警察白書から読み取れる性風俗産業の栄枯盛衰 法改正という「規制」はやっぱり厳しかった…

kabuki.jpg規制は怖い

 つい先日、既婚者の知人が奥様とラブホテルに行ったと言い出しました。その告白に続けて、「いまのラブホテルはスゲーんだぞ」とドヤ顔です。なんでも、ロビーから室内から内装が高級ホテル並みだったり、室内にプールがあったり、ルームサービスのご飯がかなり美味しかったり、いろいろとビックリしたんだとか。

 筆者は仕事柄、人気のラブホテルを取材させてもらったり、レジャーホテル(いわゆるラブホテル)の関連メーカーが集まる企業イベントについて耳にしたりしていたので、「それは結構前から、そんな感じみたいだよ」と教えてあげたわけです。すると、集まっていた40代男子たちが「マジで!」とか、「今度、行ってみよう」と食いつくわ食いつくわ。

 確かに、筆者も学生時代はそれなりにラブホテルを利用していましたが、40代近くなるとご無沙汰だなと。いま人気のラブホテルは若かりし頃を思い出す機会なんてないほど洗練されているみたいなので、筆者も含めて、利用したらそりゃ楽しいだろうと思いました。

 そんな機会があったことから、今回は性風俗に関連する産業についてのデータを調査してみます。

 最初、性風俗というのは「社会の裏側」と思っていたので、統計データ自体があるのだろうかと疑問でした。しかし、当たり前ですが、法律できちんと管理されている業種でもあります。そのため、警察庁が毎年まとめている「警察白書」で、性風俗営業のデータを掲載していました。

DATA_040_graph01.jpg警察庁「警察白書」のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)

 グラフ1はラブホテルの届出数の推移を示したグラフです。昭和59年にピークを迎え、その後は徐々に減少。平成18年には約4100軒台にまで落ち込みましたが、平成23年に6000軒台まで増加して、以降は微減となっています。ただ、平成29年度の5537軒を47都道府県で割ってみると、1都道府県あたり約117軒。まあ、それっぽい地域をちょっと探せば見つかりそうな気もして、それなりに存在しているのではないでしょうか。

 ちなみに昭和59年は風営法が改正された年で、ラブホテルについては「動力により振動し又は回転するベッド」「横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡〔特定用途鏡〕で面積が1平方メートル以上のもの」など、往年のラブホテル名物と呼ばれる設備を保有していることが義務付けられました。

 おそらく、一般ホテルを装ってラブホテルを営業するような業者と明確に差別化するという意図の規制強化ということなのでしょうが、そういう疑似ラブホ業が厳しくなることでビジネスチャンスと捉えられたのかもしれません。

 また、ガクンと減少している平成18年にも風営法が改正されていますが、こちらは届出制が強化されたことで、いろいろと面倒くさくなっちゃったのかもしれませんね。

DATA_040_graph02.jpg警察庁「警察白書」のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)

 次に、そのほかの性風俗営業店についても「警察白書」に掲載されていたのでご紹介しましょう。
 まず、グラフ2はラブホテル以外の性風俗営業の届出数推移になります。性風俗の王道ともいえる「ソープランド」は昭和の時代から微減というところでしょうか。「店舗型のファッションヘルス」は平成18年まで頑張っていて、その後にやや失速しています。「ストリップ」は昭和後期からそこまで多くなく、現在では100店舗程度が残るのみでした。

 そのなかで顕著に減少していたのは「アダルトショップ」で、昭和後半には2000軒を優に超えていたのが、平成29年には150軒という有り様。筆者の若かりし頃は薄暗く、いかにも怪しいテイスト満載のアダルトショップが繁華街の一角にあったものですが、そりゃ現代人はあんなところに行かないだろうと思います。

 とはいえ、「テンガ」が大流行したり、ドンキのような一般店で販売されていたり、アダルトグッズの需要は未だに健在。アンダーグラウンドなテイストを払拭して、オープンになったことで昔の胡散臭いショップが淘汰された結果なのでしょう。

 あと、ここでも風営法が改正された平成18年には、総じて結構な減少を見せています。やはり規制強化は性風俗産業にとって、大きな打撃になるんだろうなと。

 また、石原都知事の「歌舞伎町浄化作戦」が平成16年(2006年)暮れからスタートしているのも、多少は影響しているのかもしれません。浄化作戦の翌年となる平成17年は性風俗への規制が本格化していくなかでの〝駆け込み需要〟みたいな感じでしょうか。

DATA_040_graph03.jpg警察庁「警察白書」のデータをもとに、筆者がグラフ化しています(クリックで拡大)

 最後は、近年になって主流となりつつある性風俗産業の「派遣型ファッションヘルス」と「アダルトビデオ通信販売」の届出数の推移になります。双方とも、平成17年がピークで平成18年にガクンと下がり、その後は増加傾向を見せました。先述したように平成18年はいろいろと複雑な年だったのですが、「そこまで影響があるんだ」というくらい激減しているのが興味深い。なんだかんだ言って、法律って怖いですね。

 昭和から平成にかけて、性風俗業界ではさまざまな栄枯盛衰が見られます。もちろん、こちらはきちんと届出をしている業者さんだけに限ったデータなので、アンダーグラウンドではもっとたくさんのお店が営業しているはず(良いことではありませんよ!)。規制緩和という突風に吹かれながらも、いまだに生き残り続けていて、業種によっては復調していることを考えれば、”エロ”は強しと実感させられました。(文◎百園雷太)