「ネットウヨク論」第4回:インターネットで情報収集する際の基礎知識「自己洗脳を回避しよう(検索エンジンの罠)」

netuyoku4.JPG これまで何回かに分けて「ネットウヨク論」に入る前情報として、ネットで情報に触れる際の注意点を挙げてきた。より解りやすいようにと、特に2の「ネット上の情報はまず疑え」についてはいくつか実例を出して解説したが、お陰で話の本筋が遅々として進んでいない。まだ「ネットウヨク論」の本編に入っていないというのに……。

中学生レベルの語学力でも理解できるように丁寧に書いているだけなのだが、思わぬ長期連載になってしまいそうなので、読者の皆様には先に「長いです。ごめんなさい。」とお詫びしておく。

さて、ひとまずここまでの注意点をまとめると下記のようになる。

「1・確証バイアスに陥らない」

言い換えると、答えの決め打ちをして情報を集めない。

「2・ネット上の情報を鵜呑みにしない」

例え名のあるメディアの発信する情報であっても、まずは疑ってかかるくらいでちょうどいい。

こうした自己防衛をせずに、ネット上の膨大過ぎる情報に触れていると、自分にとって好ましい、望ましい、心地良い情報を提供してくれる場所に入り浸るようになり、反対意見を自らシャットアウトしてしまう。これでは視野が狭まるばかりか、詐欺やインチキにも引っ掛かりやすくなる。 

さらに症状が悪化すると自己洗脳状態に陥ってしまい、まるでカルト宗教にハマった信者かのようになってしまうのだが、こうした危険は何もネトウヨに限った話ではない。ごく普通の人であっても、誰もが頻繁に利用するであろう”あるサービス”の使い方を間違え続けるだけでおかしくなってしまうのだ。

その”あるサービス”が何かと言うと、表題にある「検索エンジン」である。

何かしら調べたいことがある場合に、おそらく大多数の人間が最初に検索エンジンを使うだろう。GoogleだろうとYahoo!だろうと、まずは検索キーワードを入力して、クローラーが拾って来た一覧の中から自分の見たいページへジャンプするという流れを辿る。

その調べたい内容が料理レシピや公共施設の詳細といった 「キレイなインターネット」 であれば問題はないのだが、政治・思想といったカテゴリーになると途端に危険度が増す。

例えば在特会のようなネトウヨと呼ばれている病人達がどうしてああなってしまったのか考えてみると、彼らだって最初から病んでいたとは思えない。おそらく間違ったネットの使い方をし続けた事が要因で偏った情報しか得られなくなり、結果として 「自分で自分を洗脳してしまった」 のではないかと考えられる。

もう少し噛み砕いて説明すると、ブラウザを通してネットを見るという作業には、「自分にとって都合の悪い情報や見聞きしたくない情報を遮断できる」 という特徴がある。これが現実社会であれば、聞きたくない話を聞かねばならないとか、見たくないものを見せられ、触れたくないものに触れさせられるといった状況が当たり前のようにあり、その度に上手く立ち回る方法を考えねばならないのだが、ネットはそうじゃない。自分の意志でページを開いたり閉じたり別のページに飛んだりという操作が可能なため、そうした我慢や苦労を一切せずに済んでしまうのだ。これでは情報や視点が偏って当たり前である。

ここは非常に大事な部分なので念入りにフローで説明する。

◇A君がネトウヨ脳になるまで◇

1.ここに在日朝鮮人に対して快く思ってないA君がいる。

2.A君は在日朝鮮人がどういう人種なのか調べるため、インターネットで情報収集する事にした。

3.検索エンジンに 「在日 朝鮮人」 と入力して、気になったページにジャンプした。

4.ジャンプした先が極右系のアングラサイトで、そこには在日朝鮮人がこれまでに日本で行って来たという悪事がこれでもかと書かれていた。

5.驚いたA君は、次に検索エンジンに 「在日 朝鮮人 悪事」 というキーワードを入れて再び検索してみた。

6.すると3の時よりもさらに酷い内容の在日朝鮮人問題が山ほど表示され、A君は検索エンジンに引っ掛かった個人サイトや政治団体のサイト、さらには2ちゃんねるのスレだけを必死に読み込んでいった。

