カラテ大道塾・東孝の教育本「人と結びて有情を体す」を読んで…『ほぼ日刊 吉田豪』連載95
大道塾塾長・東孝先生の教育本『人と結びて有情を体す』(東京堂出版)、読了。東先生は00年に大学生だった長男の正哲さんを急性アルコール中毒で亡くされてるんですが、彼が亡くなった経緯はこういうものだったそうです。「原因は、大学のサークル仲間十三人で神奈川県藤沢市の鵠沼海岸・海浜公園に飲み会に行き」「深夜1時頃から飲み始めた仲間たちの前に、深夜2時過ぎ、『飲ませてくれ』と絡んできた地元のチンピラ風の二人組から仲間を遠ざけるために、一人で相手をしてウィスキーを飲み過ぎ、泥酔して」「やっと二人組を返したあと、仲間たちのほうに戻り、そのまま海風の吹くコンクリートのテラスの上に寝て」いたら、そのまま仲間に置いて帰られて亡くなった、と……。このとき彼を置いて帰ったサークル仲間の「俺は関係ね~よ」といった態度に絶望した東先生は、01年に文芸社から息子さんについて書いた101ページの本を出版。そのことについて、「短い生涯を『オーイ! まさぁーき!』という薄い本にまとめて訴えた」とのことなんですが、ここまで痛ましい出来事なのに「薄い本」という表現につい過剰反応しちゃう癖をなんとかしたいものです。娘さんが「今だから笑い話にできますが、父は、こっちの世界に兄を呼び出せないだろうか?と、とにかくいろんな本を買い込んで知識を集め、そのススメを試していました。鏡の前に座り、ろうそくを立てて部屋にこもって時間を過ごしたり、『この本はダメだ』『瞑想が足りない』などと言っていた」と証言しているのも泣けました。
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Written by 吉田豪
Photo by 人と結びて有情を体す
押忍。