初期コミケのような胎動…フェティッシュ特化イベント「フェチフェス」とは
さすがHENTAI大国日本というべきか、今や “フェティッシュ” という括りで語られるジャンルは幅広く、ただ “フェチ系” を名乗るだけでは大分類過ぎて相手にして貰えない状況だ。ところが、あえてその “フェティッシュ” というザックリしたコンセプトを堂々と掲げ、大成功しているイベントがある。
【フェチフェス】 http://www.fetifes.com/
フェティッシュの名の下に、同人及びメーカー品の販売から、パフォーマンスショーや映画上映会までごった煮にしたイベント 『フェチフェス』 は、まさに爆発前夜と評すべきで、いずれコミケ的な存在に育っても不思議ではない胎動を感じさせる。
このイベントに出展する条件はただひとつ 「何らかのフェチであること」 で、毎回ひとつのイベントに押し込めて良いのか悩むようなバラエティに富んだ出展者が集まっている。
定番のコスプレはもとより、全身タイツ・リョナ・排泄物・吐しゃ物・ウェットアンドメッシーとエロジャンルだけでも様々。 エロ以外にも、サイバーパンク系の手作り衣装や、スチームパンク系の手作りグッズ、SM道具をモチーフにしたアクセサリーに、身体改造やボディサスペンション、さらには精巧な怪獣のソフビ人形まで、出展者がとことん拘っている物であれば、何でも 「フェティッシュである」 と認めてしまっているようだ。
その心意気が認められたのか、AVやSM業界のレジェンドや、氏賀Y太氏・駕籠真太郎氏・水龍敬氏といった有名漫画家、さらには浅草マルベル堂といった老舗店までもが参加している。 氏賀先生の猟奇作品を買いつつ、マルベル堂で自分のブロマイドが作れるイベントは、日本広しといえどもここだけだろう。
また物販以外では体験コーナーも数多く、布団圧縮袋のようなシステムで全身を圧縮して貰えたり、有名緊縛師に男女問わず縛り上げて貰えたり、美脚のお姉さまに思う存分踏み付けて貰えたり、プロレス技をかけて貰えたり、AVでしか見られない大掛かりな拷問器具をお試し出来たり、和式便器を下から覗けたりと、理屈ですんなり理解しろという方が無理な、あまりにもオトナ過ぎるテーマパーク状態である。
パフォーマンスショーも一線超えたものが多く、例えば延々と鳥肌実が演説しているかと思ったら、決してテレビでもネットでも放送できないようなアングラ映像の上映会が始まり、さらには伝説のストリッパー・ファイヤーヨーコさんが女性器で吹き矢を飛ばし火を吹き、佐々木孫悟空氏が生きた虫をボリボリ食い続けるなんて暴走を始めたりもする。
そう、『フェチフェス』 は 「よくわからないけどフェチって言っておけばいいんじゃね?」 といういい加減さは微塵もなく、「世にある全てのフェチを認める」 という本気さで突っ走っているのである。
その情熱はすでに通常のナンバリング回だけでは収まらず、リョナに特化したリョナフェスや、漫画家・水龍敬とのコラボイベント、果てには音楽とフェチを融合させたクラブイベント・フェチフェスナイトを開催するなど、派生イベントまで生まれている。
■すべてのフェチ(価値観) は対等の存在である
先ほど冒頭で 「フェチといっても幅広い」 と申し上げたが、だからこそ各属性の人間は普段は決して交わらない世界にいる。 仮に全身タイツフェチの人間にオーバーニーの絶対領域がいかにフェティッシュか説いてもピンと来ないだろう。 だが、この 『フェチフェス』 という空間においては、それら全てが等価値の物として扱われるのだ。
何かというと、すぐに表現規制だ、弾圧だと思考停止に陥ったかのような極論に走りがちな現代の日本にあって、この 「一度すべての価値観を認める」 という姿勢は非常に尊いものである。 文化を守るという一点において、他者の価値観や嗜好を尊重するのは大前提であると断言していい。 こうした発想が、普段日陰に追いやられている人々からしか生まれてこない事が、現在の日本の不幸なのかもしれない。
安全管理などの面も説明しておくと、まずこのイベント自体が18禁であり、当たり前だが過度の露出や痴漢・盗撮といった犯罪行為は固く禁じられている。 ブースの配置についても、ザックリとフロアごとにテーマが分けられており、なるべく近い(と思われる) 出展者を固めるようにしている。 したがってゾーニングの面でも充分な配慮がなされており、どうしても苦手な出展物があったとしても、見たくなければ近寄らねばいいだけだ。
「自分の趣味ではないけれど、折角だから……」 という隣の芝生を気軽に様子見できる空気感が、いかに自由で、それでいて秩序が守られているか、表現規制問題に興味のある方にこそ味わっていただきたいと切に願う。 『フェチフェス』 とは 「秩序あるカオス」 という、誰も損をしない場なのである。
■フェチフェスの現状
さて、この 『フェチフェス』 は、当初は18禁でフェチ特化という特殊性から、来場者数百人程度の規模を想定していたようだが、常に1,000人を超える参加者が集まるようになってしまい、ここ何回かは会場の狭さが問題視されている。 都内に18禁イベントに貸し出してくれる手頃なイベントスペースが中々ないため、普段AV撮影で使われているマンション型のスタジオを、一棟丸々借り切って開催しているのだ。 AVスタジオといっても造りはマンションなのだから、そこに1,000人(スタッフ・出展者含まず) 以上の人間が集まるというのはいささか窮屈だ。 スタッフ達は事故が起きないよう必死の対応に追われており、まさにひとつのムーブメントが “ハネる” 瞬間をリアルタイムで見ているような状況なのである。
次回は1月31日に千駄ヶ谷で開かれるので、見聞を広めたい方はぜひ参加してみて欲しい。
※ただし、入場にはチケットの購入(3,000円)が必要で、他にも土足厳禁などお約束事があるため、予めオフィシャルサイトで詳細確認を。
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『フェチフェス07』 http://www.fetifes.com/
開催日:2016年1月31日(日)
開催時間:13時~19時
入場料:3,000円
開催会場:千駄ヶ谷スタジオPスタジオ
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-16-3 シルヴァキングダムビル
土足厳禁 ※当日靴カバーをお渡しします
Written by 荒井禎雄