7.A君は 「日本は危ないんじゃないか!?」 と思い、在日朝鮮人から日本を守るにはどうすればいいのか考えるようになった。

8.ある時A君は動画サイトで日本を在日朝鮮人から守るために街宣活動を続けているウヨク団体がある事を知り、彼らのサイトを日々の巡回コースに入れることにした。

9.ウヨク団体メンバー達のブログ等も読むようになり、A君はますます危機感を募らせ、いつしか彼らの街宣活動に参加するようになった。

10.街宣に参加してみると、同じように国を憂いた仲間達と出会え、A君を大事な同志として迎え入れてくれた。A君はまた次も運動に参加しよう、ついでにカンパもしようと思った。

=愛国聖戦士様の出来上がり。

 さて、上のフローを読んで考えて欲しい。A君はいったいどこで何を間違えてしまったのだろうか?

先に答えから言ってしまうが、実はこのフローは カルト宗教や自己啓発セミナーの類が人を洗脳する際の手順そのもの だという事に気付いただろうか?

まずA君は 「そもそも在日朝鮮人があまり好きではない」 という感情を持っていた。その前提で検索エンジンを使うとなると、最初から在日朝鮮人に対して悪意のある検索キーワードにしかならず、それでは在日朝鮮人を必要以上に悪く書き立てているページしか引っ掛からなくて当たり前だ。(フローの5の部分)

この時点で 「在日朝鮮人は絶対悪である」 という偏った情報しかブラウザに表示されなくなり、それ以外の意見・情報から隔離されてしまう。これがインターネットが自己洗脳ツールになりやすいという問題の核だと思う。

もしA君がここで 「反対意見がないか調べてみよう」 と思えていたら展開は違っていたのだが、残念ながら世の中はそこまで知力のある人間ばかりではない。多くの人々が自分の先入観を補足してくれるような情報に触れるだけで満足してしまうのである。(これが確証バイアス)

A君自身はネットで真実を探しているつもりでも、実際は 「日本人は無条件で正義である」 「在日朝鮮人は無条件で悪である」 といった自分の思い込みや願望を肯定してくれる情報だけにしか触れておらず、それ以外の反対意見を全て自分の手で遮断してしまった。これが “自己洗脳” の第一歩である。(フローの6~7の辺り)

そしてフローの10の部分が致命的だ。A君は在特会だのなんちゃら会だのの抗議行動・街宣活動に参加し、そこで同じような人種と出会って、「現実世界でも自分を肯定してくれる仲間がいる!」 と感じてしまった。これが不安を煽って極限までストレスを与えた後の “救済” というヤツで、いわば洗脳の最終段階である。(某有名バンドのヴォーカリストが化け物アゴ男とか罵られちゃうアレだ)

A君はただネットを使って情報を調べていただけなのに、偏った情報にだけ触れている内に不安感を煽られ、そこに日常のストレス・鬱憤の類が加わり、何かしなきゃいけない衝動に駆られ、そして自分を肯定してくれる居心地のいい場所に逃げ込んだ。

ネットの使い方を少し間違えただけで、無意識の内に自分自身をカルト宗教と全く同じ手口で洗脳してしまったのだ。

ちなみに今回の記事は、大部分を私が3年前に自ブログに書いた記事(http://ameblo.jp/oharan/entry-10667840461.html)からコピペして来た物なのだが、(手前味噌だが)今でも充分に通用する内容だと思う。

ネットに溢れている情報は人間が処理できる量を超えている。したがって、その中から自分にとって必要な情報だけをまとめてくれる検索エンジンやまとめブログ等はとても便利な存在だ。

しかし、世の中には「白と黒がハッキリしている案件」など殆どない。偏向のかかったキーワード設定によってまとめられた情報や、意図的に片側の意見だけがまとめられた情報ばかり目に入れていると、大事な何かを見落としていつか大恥をかくことになるだろう。(恥をかくだけならまだしも、事件の登場人物になる可能性すらある)

誰もが毎日のように使うであろう「検索エンジン」ひとつ取ってみても、実はこれだけの危険が潜んでいるのである。言うなれば”ネットとは利便性を追求して安全性を犠牲にした空間である”という事を覚えておこう。

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Written Photo by 荒井禎雄

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