知らなかった… 生活保護受給者のお葬式がこんなにも一般の人と違っていたなんて…

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生活保護受給者の最期も厳しく見張られる

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」
 言わずと知れた、日本国憲法第25条に明記されている全国民が保有する権利です。日本の生活保護制度はこの理念に基づいて運用されており、生活保護の内容の是非について議論される場合、この権利の範囲内であるのかどうかがひとつの大きな基準になります。

 空調機器の購入代、パソコンやスマホの通信代、パチンコ店での遊技代等、是非を問われる項目は数多くありますがそのほとんどが生活扶助と呼ばれる月々の生活費として支給されたお金の使い方についてです。

 しかし、生活保護費=毎月の生活扶助ではありません。

 例えば急な出費に対する扶助の1つに、葬祭扶助という扶助があります。この扶助は読んで字の如く、生活保護受給者(以下受給者)の葬儀にかかる費用の扶助になります。
 故人が受給者の場合、また喪主が受給者の場合がその対象で、おおよそ20万円が支給されます。
生活扶助のお金をこれに上乗せして葬儀代を支払うことは禁止されており、全ての受給者は例外なくこの範囲内で葬儀を執り行う必要があります。

 この約20万円で執り行われる葬儀ですが、実は一般的に葬儀と呼ばれるものとは全く異なるのです。含まれる内容は棺、骨壺、火葬(斎場までの搬送を含む)、基本的にこの3つのみです。

 遺影もなければ花もありません。
 お通夜もないですし、告別式もありません。
 お坊さんも来ません。
 したがって一切の宗教的儀式もありません。

 故人を棺に納め、火葬しお骨を回収する以外のことは何もさせてもらえないのです。棺を安置する場所として葬儀場のスペースを使うことはできますが、ただ単に安置させていただくだけです。
 物置に置いてあるのと大きくは変わりありません。
「健康で文化的な最低限度の生活」における葬儀とはこのような最期なのです。
 一般的に想像する家族葬のようなシンプルな葬儀の内容と比べてもかなり寂しい内容です。

実際の受給者の葬儀はどうなってるの?

 あくまで一例ですが、受給者の葬儀はこういう感じです。

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 意外と見た目は普通の葬儀に見えます。
 遺影、花、お焼香等も揃っておりシンプルな家族葬と比べても違いがわかりません。

 実はこれには訳があって、現場では葬儀会社が気を利かせて色々とサービスをしてくれるのです。お花だけなら…、遺影だけなら…、等親族の希望があれば協力的な葬儀会社がほとんどです。
 更には、役所に提出する20万円の請求書とは別に請求書をコッソリ作ってもらい、追加料金を余裕のある親族が自腹で払うようなこともあります。
 このご家族の葬儀の場合、仏具のセットを別会計で用意し、親しいお坊さんにお経をよんでいただいたそうです。
 役所の担当者も葬儀の内容までは厳しくチェックしておらず、ある程度までの範囲なら問題にはならないこともあります。

 しかし、これらは全て遺族からの希望があった場合の話であり、全てがこのような普通っぽく見える葬儀ではありません。
 そもそも受給者のほとんどは生前に金銭面で親族から見放されているわけです。死後の面倒を見たがらないケースが多くても不思議ではありません。
 つまり葬祭扶助とは葬儀を執り行う親族がいない場合によく使われることの多い制度であり、実際は民生委員や病院の方によって粛々と最低限の葬儀が執り行われていることも多いのです。

 生前から死後まで受給者はずっと孤独なのです。

 死は平等にやってくる、とよく言われますが最期のお別れの形は決して同じではないのではないか……受給者の最期を見るとそんなことを思わずにはいられません。(取材・文◎ドロタニー笹川)