【未解決事件の闇20】女性編集者失踪・遺体を遺棄した現場~海編

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特集ルポ:未解決事件の闇20~伊勢・女性編集者失踪事件

 辻出紀子さん失踪事件に関しての情報をとりまとめていた元同僚の女性のもとに、知らない男性から突然電話がかかってきた。

「昨年(2012年)の夏かな。「あの事件のころ、夜にXが無灯火で船を出すんを見たんや。場所は引本(尾鷲駅から北東に直線で約7キロ)。今はわし、そこにはおらんけど、Xのことは知ってる。友だちいうほどの仲やないけど」とのことでした」

 これが本当のことだとすると、男は14年もの間、警察には言わなかったということになる。この発言の信憑性はどうなのだろうか。元同僚の女性は言う。

「Xの自前の船かどうかはわかりません。しかし、Xはツージ(辻出さんのこと)を磯に連れていって取材しているわけなんで、自由に動かせる船を持ってたということでしょう。実際、よく船で出てたらしいですし。地元の人が言うに「あいつしか知らんポイントはいっぱいある」とのことです」

 これに関しては、林道での遺棄にかかわったんじゃないかと僕が疑ったNさんが船を持っていて、Xと何回か一緒に船に乗ったことがある、ということがわかっている。Xは船も操縦できるようだから、NさんがXに船の合い鍵の場所を教えていたとすれば、夜中でも航行は可能だ。とすると、真っ暗な夜にNさんの船を無灯火でXが勝手に操ったという可能性も出てくる。今までの強い確証を抱けない情報の数々に比べると、犯行に及んだかも知れないXの行動を目撃した唯一の証言という点で信頼できそうな気がした。

 Xは辻出さんを殺めた後、尾鷲近くにある自宅近くの港まで、車で遺体を載せて運び、夜が明けきらぬうちに、または何日かたった未明の時間に、無灯火で船を出し海上で遺棄し、証拠隠滅をはかったということではないだろうか。遺棄しただけでは内臓にガスがたまって浮上してくるため、足におもりをつけたとか、内臓を取り出してから捨てたとかの処理をしたのだろう。これなら山の現場と違って一人で遺棄が可能だ。

 この仮説には根拠がある。というのも、XとY子さんが一緒にテレビのサスペンスを見ているとき、Xは次のようにが話したというのだ。

「僕だったらもっとうまくやる。魚肉を粉々にする機械を使って魚の餌にするとか。少なくとも、腹を割いて捨てたら死体は浮いてこない」

※つづく

Written&Photo  by 西牟田靖

本で床は抜けるのか

シリーズも佳境に。

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