元「噂の真相」編集長・岡留安則さん逝去 岡留チルドレンと呼ばれて |久田将義

okadome.jpg岡留安則さんと沖縄にて

2月2日、朝未明。川端幹人「LITERA」編集長(元「噂の真相」副編集長)から電話がありました。休日の朝に、川端さんから電話があるのは珍しいです。少し嫌な予感がして電話を取りました。

元「噂の真相」岡留安則編集長が沖縄にて、肺がんで亡くなったとのこと。享年71歳。

まだまだご活躍して頂きたく、また僕たち若輩者に叱咤してほしいと思っており、大変、悲しく、残念で、個人的に力を落としています。

本サイトでも過去執筆してくださっていた:安倍政権が持つ「嫌な雰囲気」の正体|岡留安則コラム

2016年頃、川端幹人さんと「噂の真相」の編集部の数人の皆さんと、岡留さんが居住する沖縄に行きました。その頃に脳梗塞をわずらい入院されていましたが、2年経つので、本当に偶然「沖縄に行ってみようかな」と思っていた矢先でした。

「噂の真相」が果たした役割はジャーナリズムにおいて、大変重要だったことは僕などが生意気に言うまでもなく、です。

僕が法政大学の学生だった時、生協の本屋で「噂の真相」が棚刺しになっていました。背表紙が「朝生文化人を斬る」というようなタイトルだったと記憶しています。夢中になって読みました。ニューアカデミズムが台頭し、「宮崎勤事件からのサブカル」が隆盛になり、「噂の真相」は政治、社会だけでなく、こういった分野にも斬り込んでいきました。

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本文がザラ紙なのに、連載陣が豪華で、敬称略でさらに年代バラバラでいくと、筒井康隆、竹中労、ナンシー関、佐高信、田中康夫、宅八郎、本多勝一、高橋春男、荒木経惟、高杉弾、小田嶋隆など数えきれないほどの有能な書き手が執筆していたのも驚きでした。

そこから、毎月10日(「噂の真相」発売日)が楽しみになりました。24歳で編集者になってからも「噂の真相」は愛読しており、バイブルでした。

20代の終わり、ワニマガジン社時代に岡留安則さんと、おそらく新宿・ゴールデン街で初めてお会いしたと思うのですが、当時はカミソリのような雰囲気を出していました。

それからミリオン出版で「ダークサイドJAPAN」という雑誌を創刊し編集長になるのですが、「噂の真相」名物企画、「一行情報」に「ミリオン出版の久田編集長ダンサーと交際」と書かれたり、更にはグラビアに「ミリオン出版の久田編集長の路上キス写真」を掲載されたりしました。文中には「ミリオン出版のビンラディン」と僕の事を評されていました。多分、岡留さんの文章だと思います。

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前述したように編集長時代はピリピリした雰囲気を醸し出しており、僕が「ダ・カーポ」(廃刊・マガジンハウス)に岡留安則さんと松岡利康さん(鹿砦社代表取締役)との共著を「全共闘用語全開で何を言っているか分からない」という趣旨の書評を載せたのですが、ゴールデン街「L」で岡留さんと会ったときは「あれは間違っている」と怖い顔で迫られたのを覚えています。

また、訴訟、抗議などもめごとを数知れず受けてきた岡留さんが唯一、胃潰瘍になってしまった相手がライター・宅八郎さんでした。当時、僕も宅さんに原稿依頼していたのですが岡留さんが「君、止めておけ。俺が胃潰瘍になったんだから」と忠告をしてくれました。僕は「いや、大丈夫ですよ」と軽く答えていましたが、結果、十二指腸潰瘍に。

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「実話ナックルズ」編集長時代に「噂の真相」が黒字で休刊するのですが、最終号前に本橋信宏さんを聞き手に「孤高の編集者 岡留安則」というタイトルでインタビューを掲載しました。

沖縄に移住されてから数回ほど、経営されているスナックに飲みに行き、健筆をふるってもらおうと「TABLO」前身の「東京ブレイキングニュース」で原稿を書いて頂いています。
最後の原稿は2015年5月11日でした(リンクは上記に)。

いつの間にか、(間違っていたら申し訳ないのですが)川端幹人さんからだったと思いますが、「君と青木(理・ジャーナリスト)は岡留チルドレンだ」と言われるようになりました。

色々な社会事件、案件が起きた時、「この人ならどう考えるだろう」「この人なら、どう捉えるだろう」と思い、「この人」に電話で聞いたり飲みながら聞いていました。

それは僕にとって、書き手では、ルポライターの故・朝倉喬司さんであり、編集者では岡留安則さんでした。

「この人」たちがいなくなってしまいました。僕にとって、これほど寂しいことはありません。大好きな沖縄でゆっくりと安らかにお眠りください。有難うございました。(文◎久田将義)