高畑裕太が起こした”強姦致傷事件”の読み方|久田将義コラム

gf01a201502251100.jpg

 俳優の高畑祐太容疑者が強姦致傷容疑で前橋署に逮捕されたのは8月23日未明。いろいろなメディアが既報通り、映画のロケで宿泊していたビジネスホテルの40代の女性に午前2時ころ「アメニティグッズを持って来てほしい」とフロントに電話をし、持ってきたところ「性欲を抑えきれなくて」強姦致傷に及んだというものだ。

 本業の芝居のみならず、女優・高畑淳子の長男で、バラエティに出演させれば独特の「生意気トーク」で人気を博していた事もあり、テレビ、スポーツ紙は騒然となった。

 問題は、その報道のされ方である。これだけの有名人であり、日本テレビ系烈の「24時間テレビ」のキャスターにまで抜擢されているため、その人となりばかりの報道が目立つ。が、これは加害者が有名であろうがなかろうが、厳然たる刑事事件である。芸能スキャンダルではないのだ。被害者がいるのである。

 まず強姦致傷は(24日現在は「容疑」だが)、かなり罪状は重い。2007年に判決が下された「バッキ―事件」という案件をご記憶だろうか。AV事務所、通称「バッキ―」の代表・栗山竜服役囚らが懲役18年の刑に服している。罪状は以前にも女優に睡眠薬を飲ませたりと評判が悪かったせいもあり、強姦致傷で18年の実刑判決を受けた。そのころは殺人で一人を殺めたとして10年が相場と言われていたのだが、18年がどれほど重い罪か想像がつくであろう。

 それと同じ罪状の強姦致傷罪容疑で逮捕された高畑容疑者は、その事の重大さを認識しているだろうか。ワイドショーをザッピングしてみると、「事件」として扱う番組はあまりなく、「高畑容疑者の人となり」「母である高畑淳子さんの心痛」ばかりを報じている印象がある。

 が、最も重点的に論じなければならないのは高畑淳子さんの「心痛」より、40代の被害者女性の「心痛」ではないだろうか。前述したように強姦致傷は重い。このような事件の被害者になってしまった、女性の今後の人生はいかばかりか。

 客のリクエストで、ホテル従業員の通常のサービスとして提供しようとした部屋で、180cmはある体格のよい男性客(高畑容疑者)にいきなり、手を引っ張られ、ベッドに押し倒された時の恐怖を男性である僕には想像がつかない。外傷は全治一週間というから軽傷だが、心の傷は一生治らないかもしれないのだ。

 被害者にとっては高畑親子の仲睦まじさや、高畑容疑者がいかに人気者なのかはどうでもよい。関係ない。純粋に高畑容疑者のやらかした事を「刑事事件」として取り上げるべきなのである。もしかしたら、という想像は良くないのかもしれないが、手の軽傷以外にも傷つけられたのかも知れない。また、過去にも同様の「事件として成立しない事件」を高畑容疑者は起こしているのかも知れない。前橋署はそこは調べるだろうとは思う。事件には被害者がいる。この事を高畑祐太強姦致傷事件でも私たちは、忘れてはならないはずである。

Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)

Photo by Thomas Leuthard

 

生身の暴力論

責任の重さを知る。

amazon_associate_logo.jpg