「パチンコ業界の潰し方教えます」換金三店方式は憲法違反か? 日本の賭博(ギャンブル)基礎知識編:4

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※この記事は、日刊ナックルズ勝手に編集会議(http://ch.nicovideo.jp/ndo)での松本和彦氏の発言を編集したものです。

【前回記事】
関係当局が必死で揉み消すパチンコ三店方式の矛盾とは? 日本の賭博(ギャンブル)基礎知識編:3

――やっぱり松本監督ならびっくりするだろうと思いました。金スロは常習賭博なんですって!

「いやいやいや、それだと全国のパチンコホールがみんな常習賭博だと言われても弁解できねえぞ? なんで金スロが常習賭博になって、パチンコは合法なのかって説明はあったのかい? 金スロのどの部分が常習賭博なのかって説明だけでも知りたいんだけど」

※ 補足:金スロ関係者に風適法違反と常習賭博で相次ぎ有罪(業界誌・PLAY GRARHより引用)

 金箔カードで4号機を打たせ、最終的に換金もできる、いわゆる「金スロ」を販売するとともに、営業にもかかわっていた豊島晴次被告人に対して、東京地裁は6月6日、判決。風適法違反(無許可営業)、および常習賭博罪で懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡した。豊島被告人は福岡、兵庫、東京などの十数店舗に金スロを販売しただけでなく、2012年夏から暮れにかけて、もともとは販売先であった兵庫県尼崎市の「ドリームドライブ」の経営にも関与していたという。金スロについては、警視庁と福岡県警の合同捜査本部が今年1月以降、関係者らを相次ぎ逮捕。5月1日には、豊島被告人から機械を購入し、東京・新宿で金スロを経営していた猪爪直樹にも、同地裁で懲役1年、執行猶予3年の判決が言い渡されている。

 ◇

――それが具体的にどの部分がどう常習賭博になったのか情報がないんです。警視庁にでも問い合わせてみようかと思っているくらいで。時系列としては、まず新宿店の経営者が13年1月に風営法でアゲられて、翌2月に常習賭博で追加送検されました。その後は各地の金スロ関係者(経営者・古物商ら) が軒並み常習賭博でヤラれています。

「風営法の無許可営業ってのがまず気になるな。歌舞伎町の店は確か朝までやってたから、そこはオレも不思議に思ってたんだよ。でも8号の許可は絶対に取ってるはずだよな? それもなく店を開くとは思えないし、その部分も含めて絶対に逮捕はないっていう自信があった訳だし」

――8号ではなく7号と看做されたんじゃないですか?お前はゲーセンでも自販機設置業者でもなくパチンコ(スロット)屋だろうと。

「そうだな、後は風営法の許可を取っていなかったとしたら、10%ルールを守ってたかどうかなんだけど、どう考えても金スロは遊技に必要な面積が10%を超えてたと思うんだよ。バーって訳でもないしさ。だから、あれほど自信満々に絶対摘発されないって言っていたんだから、営業許可を取っていないなんてヘマはなかったはずなんだよ」

※ 補足:10%ルール

 店内にゲーム機の類が設置してあっても、それが床面積の10%未満であれば風営法の適用外とされる。レストランやバー等にゲーム機が置いてある場合を想定したルールなので、メインとなるサービスと、ゲーム遊技の比率を考慮した上で判断される。

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――最終目的は賭博でアゲる事だったでしょうが、取り急ぎ風営法でガラを押さえたって事かもしれませんね。その後に逮捕された関係者達は殆どが常習賭博だけですから。

※今更ですが、金スロの説明をしておきます

脱法パチスロ:「金スロ」賭博容疑で会社役員逮捕 (毎日新聞WEBより一部引用)

