日野皓正ビンタと映画「童貞。をプロデュース」騒動の共通点|ほぼ週刊吉田豪

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 日野皓正の体罰騒動で、ビンタされた中学生とその父親の「悪いのはこっちだし反省している」的なコメント(『週刊文春』情報)をTwitterでつぶやいたら異常なぐらい拡散されて、「暴力は絶対よくない! お前は体罰を肯定するのか!」とか「何の問題もないことを報道したマスゴミ許すまじ!」とか両極端なコメントが殺到しました。

 日野皓正の体罰騒動も、松江哲明監督の映画『童貞。をプロデュース』のトラブルも含めて、これって全部「そこに信頼関係や共犯関係はあったのか」って話だと思うんですよね。

 暴力は確かに良くないし、ボクもそういうのが昔から大嫌いだから一回も部活に入ったことないぐらいなんですけど、本当に全ての暴力が悪なのか?

 中学の卒業式で、ふと周りを見ると教師にしょっちゅう殴られてたはずのヤンキーがその教師と泣きながら抱き合ってたりして、そういうのも本当に苦手だったんですけど、でもやっぱりハードコミュニケーションによって生まれる絆とかってあると思うんですよ。

 空手経験者同士、いくつになっても挨拶代わりに軽く腹を殴ったりするハードコミュニケーション的な世界はそれはそれで微笑ましいし、そういう世界から距離を置いてきたボクは人間関係が全方位的に薄くなっていて、だからこそそんなことをすごい感じるわけです。

 そこに人間関係や共犯関係が成立していたのであれば、日野皓正の体罰騒動も第三者がとやかく言えるようなことじゃないし、それが成立していないのであれば何らかの罰を受けるべきってだけの話であって、一律「暴力は絶対によくない」「暴力を振るったらその時点でアウト」にしちゃうのはどうなのかなー、と。

 松江監督も、『童貞。をプロデュース』の主演の人と撮影上のことが原因で明らかに信頼関係も共犯関係も成立していなそうだったのに、DVD化もできなかったその映画の上映を本人に許可なくやり続けていたんだとしたら、それはトラブルにも発展するだろうし、全ては関係性の問題なんだと思いますよ。……という、ものすごい普通の話でした!

Written by 吉田豪

Photo by ニューヨーク・タイムズ Limited Edition