【現状ヤバいよ】いま、食えない弁護士が増殖中! 「軒弁」・「即独」・「携弁」を覚えておきましょう【司法制度改革】

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現在は、食えない弁護士増加中

 「食えない弁護士」「就職先がない弁護士」…あなたは、こんな弁護士がいると思いますか? 大半の人は「そんな人いないよ。いたとしても、相当問題がある人だけでしょ」と思うことでしょう。
ところが、現実にはこれがいるのです。しかも、決して少ない数ではありません。「就職先がない弁護士」が現れたのは、ひとえにこの業界における求人と求職の需給バランスが大きく崩れたためです。

現在、弁護士になる標準的コースは、大学の法学部を卒業後に2年間法科大学院に通い、司法試験にパスして司法研修所で1年間実務トレーニングを受けます。2回試験とよばれる司法研修所の卒業試験に合格すると、晴れて弁護士となる資格が得られ、どこかの弁護士事務所に就職して弁護士会に会員登録するのです(他にもいくつかのルートがあります)。

以前は、司法試験に合格した時点で既に弁護士事務所に就職が内定しており、司法研修所を卒業すると予定通り新人弁護士として就職する人が大半でした。司法研修所で実務を学んでいる間も生活に困らないように20万円ほどの給与が支給されていたのです。

ところが、法科大学院が出来て合格者が急増すると事情は一変。司法研修所入所前に就職先が決まるのは一部の幸運な人のみで、入所後、研修を受けながら事務所訪問や面接をして就職先を探さなければならなくなりました。修習期間中の給与も13万円程度とかなり減額され、法科大学院在学中に奨学金を借りた人も多いことから生活が大変です。

司法試験には合格しても、弁護士は辞退します

そこで、司法試験に合格しても司法研修所には行かない人、あるいは司法研修所には行くけれども卒業後は別の仕事に就く人がかなり出てきました。

人気なのは裁判所事務官などの国家公務員や地方自治体の法務担当といった地方公務員です。生活が安定し、お金が貯まればその時に弁護士への転身を考えてもいいし、今の職場が気に入れば法律知識を活かしてそのまま定年まで勤めてもいいというわけです。

一方、様々な事情から弁護士以外道はないという人は大変です。弁護士事務所の求人は既に飽和状態でもう出尽くした感があり、司法試験に一ケタの好成績で受かった人すら20通~30通の履歴書を送ってもどこからも就職を断られたケースがあります。

事務所に就職出来ないなら、軒弁・即独・携弁をやる

そこで、弁護士事務所に就職して固定給をもらうのが無理なら、どこかの弁護士事務所の机を借り、自分で営業して仕事を取ってくるスタイルが現れました。これを軒先を借りて弁護士業務をするので「軒弁」といいます。固定給もなければ先輩弁護士からの指導やアドバイスもなし。弁護士会費も自分で支払い、場合によっては、「貸机料」を取られるところもあるそうです。

「軒弁」すら無理な人は、もういきなり自分の事務所を起こすしかありません。これを卒業後に即独立する弁護士という意味で「即独」といいます。自宅アパートを「○○法律事務所」として弁護士会に登録し、一人親方の弁護士版をやるわけです。

即独した人に電話番の事務員なんかもちろんいません。そこで、自宅の加入電話番号宛てにかかってきた電話を携帯に転送するか、最初から連絡先を携帯番号にしておき依頼を受けるのです。これを携帯電話弁護士の意味で「携弁」といいますが、携弁には、当然、応接室なんてありませんからお客さんと会うのは「弁護士事務所に入っていくところを人に見られるのも困るでしょうから、面談は駅前の喫茶店で…」ということになります。

こうした弁護士さんは、人的・物的サポートがないため、スケジュール管理・現地調査・判例検索・文書作成等を全て自分でやらなければならず、余裕がありません。何よりも兄弟子弁護士からの指導や経験がなく、全てが初めての経験なのです。

人が弁護士に相談に行くのは、たいてい一生に一度。アナタは、こうした弁護士に頼みたいですか?
 では、どうしてこういう状況が生まれたのか、機会があればそのあたりをまた詳しくお話ししましょう。

取材・文◎駒場文一