【速報2】殺人事件現場となった富岡八幡宮はかつて悲惨な誘拐殺人が起きた場所だった!!【カブトムシ幼虫 誘拐殺人事件】

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深川の富岡八幡宮にて、女性宮司らが殺害された事件。

容疑者と見られる女性宮司の弟は自殺、その共犯らしき女性も亡くなったという。
発生から間もない現段階では詳細不明だが、宮司の家族間トラブルに原因があったようである。

富岡八幡宮の脇、八幡堀遊歩道に規制線が張られていた。どうやら遊歩道にかかる八幡橋の辺りが事件現場となったようだ。

ここは「堀」の名前通り、かつて水路として利用された川の跡地。だから歩道となった今も八幡橋が上にかかっていたり、旧新田橋が道路脇に保存されているのだ。

私はその映像を見て、ふと二年前の記憶がよみがえった。

当時、私は東京23区の怪談にまつわる場所を取材しており、その流れで富岡八幡宮を訪れていた。

1990年頃、この境内にて「小さな男の子が泣く声が聞こえる」という怪談が囁かれていたからだ。奥の林から、さめざめとすすり泣く男児の声を、地元民たちが何人も聞いていたのだという。

この噂にはおそらく、1986年5月に起きた、ある陰惨な土地の記憶がからんでいる。

当時、小学校一年生のHちゃんがさらわれた「カブトムシ幼虫 誘拐殺人事件」とも称される事件だ。

その日、友人の家から帰る途中のHちゃんは、首都高の高架下で、犯人である須田房雄(当時45)に話しかけられた。

「それなあに」と見た須田の手には、カブトムシの幼虫が握られていた。

「一緒に、この幼虫を地面に埋めようよ」

はじめから虫好きのHちゃんに狙いを絞った、計画的な犯行だった。

須田は立ち食いそば屋を起業するための資金繰りとして、Hちゃんを誘拐し身代金をせしめようと目論んだのだ。

二人は富岡八幡宮の奥へと行き、幼虫を土の中に埋めた。

そこで須田はいきなり、こぶし大の石にてHちゃんの顔面を十回近く殴打。さらに首を絞めて殺し、神社の空井戸にその体を投げ込んだのである。

事前の調査、幼虫を用意する周到さに比べて、あまりに突発的な暴力の発露だ。
あるいは生きたままにするより、殺して井戸の奥に捨てたほうが手間がかからないと思ったのだろうか。

加えて凶悪なことに、須田はHちゃんが生きているものと騙って「1500万円の身代金を用意しろ」と両親に電話で要求。しかし身代金受け渡しに際して、張り込んでいた警官に逮捕されたのである。

その後、須田には死刑判決が下され、1995年に刑が執行された。

富岡八幡宮の奥から「男の子の泣き声」が聞こえる怪談は、明らかにこの事件を想起させるものだ。
私もHちゃん殺害現場である神社裏手を確認してみたが、問題の古井戸は発見できなかった。おそらく事件後に埋め立ててしまったと思われる。
ただ、明らかに何か円形のものを埋めた跡と、ポツリと置かれた地蔵菩薩の小さな石像が印象的だった。素直に考えれば、ここが井戸の跡地なのだろう。

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これは私の推測だが、「男の子の泣き声」の怪談は、井戸が撤去された後のタイミングでささやかれたのではないか。
事件を象徴するオブジェたる古井戸が無くなったことが、逆に「事件を忘れまい」とする反発のパワーを生み、怪談を生むこととなった。

私は常々、怪談の生まれる要素として事件・事故の記憶とともに、「かつて水があった場所」という要素が重要だと考えている。

「カブトムシ幼虫 誘拐殺人事件」の古井戸は、事件現場であるとともに元・水場でもあるという、怪談生成のための要素を両立していたのだ。

今回の殺人事件も、ほぼ同じポイントにて発生したものだ。さらには、かつて川だった元・水場の要素も兼ね備えている。

これは事件の顛末も明らかになっていない現時点で言うことではないのだろうが……。

もし数年後、この出来事を忘れ去ろうとするバイアスがかかった時、やはりその反発として怪談がささやかれることになるはずだ。

取材・文◎吉田悠軌