【アジアの片隅でも観られている紅白歌合戦】ジャカルタの和食店でE-girlsを鑑賞したあとの暗黒置屋街|文◎新羽七助

年末年始は例年、バンコクから日本の実家に帰省し、大晦日はダウンタウンのガキ使「笑ってはいけない」シリーズ、正月は箱根駅伝などを見て過ごしていました。しかし、前年(2016〜17年)は休暇期間が短く、航空券も予想以上に高かったことから、インドネシアの首都ジャカルタで新年を迎えることにしました。

インドネシア政府の統計によると、同国の人口は2015年時点で約2億5500万人、ジャカルタは約1017万人で、東南アジア最大の人口を誇ります。また、ジャカルタは人口が多いにもかかわらず、地下鉄や高架鉄道といった公共交通機関が未整備のため、交通渋滞がとんでもないことになっています。スパやバー置屋といった売春施設は東西南北に広く分散しているため、夜遊びに出かけるのも一苦労です。

東南アジアで現在、渋滞が激しい都市を挙げるとすれば、ジャカルタがトップ。ミャンマーの最大都市ヤンゴンとバンコクが続くのではないでしょうか。

インドネシアは国民の約9割がイスラム教徒で、酒が飲みにくい点も注意を要します。外国人向けの高級スーパーや飲食店には置いてありますが、街中のコンビニやショッピングモールのフードコートなどでは売られていません。国産の「ビンタンビール」もありますが、東南アジア各国の人気ブランドと比べると、味はイマイチ。

大晦日は少しでも日本の雰囲気を味わおうと、ジャカルタの日本人向け歓楽街「ブロックM」を訪問しました。ただ、歓楽街とは言っても、バンコクのタニヤほどの活気はなく、日本料理店やカラオケ店が域内に適度に集まっている感じです。

知人のジャカルタ駐在員がおすすめする和食店「穂の香」に入りました。ビンタンビールを呷りつつ、店内のテレビでNHK紅白歌合戦を鑑賞。E-girlsはAmi(当時)が一番かわいいだとか、RADIO FISHのダンスはキレッキレだとか、自分なりの発見もあり、ふと気づくと2時間くらい見入っていました。

旧態依然とした古臭い印象を受ける紅白ですが、久しぶりに、しかも海外で見ると、意外とおもしろいものです。

暗黒置屋バーで年越し

とは言っても、ジャカルタまで来て紅白で年を越すわけにはいきません。美女がそろう高級スパが外国人客には人気ありますが、私には健全すぎて物足りないので、鉄道ジャカルタコタ駅近くのローカル置屋バー街を目指しました。

下町の薄暗く怪しい区域に4〜5軒の暗黒置屋バーが密集。治安の悪さはジャカルタで最高水準と予想します。最大規模の「ニューサリアユ」に突入。バンコク風俗で例えるならば、ゴーゴーバーと古式あんまのひな壇が合体したようなお店です。

しばらく飲んでいると、色黒ママさんが絡んできました。歳は50くらいでしょうか。ひな壇を指差し、片言の英語で「誰か選べ」と薦めてきます。「不細工しかいないので、選びようがない」と返答。すると、かわいい嬢が戻ってくるまでの時間稼ぎのつもりなのか、「私はこの店で10年以上働いているの」などと身の上話を始めました。

ママさんは見慣れない日本人客と話して気分が良くなってきたのか、なかなか席を離れようとしません。体を密着させ、私の手を握り、私の肩に頭を置いてこう呟きました。

「ハッピーニューイヤー」

ジャカルタで暗黒置屋バーのママと年越し……。二度とできない、と言うかしたくない稀有な体験でした。

文◎新羽七助

01.JPGジャカルタの渋滞は悪化の一途をたどっている

02.JPGインドネシア国産のビンタンビール。味はイマイチ

03.JPG「穂の香」のカウンター席で紅白歌合戦を鑑賞

04.JPG年越ししてしまった暗黒置屋バー「ニューサリアユ」