 「パチスロ『4号機』が合法で打てる」とかたり、脱法パチスロ「金スロ」で賭博をしたとして、警視庁などは1日、福岡県新宮町、会社役員、高岡伊久男(いくお)容疑者(51)を常習賭博容疑で逮捕したと発表した。金スロを考案した福岡市城南区、同、豊島晴次容疑者(65)=風営法違反(無許可営業)容疑で逮捕など=とフランチャイズ展開を狙って特許を取得。10年6月以降13都道府県で24店を開業させており、警察当局が警戒を強めていた。高岡容疑者の逮捕容疑は11年5月~12年10月、東京都新宿区の金スロ店で賭博をしたとされる。警視庁によると「賭博でない」と否認しているという。金スロは、金箔(きんぱく)付きカードの自動販売機を装ったパチスロ4号機。1000円でカード1枚を購入すると「おまけ」で30点がたまり、プレーできる。100点ごとに1枚がもらえ、併設の古物商が1枚300円で買い取る。

【金スロとは】

 上のニュースでおおよその説明はされているが、簡単に言うとゲームセンター・古本屋・旅館などに置かれている景品払い出し機能付きのスロット(のようなもの) を使い、賞品(景品) を併設された古物商に買い取らせる事で換金を可能にしていた。 客はまず席に着き、金箔カードの自動販売機に千円札を入れる。するとカードが出て来ると共に、スロット機のクレジットが “おまけで” 入る。後は通常の景品スロットのように遊び、クレジットが一定数を超えると金箔カードが更に払い出され、集まったカードは併設された古物商で買い取って貰える。

 ◇ 

――金スロのシステムはパチンコの三店方式を忠実に真似しているので、話題になり始めた頃に関係者達は自信満々でしたよね? これが違法なら全国のパチンコも同様に違法なはずだ、と。

「そうだよ。古物商に限っていえば、身分証の提示から取り引きの記入・保管の義務までキッチリ果たしていたから、パチンコ屋よりもしっかりと法律を守っていたくらいなんだよ。それが常習賭博って事は、大騒ぎしたらパチンコ業界にも大ダメージが行くぞ?」

――今年の5~6月に刑が確定しましたから、前例(判例) ができてしまいました。

「だからその判例をパチンコに当てはめる事だって可能なんだよ。法律の文面をストレートに解釈するならば。言ってみれば今回の事件で、警察および警察OBの天下りだ癒着だ特権だうんぬんというモヤモヤした手心が加わって、パチンコ業界だけはOKという話になっているに過ぎないと公になってしまった訳だ。判例という証拠を残して」

――確かに三店方式を守っているのにパチンコ業界の外にいたからヤラれたというだけですよね。

「でもそれって憲法で保障されている “法の下の平等” に反しているだろ? 憲法違反だぞこれ。同じ事をやってもパチンコ業界は裁かれないのに、それ以外だと常習賭博で犯罪だと言われてしまう。理由はモヤモヤしててよく解らない。こんな横暴が許されるはずないだろ?」

――こんなバカげた言葉遊びで誤魔化すようなマネを続けるくらいなら、法律を一新してしまって、とっととカジノでも合法化してしまえよと思いません?

「思う。日本の法律の作り方って万事後付けなんだよな。もともとある文面の後に、時代に合わせて追記していくようなもんだから、大本に矛盾があるとどんどん話がおかしくなる。風営法なんか特にそうなんだよ。ギャンブルに限らずエロの分野でも」

――クラブ摘発問題についても、随分とアホな発言をしてますよ? スクール水着を来た女子高生と踊るサービスも可能になってしまうから、クラブは規制の対象にしなければならない、ですって。

「なんだよそれ。スクール水着を来た女子高生って、児童福祉法なんかの範疇だろ? 風営法関係ないじゃん。だったらスクール水着の女子高生と何かする可能性のあるサービスはすべて風営法で縛られないといけない訳か? 書道教室とか、生け花教室とか、料理教室とか。それに老人介護なんかも規制しないと危ないな」

