【トランプ大統領が国連で北をならず者と非難】僕が「北朝鮮国家」を許せない理由
トランプ米大統領が国連で北朝鮮を「ならず者」呼ばわりし、激しく批判しました。罵倒と言っても良いくらいのレベルでした。一つの国家を(日本は認めていないとは言え)、国連の場でこれほどまで激しく責めたのは珍しく、「ならず者」呼ばわりされた国は故フセイン大統領時代のイラクなどが思い浮かびます。同国と同様に対応を取っていくと宣言しているように映りました。
僕は北のミサイルについては「余計な事しやがって」と、常に思っています。人心惑わせる事は本当にやめて頂きたい。市井の人は、ネットでもグループLINEでもSNSでも「うち、四国住みなんだけど大丈夫かな」「地下室なんてあるわけないだろ」「ドラマ『24』みたいに暗殺部隊が動いている」などなど、居酒屋談義レベルですが、この話題についてはいろいろな意味で盛り上がってしまっています。多くの人が本気で心配しています。
僕は東京在住ですが、2011年東日本大震災で都内がパニックになったのを愕然と眺めていました。道路ではガソリンスタンドに長蛇の車列。割り込みしようものなら、怒鳴り合う声が聞こえてきましたし、海外へ避難した人もいたり、コンビニの水も売れ切れていました。ミサイルの直接被害も特に、ミサイルが着水する海を職場とする漁師が最も怖いと思いますが、大都市在住の人間としては、人の心につけこんだパニックが一番怖いと感じています。
【拉致問題を見ればトランプの北はならず者国家は当たっている】
取材者で取材途中、涙する事はプロの編集者として、よくありません。僕も涙もろくはない方ですが二度、涙ぐんでしまい、同行したライターに記事に書かれてしまった事があります。
一度めは光文社の新入社員が過労死した案件をライター藤吉雅春氏の取材同行したときでご遺族の母上の「息子の顔で追い浮かぶのは笑顔です」という言葉、その場で涙をこらえる事で出来ませんでした。
二回目は拉致問題です。
この、国が主導で行った非人道的犯罪行為を見るとトランプ大統領の「ならず者」という表現は当てはまります。トランプ大統領は国連で拉致問題についても触れましたが、この点については、その通りです。何て酷い事をする「国家」なんだ、と。
会員制情報誌「月刊選択」在籍時代、「家族会」の記事を担当しました。本来、月刊選択は匿名が基本ですが、もう時効でしょう。書き手は、韓国の大学に留学経験もあり共同通信時代、ソウル支局在籍経験もある、ジャーナリスト青木理氏にお願いしました。
家族会の方々はすべて、匿名を条件に取材したので名前を出す事はできませんが、さまざまな人に取材しました。皆さん、苦しみ悩んでおられました。当然です。
因みに「金日成の料理人」藤本健二氏の話も聞きました。正直胡散臭く、当時北朝鮮について語れる人が少ないため、彼は北についての番組に彼は出ずっぱりでしたので、一回のギャラが数十万円だと聞いた事があります。
取材は、青木氏の手腕もあって、順調に進んでいましたが、その中で、ある家族にインタビュー交渉をした時の事は忘れられません。
どうしてもお話を聞きたいという旨、選択出版が当時あった新橋近くの路上で電話交渉をしていました。ご家族は年老いた父母でした。コートを着ていても寒い時期だったのを覚えています。
何とか現場に行って、直接その家族の方の話を聞きたいとお願いをしました。結果、健康を理由に断られるのですが、健康状態はかなり深刻でしたのでこれ以上、体に負担をかける事は出来ないと判断し、断念しました。が、電話では刻々とご自分たちの心情を訴えていました。
電話は一時間近くにおよびました。ご母堂はまだ戻ってきていない人々について、また待っている家族についてとつとつと語ってくれました。どんなに辛い事なのか、を。多分ご母堂は泣いていたと思います。母の子への想いを光文社の件でもそうですが、痛いほど感じました。路上での電話は寒いので、タクシーに乗ったりすれば良かったのですが、その場から動けないでいました。
【残された家族の強い想い】
取材者は事件の当事者にはなれません。しかし、当事者性を思い、そしてなれないまでも当事者に近づく事が大切だとも思っています。拉致問題については拉致された人、待ち続ける家族がどんなに辛いか、少しでも当事者に近づけたら幸いです。
そのような取材体験をすると、このような人道にもとる犯罪行為をとった北朝鮮国家を、本当に許せないと感じました。
残された家族の想いを直接、受ける事は辛いですが、それ以上に残された家族と拉致被害者がどんなに酷い思いをされているのか。
「北朝鮮国家」はこの一点だけでも僕は許す事はできないのです(国民に対してではありません)。(久田将義)
≪参考文献≫
マンガ 金正恩入門―北朝鮮 若き独裁者の素顔― (TO文庫)