これだけ多くの人が声を上げているというのに。要は舐められているんでしょう」

--自分たちや下の世代が戦争に駆り出される危機感も行動の原因ですか?

「もちろんそういったものもあります。僕らは徴兵されないかも知れないけど僕らと同世代やこれから大学生になる人たちが徴兵されるかもしれない。アメリカでは実際そういう経済徴兵制が行われていて、日本では起きないという絶対的な証拠がないので。実際、文科省のなかには経済徴兵制を主張したりする人間がいたりするので、やっぱりそういう不安というのはあります」

--デモで社会は変わるの?

「もちろんこれだけで変えられるとは思えない。支援する人が課題を持ち帰って、日常を変えていかないと政治は変わらないと思うんです。僕らは政権に主張すると同時に世間にも主張していきたい」

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●ハンストという「日常」

--どうやってすごしてるの?

「本読んでます。いろいろ本差し入れしてくれる人がいるので。今読んでるのは小林多喜二。あと丸山眞男とか。だんだん読めなくなってくるので今のうちに読んでおこうかと。あとになってくるときつくなってくるので」

--昨日のデモは参加した?

「前線に行ったわけではないですけど。これ(ハンスト用の道具)を国会前に持っていっただけです」

--最近雨が多いですけど大丈夫?

「体温奪われてけっこうきついです。ブルーシートかぶって寝たりしてるんですけど。このサバイバルシートはほんと暖かくていいですけどね」

--参院会館の人にここ出てけとか言われたりしないの?

「最初の日、日よけ雨よけを作ったんですよ。ブルーシートとポールで。すると警察にこれは工作物だと言われて撤去せざるをえなくて。ほんとはこのパラソルも最初はいろいろ言われてたんですけど、言われなくなって。車も言われなくなってきました。徐々に」

--食べてないと日に日にしんどくなったりするんですか?

「昨日までは全然大丈夫でしたが、今日はけっこうしんどいですね」

--眠れてますか?

「まあ基本的にはしっかり寝れてます」

--気持ち的に沈んできたり不安になったりとか?

「変わらずです」

--体重は減った?

「いや。測定していません」

--5日間でだいぶ痩せたんじゃないの?

「そうでもないと思いますよ。もともと172センチ50キロですし」

●「ハンスト」の反響はどうなのか?

--情報はどうやってとってるの? スマホも見れないだろうし。

「確かに見てないですね。まあスタッフがいろいろ教えてくれますけど」

--反対意見については? 

「最近はシカトしてます」

--批難する人は何も行動せずに口だけでしょ?

「(諦めたように)そういうもんですからね。何かすると叩かれる」

--中核派だとかセクトだとかいう噂があるけど、ほんと?

「『やや日刊カルト新聞』の主筆である藤倉という人が、暴飲暴食デモを決行するぞ、と知らせてきました。しかし僕らがカルトでないということがわかると、謝りに来ました(笑)」

--参った、ということは何かある?

「なりすましですね。『おにぎりを差し入れされ、ぱくぱく食べた。今、吐きそう』とか、書かれました」

●ハンスト学生の素顔

--将来やりたいことは?

「いろいろ勉強したいと思っています。大学がロシア語科なので、ロシアに留学したいですし、ゆくゆくはチェチェン問題とかの研究者になりたいですね。官公庁は無理なんじゃないでしょうか。顔とか名前とか出てしまってますからね」

--バイトをやったことある?

「家庭教師。いまもやってます。中間搾取があるので自分たちで会社作って合同会社という形で始めました」

--でもこれやってる間はできないよね?

「そうなんです」

--これは何かが達成されたらやめるんですか?

「もちろん安保法案の阻止が目的です。もしくはドクターストップがかかるまでやります」

--学業を大事にしろという声もありますが?

「どっちにしろ夏休みですからね(笑)」

 会う前は、もっと過激で思い詰めた感じの、話すとヒリヒリするような学生ではないかと想像していた。しかし実際、会って話して思ったのは、少し意識の高い尖ってはいるが、穏やかなごく普通の学生だということ。SEALDsの学生もそうだが、こうしたどこにでもいる学生たちが、デモやハンストを起こすぐらいに、政権に対する鬱憤や不安感がたまっているということなのかもしれない。

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※取材した8月31日から二日後の9月2日、ハンストは終了した。理由はドクターストップ。148時間目のことであった。

Written&Photo  by 西牟田靖

本で床は抜けるのか

無理はよくない。

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