【書評】元ミリオン出版名物編集長が書いた実用書 『貯蓄ゼロでも老後に困らない7つの法則』(リイド社)

higabon.jpg

「貯蓄ゼロでも老後に困らない7つの法則」(リイド社)を読みました。
原作者の”赤塚敬”さんはミリオン出版時代の僕の上司であり、恩人です。伝説の雑誌「チャンプロード」「GON!」などを創刊しました。「GON!」の衛星雑誌を企画、「おんなGON!」を創刊すべく女性だけの編集部を作り『あかぐみ』を。「おとこGON!」という別冊を作ろうと「おとこGON!POWERS」を。また「別冊GON!」シリーズを試み「TV GON!」を。そして「GON!」の実話誌バージョンを作る為,『実話GON!ナックルズ』を立ち上げました。

「実話GON!ナックルズ」は二号か三号を不定期に作り、月刊誌としてスタートする時に僕が編集長になりました。その前に「ダークサイドJAPAN」を僕が創刊したのですが、それを認めて頂いたのも、編集長にして貰えたのも比嘉さん……あ、言っちゃいましたが赤塚敏さんの一言です。既に、インタビューでは比嘉健二さんとして答えているので、ここでは「比嘉さん」としておきます。

比嘉さんは、僕の印象で一言でいうと「全身これ編集者」です。そういう人は何人かいました。僕が接した人だけで挙げてみます。
ワニマガジン社の平田昌兵社長・会長。「噂の真相」の岡留安則元編集長。「週刊現代」の元木昌彦元編集長。ある年代から見ると、綺羅星のごとき名編集者たちです。
比嘉さんをエロ本編集者とだけ見るのは見解が違います。職業に貴賎は無し、メディアに貴賎無し。たまたま勤めた会社がエロ本出版社という事だけです。そして、その編集者、すなわち比嘉さんが優れていたのです。どこの出版社にいても、能力を発揮した事でしょう。

比嘉さんで印象深いのが、大体の雑誌を(野球に例えると)出塁させているという事です。本人は「全然」と言っていましたが、かなりのヒットメーカーです。特に、コンビニ雑誌を作らせれば名人でした。ライターの藤木TDCさんが、こんな例えを出していました。
「祭りで屋台が出る。それは人が多い時に多い所に出すわけだけど比嘉さんの雑誌も屋台みたいだ」と。
これはいい例えです。これを実践できるのは本当にすごい。誰にとっても、どこに人(読者)がいて、いつ・どこに集まるのかを判断するのがは難しい。それを比嘉さんは、嗅覚で可能にしてしまうのです。センスの塊です。

名物編集者が書いた実用書とは?

どちらかと言えば「雑誌らしい雑誌」を制作していた比嘉さんが、今回は実用書の原作を書きました。
メジャーな大マスコミに、敢えて背を向けて存在感を見せつけた比嘉さんです。実用書というのはイメージと合わない気がしますが、これも屋台の店主方式です。売れてなんぼの編集稼業です。比嘉さんは、シルバー向けの市場に屋台を出してみようと思ったのです。
シルバー向けの雑誌や本は氾濫しています。週刊誌の特集は60歳以上の人向けのものばかりです。その市場ってもう満席じゃないの? という気持ちもありますが、比嘉さんはそれでも、「お客がいる」という屋台の店主目線で出版したと思います。

本書では主人公は比嘉さんがモデルです。別の媒体で「半分は自分の事」と答えています。なので、元部下だった僕にとっては少々生々しくもあり、懐かしくもあり、です。
内容は、生活レベルを下げる、保険の見直しなどが税理士によってアドバイスという形で書かれています。という意味では実用書なのですが、「生き方」みたいなものも同時に学べるのではないでしょうか。

プライドを捨てろ

という事だと思います。女より男の方が見栄をはる、とも言われています。女性の開き直りは男のそれより、突破力が強いです。「どういう暮らしをしても生きる事が大切だ」という本書は比嘉さんからシルバー世代へのメッセージのようにも受け取られます。

因みに、(本書に出てくるように)男はなぜそんなにフィリピンパブに救いを求めるのか。僕は修行不足でまだ理解出来ていません。女性はもっと分からないかも知れません。でも理解してあげて欲しいな、とこっそり耳打ちだけはしておきたいと思います。

文◎久田将義