関係当局が必死で揉み消すパチンコ三店方式の矛盾とは? 日本の賭博(ギャンブル)基礎知識編:3

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※この記事は、日刊ナックルズ勝手に編集会議(http://ch.nicovideo.jp/ndo)での松本和彦氏の発言を編集したものです。

【前回記事】
最も効果的なパチンコ業界の潰し方とは? 日本の賭博(ギャンブル)基礎知識編:2

――三店方式の問題点がよく解る実例とのことですが、まずはどんなネタからいきましょうか?

「じゃあまずはパチンコ業界人と警察のモヤモヤな関係がよく解る例から出そうか。これはしょっちゅうある事なんだけど、最近も川崎で景品交換所に偽造景品が持ち込まれて事件になったんだ。そういう事件の時って、普通だったら古物商が偽造品を掴まされたと訴え出ればいいだけだろ? ところが、その事件ではなぜかパチンコホールが警察に被害届を出しちゃったんだ」 

――え? 建前ではパチンコホールと古物商とは無関係なはずでしょう?

「そうだよ。ホール・古物商・景品問屋、それと客がそれぞれ独立した存在だからこその三店方式だよ。ホールもそんな事は百も承知だろうけど、なぜかホールの名義で偽造景品を掴まされたと訴え出ちゃったんだ。なんでか解るかい?」

――いえ、それって単なる自殺行為にしか思えません。

「そうだろ? でもオレがさっき言った古物台帳の話を思い出すと、なんとな~く解るんだ。仮に古物商が被害届を出したとしよう。そうしたら警察はまず被害に遭った古物商(換金所)に来るよな? その時に開口一番なんて言われると思う?」 

――まあ状況を説明してください、とかですか?

「それよりもっと手っ取り早い捜査方法があるだろ。前提・建前を考えれば。 『台帳を見せてください』 だろ?」

――あ!

「な? 偽造景品を買わせるなんて手の込んだ事をするんだから、当然それなりの大きな金額だろ? じゃあ台帳に記録が残ってるはずじゃないか。記録と保管の義務があるんだから。ところがそれはない訳だよ。すると古物商としての義務を果たしていないのだから、それはそれで詐欺被害もあるけど古物商自体に落ち度があるって話になるよな? 下手したら営業許可を取り消される可能性があるかもしれない。そうしたらその店では景品交換ができなくなるんだ」 

――でも仮に店がアゲられるような事になったらどうします?

「そんなもん2~3日の営業停止でお終いさ。それも前例があるから。パチンコ屋に人が来る理由は古物商があるから、金に替えられるからだろ? じゃあ何かあったら許可を取り消される可能性まであって、新しい換金所の設置にどれだけ時間が掛かるか解らない古物商と、普段から所轄の警察と仲良くしてて、何かあっても2~3日の営業停止で済むホールと、どっちがリスクを背負った方が得だろう?」

※ 補足 古物商の許可が取り消される場合

(1) 不正な手段で許可を受けたことが発覚した場合

(2) 許可を受けてから、六ヶ月以上営んでいない場合

(3) 三ヶ月以上所在が不明な場合

(4) 古物営業法に違反、または古物営業に関して他の法令に違反し、盗品等の売買防止や、盗品の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがある場合

(5) 古物営業法に基づく行政処分に違反した場合

――下手に古物商が訴え出て騒ぎになってやぶ蛇になるくらいなら……という話ですか?

「そうだろうな。それにこの時は警察の受け答えが胡散臭すぎたんだ。この件について問い合わせた人間が何人もいるらしいんだけど、警察署はなんて言ったと思う? 我々は詐欺被害の捜査をしているだけで、パチンコ屋が賭博か否かの判断をする必要なんかない、で終わらせたんだよ」

※ 補足 当時のニュース記事(共同通信社のWEBサイトから一部引用)

『川崎でパチンコ景品の偽物560万相当、詐欺で捜査』

16日午前11時半ごろ、川崎市高津区溝口のパチンコ店「エスパス」から「15日に景品交換所に持ち込まれた景品に偽物が混じっていた」と、高津署に届けがあった。高津署が確認したところ、店が15日に現金に交換した景品のうち、万年筆のペン先計約1120個(約560万円相当)が偽物と判明。同署は偽造景品による詐欺事件として捜査を始めた。

――さすが信頼と安心の神奈川県警様のシマですね!

