【特集◎NHK紅白歌合戦の闇】モー娘。が紅白常連だった頃……後藤真希が歌った『オリビアを聴きながら』

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ここ数年、毎年のように紅白出場の有力候補として名前が挙がるものの、出場を逃し続けているのがモーニング娘。です。2017年は結成20周年のメモリアルイヤーでしたが、やっぱり出場とはなりませんでした。

モーニング娘。が紅白に初出場したのは1998年のこと。それから2007年まで10年連続で出場し、2008年からは10連続で不出場ということになります。10回の出場のうち、「モーニング娘。」として出場したのは2003年までの6回で、2004年以降はハロー! プロジェクトのほかのユニットと合同で1枠という形でした。ここで、モーニング娘。およびハロプロユニットの紅白出場歴を振り返ってみましょう。

1998年 第49回
モーニング娘。『抱いてHOLD ON ME!』

1999年 第50回
モーニング娘。『LOVEマシーン』

2000年 第51回 
モーニング娘。『ハッピーサマーウェディング大晦日スペシャル』

2001年 第52回
モーニング娘。『Mr.Moonlight 〜愛こそがザ☆ピ〜ス!〜』
松浦亜弥『LOVE涙色』

2002年 第53回
モーニング娘。『ここにいるぜぇ! そうだ! We’re ALIVE 2002 Ver.』
松浦亜弥『Yeah! めっちゃホリディ』
藤本美貴『ロマンティック 浮かれモード』

2003年 第54回
モーニング娘。『Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜』
松浦亜弥『ね〜え?』
後藤真希『オリビアを聴きながら』

2004年 第55回
モーニング娘。&W『2004年 愛・涙・キッス紅白スペシャル』
後藤真希&松浦亜弥『冬の童謡〜メリークリスマス&ハッピーニュー2005年〜』

2005年 第56回
松浦亜弥&DEF.DIVA&モーニング娘。『気がつけば好きすぎて♪盛り上がって♪LOVEマシーン!』

2006年 第57回
GAM&モーニング娘。『Thanks! 歩いてる 2006 Ambitious バージョン』

2007年 第58回
ハロー!プロジェクト10周年記念紅白スペシャル隊(モーニング娘。、Berryz工房、℃-ute)『Special LOVE Mix 〜幸せの平成20周年 Ver.〜』

2002年、2003年はハロプロで3枠確保していたのが、2004年には2枠、2005年以降は1枠に減少します。しかし、枠は減っても紅白に出したいメンバーはたくさんいるということなのか、複数のユニットをまとめて1枠にぶちこむという方式を採用。いわば”紅白用のユニットと”いう形でメドレーを披露しています。

ちなみに2004年の「後藤真希&松浦亜弥」は、元々この2人に安倍なつみを加えた3人組ユニット「後浦なつみ」で出場する予定だったのが、直前になって安倍が活動休止となったためにこういう形になったもの。「後浦なつみ」の持ち曲は披露せず、童謡とそれぞれのソロ曲をメドレーで歌うというなんともシュールな演目となりました。

後藤真希といえば、2003年のソロでの初出場時に、自身のオリジナル曲ではなく杏里の『オリビアを聴きながら』をカバーしています。選曲理由は「モーニング娘。のオーディションで歌った曲」ということで、後藤本人の意向だったと当時説明されていました。とはいっても、後藤のカバーバージョンがその時点で音源化されていたわけでもなかったし、そもそも本人選曲であれば自分の持ち曲を歌えばいいはずなのに、どうして?──と多くのファンは首を傾げました。

しかし、蓋を開けてみたらビックリ。単なるカバー曲を歌って終わるわけがないのがハロプロというもの。その演出がなかなかクレイジーな魅力にあふれていたのです。

後藤は、飯田圭織、安倍なつみ、矢口真里、石川梨華の4人をバックコーラスとして従えて登場。そして曲の冒頭、後藤のモーニング娘。としてのデビュー曲『LOVEマシーン』のイントロが流れ始めたかと思ったら、飯田&石川が後藤の背後から赤い衣装を剥ぎ取り、白いドレスに早変わりしたのです。

そこから後藤は『オリビアを聴きながら』をしっとりと歌うのですが、間奏でこれまた矢口&石川に衣装を脱がされ、赤いチューブトップにミニスカートというほとんど水着みたいな衣装に変身。そのまま半裸に近い姿で『オリビアを聴きながら』のクライマックスを歌い上げるという演出に、「なんだこれは」と結構な違和感を抱いた視聴者も多かったことでしょう。

しかし、コアなハロプロファンにしてみれば、「この意味不明な演出こそがハロプロ!」といった感覚だったはずです。楽曲とあまりリンクしない露出度の高い衣装といえば、ハロプロの専売特許のようなもの。『オリビアを聴きながら』に疑問を持っていたファンたちも、半裸で歌う後藤真希を見て、「ハロプロはこうでなくっちゃ!」と興奮していたことでしょう。そういう意味では、半裸衣装と最もかけ離れた『オリビアを聴きながら』という選曲も、むしろ必然だったのかも…なんていう解釈すら成立しそうです。

多様性が認められるべき今の時代、特殊性を帯びたエンターテインメントが、紅白歌合戦という日本中が注目する場で披露されることは、とても意義深いことだといえます。そういう意味では、半裸で歌い上げる『オリビアを聴きながら』のような常軌を逸したパフォーマンスをお茶の間で楽しむことができないというのは、あまりにも嘆かわしい現実です。
こんなに面白くてクレイジーな”ハロプロイズム”が10年にわたって大晦日のNHKで披露されていないということは、日本のエンタメ界の損失にほかなりません。NHKにはその事実に一刻も早く気づいてほしいものです。

文◎大塚ナギサ