――そうですよ、女子高生が介護の必要な老人を水着を来てお風呂に入れる可能性があるから、老人介護なんかすぐに全面禁止にすべきですよ。でも本当にそんな子供騙しの言い訳を真顔でしているのが今の警察です。

「金スロの話に戻るけどさ、金スロ屋はどう考えても賭博ではあるんだよ。だから何らかの理由を付けて摘発しないとマズイ存在ではあったよな。それは当然なんだ。でもさ、摘発するならばまずは法律を変えるところから始めないと法治国家ではないよな? 今ある穴だらけの法律でパチンコ業界だけ守るのは不可能なんだよ」

――ではなぜ警察はそんな無理矢理な対応を続けるんでしょう? メンツの問題?

「法の整備を待たずに勝手に暴走してる感じはあるよな。まるで法を超えて活動する秘密警察だよ。それにパチンコの違法性をいまさら認めてしまうと、これまで何十年とパチンコ屋を放置してきた警察の罪が問われるだろ? 地元の警察官が見回りに来たついでに遊ぶと、妙に玉が出て、ホクホク顔で帰っていくとか、昭和の時代からあった話じゃないか。それが積もり積もってここまでグチャグチャになってしまったんだろう」

――なんだか警察の都合でヤクザを裏切って大失敗こいた歴史が繰り返される予感がします。昭和って、児玉誉士夫氏・山口組の三代目・田岡組長・自民党副総裁の名前が横一列にならぶ、日本プロレスなんて凄い組織があった時代なのに(笑)。

「な、昔は公の場所や地上波のTVに堂々とヤクザの大親分が出て来てたのに、突然暴力団追放だなんて言い出すから、ヤクザもんが地下に潜ってどうにもならなくなっちまった訳だし。日本の治安の悪化や息苦しさって警察が作ってるような気がするよ」 

――この金スロ問題って、今後どのように尾を引くと思いますか?

「パチンコの矛盾や警察の癒着をどうにかしたいならば、まずは大勢で金スロ関連の判例を持ち出す必要のある訴えを山ほど起こすべきだよ。金スロの三店方式が違法ならば、パチンコの三店方式も同様に違法だろうという訴えを退けるのは、相当難しいと思うよ? 仮に最初は今まで通りウヤムヤにされたとしても、その内にボロが出て、後付けで 『じゃあ金スロの判決はおかしくないか?』 という話になるかもしれない。これは1発2発でどうこうしようと考えちゃいけない。継続させていかないと意味がないな」 

――でもそうした市民運動がことごとく潰されるのが日本だと思いますが?

「でもさ、いまはカジノ推進派の議員もいるだろ? それに風営法や賭博に関する法律に疑問を感じてて、改正すべきだと訴えている弁護士だって何人もいる。そういう有志が集まって、立法・司法の側からもつつくべきだろうな。例えば在特会みたいなのが、朝鮮人憎さに私怨丸出しで暴れてるだけじゃ逆効果にしかならないよ。国を変えたいならばまず正攻法」

――なんでどちらかというとアウトローな立場の松本さんが法治国家の大前提に則って提案してるんでしょうね?(笑) 

「な? 自分勝手で横暴な警察よりも、オレみたいな日陰者の方が、よっぽど法律の怖さを知ってるんだよ。国を変えたいならば、まず法律を変える。その上でカジノ特区でも作って、いずれ滅びるであろうパチンコ業界の従事者の救済処置も考えて、なおかつ国の税収アップにも繋がるように一からシステムを組み立てて行く。そっちの方が、今の矛盾だらけで憲法違反の領域にまで悪化しちゃったパチンコ業界よりも、よっぽど健全な遊技になるだろ? 脱税だらけの業界や、おかしな法律、癒着や一部の人間の特権が不健全極まりないのに、健全な遊技もクソもないんだからさ」

Written by 荒井禎雄

Photo by Paul Martin Eldridge

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パチンコを止める(止めさせる)ために読む本

朝起きて、並んで……。

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