女子プロレス”アノ壮絶喧嘩マッチ”の舞台裏|ほぼ週刊吉田豪

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 去年のいま頃、2015年2月2日のスターダム後楽園ホール大会で行われた世IV虎vs安川惡斗が壮絶なケンカ試合になったことは以前この連載でも軽く触れたんですが、このゴタゴタで引退したはずの世IV虎が「世志琥」に改名して現役復帰を発表。そんな彼女のインタビュー記事の内容がどうしても許せなかったようで、安川惡斗のドキュメンタリー映画『がむしゃら』の高原秀和監督がTwitter上でいろんなことをブチ撒けてました。ここでいくつか引用してみます。

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高原秀和 @takaharahdkz 2月20日
あの日、惡斗にはプロレスを逸脱した攻撃をしてくるだろうとの覚悟があった。映画の取材の日程の相談すると、顔が腫れているだろうから、少しでも試合から日を離してくれとお願いされていた。母親には口の中が切れているだろうから、食べやすいシチューにしてくれて食事のリクエストをしていた。

高原秀和 @takaharahdkz 2月20日
試合に言及しても、信じない人間は信じない。それでもいい。土下座しろから始まって、試合をしようとしないことに、惡斗にはお客さんを待たせて何やってんだとの思いが強かった。ゴングが鳴って、退治(原文ママ。正しくは「対峙」)しても動こうとしない。「来いよ」の一言に、そういうことなんだと思った。

高原秀和 @takaharahdkz 2月20日
こんな時でも先輩後輩の関係性を考えてしまう性格だ。先輩に言われて自分から攻撃しないと始まらないと悟った。それが先制攻撃とされるブーメランフックだ。それを合図のようにして、惡斗は攻撃され、最初の一発で鼻が折れた。やられたからやったというアリバイを作られた。狡猾だ。

高原秀和 @takaharahdkz 1日1日前
互いに納得ずくの街の喧嘩であっても、あれだけの大怪我を負わせたら傷害になる。成人であれば慰謝料なども含め社会的責任を伴う。リングの上だからといってうやむやにされてるが、そういうことだ。やったやられたとか、強い弱いの問題じゃない。誰もそういうことを教えないのか。

高原秀和 @takaharahdkz 1日1日前
実は当事者ではなく、善意の第三者によって傷害として訴えられていた。そうならないように惡斗は示談書にサインをした。それで訴えられずにすんでいる。

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 正直言って社会常識から言えば非常に納得のできる意見ではあるんですけど、どうしてもプロレス常識からすると納得いかないというか、これは惡斗のことをプロレスラーじゃなくて役者として判断しているようにしか思えないんですよね。「アクションシーンの撮影なのに相手役が寸止めせず本気で攻撃してきた」的な。

 プロレスは相手を怪我させるためのものではないのは当然として、それでも怪我しそうな攻撃を仕掛けてくる相手に対してちゃんと対処できなきゃプロレスラー失格だし、プロレスラーが「プロレスなのに相手が本気で攻撃してきた」って言ったら終わりなんですよ。正直言って実力的にはまだそれほどではなかった惡斗をプッシュして、こういう危なっかしい試合を組んだ団体側の責任でもあるし、対処できなかった惡斗の責任でもあると思います。

 ゴングが鳴っても相手が動かなかったからといって、そこで惡斗が最初にナックルパートという反則を仕掛けている以上やり返されるのはしょうがないし、プロレスをやりたいんだったらあそこはビンタで良かったはず。ナックルパートは「そのケンカ、買った」って合図にしかならないし、ケンカを買うのであればちゃんと対処しなきゃいけない。あそこでの選択肢は「相手が何をしてきてもプロレスに徹する」か「ケンカを買ってキッチリ対処する」か、そのどちらかだったはずなんですよ。

 リング上での出来事で、善意の第三者が傷害罪で訴えていたという件に至っては、社会常識としては正しいのかもしれないけれど、プロレス常識からしたら絶対に有り得ないわけで。あのとき橋本真也が小川直也を訴えていたら……とか、あのとき前田日明がアンドレ・ザ・ジャイアントを訴えていたら……とか、想像するだけで絶望的な気持ちになります。

Written by 吉田豪

Photo by -安川惡斗-映画『がむしゃら』オフィシャルページより

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女子プロレスって怖い!

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