懲戒処分『大渕愛子弁護士の正体』 弁護士費用など詳しいことを載せましたので参考にしてください

houterasu.png弱きを助ける団体が事件現場となってしまった

 

弁護士会から懲戒処分 テレビ番組降板

『行列のできる法律相談所』のレギュラー出演者であった大渕愛子弁護士(東京弁護士会所属)が2016年8月、所属弁護士会から業務停止1か月という懲戒処分を受けました。同弁護士は、出演番組を降板、謝罪記者会見を行いました。

弁護士法では、「弁護士法又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったときは、懲戒を受ける」(弁護士法56条1項)と規定し、預かり金の横領や依頼された事件処理の放置、依頼者に対する虚偽説明などのほか、酔って暴行を働くなど私生活上の非行の場合にも所属弁護士会または日本弁護士連合会が弁護士を懲戒処分にしてきました。

では、彼女の場合、どのような「品位を失うべき非行」があったのでしょうか? 実は、依頼者であった女性との弁護料をめぐるトラブルなのです。

業界でも首をかしげざるを得ない『顧問料』の受領

大渕弁護士が受任したのは、養育費を支払わない夫に対しての養育費請求事件。これを法テラス経由で受任しました。かつての「財団法人法律扶助協会」を前身とする法テラスは経済的に恵まれない人に対する法的サービスの提供を主たる業務として運営されており、直ちに弁護士費用を私費で出せない依頼者に対し、弁護士費用を審査の上立て替え、依頼者からは事件終了後に無利子で返還してもらう「代理援助業務」を行っています。

弁護士が法テラスを利用する場合、元々経済的に余裕がない人からの依頼なのですから、法テラスから弁護士に対して支払われる弁護士費用立替金(この場合だと着手金10万5000円と必要経費2万円)以外のお金を名目のいかんに関わらず依頼者から受け取ってはならず、請求してもいけないというルールがあります。これは、国選弁護人が、被告人やその家族からいかなる経済的利益も受けてはならないのと同様、弁護士の廉潔性を維持するために当然のことです。

ところが、大渕弁護士の場合、自分で着手金を17万8500円と定め、法テラスから受けた金額との差額、さらに『顧問料』の名目で月額2万1000円を5か月分依頼者から別途取っていたのです。

これは完全なルール違反で、それに気付いた依頼者や法テラスは2011年6月大渕弁護士に返金するように請求、しかし彼女は拒否し、困り果てた依頼者が東京弁護士会に相談に行き、2011年10月理事者(会長・副会長といった弁護士会執行部)から説得されてやっと返金した…というのが認定された非行内容でした。
要するに、依頼者の無知に乗じて不当な名目で弁護料を取り、それを返さなかったという金銭トラブル。

しかし、解せないのが彼女がなぜ『顧問料』といったお金を取ろうと考えたかです。個人(それも一般人)に対する顧問料としては、相場よりかなり高い金額ですし、そもそも『顧問契約』とはこれまでの事件処理を通してお互い強い信頼関係が構築出来た元依頼者との間で5年・10年といった長い付き合いを見越して結ぶもの。単発的な個人相手に持ち出す話ではありません。

簡単な事件も処理出来ないから一人の依頼者から搾り取る

それに養育費請求事件は、標準以上の弁護士であれば決して難しい事件ではなく、長期間引っ張るよりも、さっさと家庭裁判所に調停の申立てを行い、早期に解決して次の仕事に移った方が事務所経営上もプラスです。
それができなかったのは、彼女が「一度捕まえた依頼者からはできる限り搾り取る」と考えたからと思われても仕方がありません。テレビに出てチヤホヤされることや有名人と結婚することは得意でも事件処理は苦手だったようです。
実際、彼女には「弁護料を払ったのにきちんとした事件処理をしてくれなかった」と苦情を述べる依頼者が多く、『被害者の会』まで結成されています。

弁護士急増時代の賢い弁護士の頼み方

司法制度改革で、弁護士が大量増員となった現在、事件処理が拙劣だったという依頼者トラブルが増加傾向にあります。要するに、弁護士に知識や経験がなく、どう処理していいのか弁護士自身分かっていないのです。弁護士を頼むなら、まずは自分のことをよく知っている知り合いに相談し、その弁護士が「自分には専門外なので」というときには、その分野に詳しい同業者を紹介してもらうのが無難でしょう。知名度と技量は必ずしも一致しません。

ちなみに、テレビから姿を消した大渕弁護士は、今ではテレビに復帰することもなく、週刊誌で細々と誌上法律相談の仕事をしているそうです。

取材・文◎駒場文一