「だろ? ネタとしては非常に面白いと思うんだけど、川崎の件は警察が 『詐欺の被害届しか受理してないからそれしか調べる必要はない』 だの、のらりくらりはぐらかしてウヤムヤだよ」

――そういえば、先ほども監督が仰ってましたが、景品の自社買いがバレて摘発されるパチンコホールの話はどうなんでしょう? それは揉み消されなかったんですか?

「あれは特に地方のホールでよくあるんだけど、三店方式の建前をどこまで守っているかで安全性が変わるよな。摘発されるのは、今のところ問屋から景品を仕入れていないケースだけだから、景品の問屋からの密告でもあるんじゃないか? 問屋を通すとマージンを取られるから、パチンコ冬の時代でそれすら捻出できなくて仕方なくっていう事情があるみたいよ。三店方式とは言うけど、もう一つ仲介業者が入って四店方式の場合もあるんだ。グレーゾーンの話だから話を濁すけど、大手チェーンの場合は “必要な建前を自前で用意して” 三店で収められるんだけど、個人経営の小さなホールとかだと、余計に業者を挟んで四店にして回してたりする。で、仲介がそれぞれマージンを取っていくから、 “自前で必要な建前を用意できない” 小さなホールは経費がかかり過ぎて経営が続けられないんだ」

※ 補足 『パチンコ店が景品「直買い」=違法換金容疑で3人逮捕』(時事通信社WEBより一部引用)

パチンコの景品を直接店内で買い取り、客に現金を渡したなどとして、警視庁保安課などは1日までに、風営法違反(景品の買い取り)容疑で、東京都文京区関口のパチンコ店「平洋」の社長栗原徹容疑者(64)ら3人を逮捕した。同課によると、同容疑でのパチンコ店摘発は都内初。「資金繰りに困ってやった」と容疑を認めており、同課は景品交換に伴う経費を浮かせる目的だったとみている。

 ◇

――さすがに密告があると警察も見て見ぬふりはできないと?

「だってさ、偽造景品のケースは確かに 『詐欺被害の訴えがあっただけだ!それ以外は調べる必要なんかない!』 と強弁できるじゃん? でも問屋すっ飛ばして直買いしてるケースだと、ホールの風営法違反自体を調べないといけなくなるだろ? どこが焦点かの問題だな」

――ところで、三店方式に絡む話なんですが、歌舞伎町に金スロがあったじゃないですか?

「それって、さくら通りにあった換金できるスロットゲーセンかい?」

――それです。あれって日本中でチェーン展開してて、今年のはじめ頃から摘発されまくってるって話はご存知ですか?

「あ~やっぱヤラれたんだ。でもさ、あそこって弁護士が太鼓判押してた業態なんだぜ? これならば絶対に摘発はされませんって」

――え、そうなんですか?

「そうだよ。だって三店方式を全部クリアしてるじゃん。それどころか、歌舞伎町の店なんかは普通のパチンコ屋でもやらない古物台帳の記入・保管もしっかり守ってたんだから。それが何の容疑でやられたの? 景品法か? 風営法か?」

――それが驚くことに、まず風営法でやられはしましたが、本丸は常習賭博なんです。チェーンの経営者達は軒並み常習賭博でアゲられていて、今年5~6月に執行猶予付きですが有罪になってます。

「えええええええ?????」

(次回に続く)

  次回、金スロとは具体的にどのようなシステムだったのか、また松本氏がなぜこれほど驚いたのかを解説します。三店方式の矛盾は、すでに憲法違反の領域に入っているのではないでしょうか?

Written by 荒井禎雄

Photo by パチンコのぞっとする都市伝説 [DVD]

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