ミャンマー「流血のデモ弾圧」の裏にある「株と配当」…軍部が死んでも権力を離さない理由

英国政府は1日、ミャンマー国軍系の複合企業ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)を制裁指定した。先月には米国と連携して、国軍系のもうひとつの企業であるミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)も制裁対象に指定している。

クーデターに反対する市民を武力で弾圧し、国際社会の激しい避難を浴びているミャンマー軍は、国内の様々な利権を牛耳る大企業集団でもあるのだ。

国連人権理事会が2019年に発表した「ミャンマー軍の経済的利益」と題された報告書によると、軍はMEHLとMECの傘下に、確認されただけでも106社の企業を擁している。そこから生み出される莫大な利益が軍を支えると同時に、権力にしがみつかせているわけだ。

シンガポール紙ビジネス・タイムスの2月10日付の報道によると、MEHLの株は軍人や軍関係者に対する「アメとムチ」の役割を果たす。軍部への忠誠心が強いと見なされた軍人は、昇進するにつれて多くの株を買うことができ、多額の配当を受け取ることができる。反対に軍部に服従しなかったり反抗的だったりする人々は、その機会を失うわけだ。

特にMEHLは銀行、貿易、物流、建設からルビーやヒスイ、銅の採掘、観光、農業、タバコ、食品に至るまで、経済のほぼすべての分野でシェアを持ち、また外資系企業の多くが、MEHLが所有する不動産にオフィスや工場を構えているという。

そして、クーデターで実権を握ったミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官こそは、MEHLの筆頭株主のひとりだ。

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民主化が進んで政治から軍部が排除されれば、こうした利権構造は徐々に解体される可能性が高い。市民のデモに対する流血の弾圧の裏では、軍人たちの生々しい欲望が渦巻いているわけだ。(取材・文◎編集部)