新入社員にレッテルを付ける愚かしい慣習 今年は「AIチャットボットタイプ」
今年の新入生のタイプは「可能性は無限大 AIチャットボットタイプ」となった。
この発表は、2017年まで日本生産性本部が行い、以後産労総合研究所が行うようになった。2022年は「新感覚の二刀流タイプ」、2021年は「仲間が恋しいソロキャンプタイプ」、2020年は「結果が出せる?! 厚底シューズタイプ」だ。これが令和に入っての新入社員像だが、平成末期も見てみよう。
2019年は「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」で2018年は「SNSを駆使するチームパシュートタイプ」、2017年は「キャラクター捕獲ゲーム型」で2016年は「ドローン型」だ。いずれもそれっぽい説明がされており、ドローン型は「強い風(就職活動日程や経済状況などのめまぐるしい変化)にあおられたが、なんとか自律飛行を保ち、目標地点に着地(希望の内定を確保)できた者が多かった」とある。
要するに、その時に流行っているものを無理矢理新入社員に当てはめているだけである。もう、上記の「型」については説明がいらないだろう。若干分かりづらいのが2018年の「チームパシュートタイプ」だが、平昌冬季五輪で金メダルを獲得した女子日本代表のパシュートチームのこと。
毎年「バカバカしい」と思っていたのだが、私がこの分類を猛烈にアホだと思ったのが平成5年(1993年)の「もつ鍋型」だ。私自身東京の人間のため、モツ鍋を食べる習慣はなかったし、居酒屋に行くような年齢でもなかったため、モツ煮込みでさえ食べたことはなかった。
モツ鍋がしきりとメディアに取り上げられるようになったのは、1992年のクリスマスの時期だった。この頃はバブル崩壊直後にあたり、景気は停滞し、華やかだったカップルのクリスマスも地味になっていた。メディアはモツ鍋の登場をこのような文脈で紹介していた。
〈バブル時期のクリスマスは高級イタリアンやフレンチでディナーを食べた後、高級シティホテルの部屋で愛を確かめ合った若いカップル。しかし、バブル崩壊により、節約志向になり、決して高くはないモツ鍋を仲良く2人で食べ、本当の幸せを感じたのである。その後はどちらかの家へ行き、ささやかな幸せを味わうのである〉
要するに「身の丈にあった本当の幸せをついに日本人は発見した」という象徴がモツ鍋なのだ。モツ鍋型の新入社員の特徴については「一見得体知れずで厄介だが、煮ても焼いても食えそう。」とある。この発表に添えられる解説はすべて星占いと同じようなもので、それらしいことを並べているだけだ。