傍聴席から見た79歳女性の万引き犯 「お金を払いたくないな…もらっちゃおうかな」 彼女に下された判決とは

なぜ彼女は万引きをしてしまうのでしょうか?

本人質問ではその点を検察官は何度も問いただして話させようとしましたが、彼女の口から出るのは

「店に行くとモヤモヤってなって…ポッてなっちゃうんですよね」

「なんだかわからなくなって、つい手が出ちゃうというか…」

などの曖昧な言葉ばかりです。

この裁判では弁護人も被告人自身もクレプトマニア(窃盗症)である、というような主張は一切していません。傍聴席から聞いているかぎりでは、「本当にわからないんじゃないのか?」という感想をいだきました。

裁判官が語りかける言葉が法廷に空しく響いていました。

「モヤモヤとか、そういう言葉で片付けているとまた繰り返しますよ? 留置場に一晩泊まって辛い思いをしたんですよね? そういう思いをしても繰り返しちゃう人ってたくさんいますからね。もう少しで刑務所に行かなくちゃいけなくなるってわかってますか? あなた自身がちゃんと考えないと。…大丈夫ですか?」

彼女はどこかの店に行けば再び万引きを繰り返してしまう気がします。それもすぐにバレるような稚拙なやり方で。適切な監督者もおらず犯行の具体的な原因すらわからない以上、再犯を防ぐすべが見当たらないのです。

判決は懲役1年、執行猶予3年というものでした。もし次に再び捕まればほぼ確実に実刑判決が下されることになります。

違法行為である以上、事情はどうあれ罰は必ず受けなければなりません。明確な犯意を抱いて犯行に及んだ彼女を「許すべきだ」などと言う気は全くありません。

しかし彼女に罰を与えたその先に何があるのでしょうか。その罰に意義があるとはどうしても思えません。(取材・文◎鈴木孔明)

 

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