【観戦記】超RIZIN.2の惨劇と奇跡 朝倉未来のタップと鈴木千裕の歓喜

確かにプロ格闘技は人気商売です。キャラクターが重要です。ただ、強いだけでは人気は出ず、観客動員も見込めません。しかし、タレントでもありません。まずは、強くなければ。ボクシングの井上尚弥選手やMLBの大谷翔平選手を見れば、説明するまでもないでしょう。スーパースターは国内だけで強いのではなく、海外に出ても強くなければいけない時代なのです。

その点「SSAの歓喜」を体現した、キックボクサーとMMAの二刀流の鈴木千裕選手はどうなっていくのでしょう。ベラトールで二階級王者だったパトリシオ・ピットブルを得意のラッシュでTKO勝ち。自身も「皆、僕が敗けると思っている」と言っていた闘いに臨んでのアップセット。普段は、静かなプレス席も勝利の際、ほとんど皆、拍手を送っていました(筆者も)。それほど、「まさか」の一撃でした。鈴木選手の興奮し過ぎてイマイチ、内容が伝わらなかったマイクも個性となって、ファンに浸透していくのでしょうか。

入場曲の導入にカリスマ五味隆典選手「Scary」がかかり、試合中も頭を下げながらのジャブ連打は「師匠」五味選手を彷彿させるようでした。「天下無双の火の玉ボーイ」が五味選手なら「天下無双の稲妻ボーイ」を鈴木選手にあげても良いのではないでしょうか。

また、惜しくもドクターストップで流れてしまった、堀口恭司vs神龍誠のフライ級タイトルマッチにも触れておかなければなりません。前半の「ベラトールパート」と称されたベラトールの選手対日本人選手のマッチメイク。14時過ぎというまだ早すぎる時間帯に「My Time」がかかります。会場の雰囲気が一変します。堀口恭司という「王者」を迎える雰囲気に変わりました。堀口選手がいつもの、ポーカーフェイスで入場。「これが王者たる由縁か」。貫禄さえ感じる堀口選手のオーラ。神龍選手がどうかみついていくのか。本当に楽しみでした。

堀口選手の遠い距離からの「飛び込んでのカーフキック」「飛び込んでからのオーバーフック」「飛び込んでからのタックル」「飛び込んでからのテンカオ」……。切りがないので止めておきますが、引き出しの多すぎる「王者」に神龍選手はどう戦略を立てていたのか。残念ながら堀口選手の指が神龍選手の眼に入ってしまい無効試合。何とも言えない空気が会場を支配しました。

格闘技(MMA)の醍醐味をこれでもかと詰め込んだ試合ばかりでした。女子も井沢星花選手が難敵クレア・ロペス選手を一瞬のフロントチョークで仕留めたのは圧巻でした。女子格も井沢選手がどこまで世界に通用するのか、注目です。因みに、気になった点を一つ。僕は「格闘技村」にいませんから空気を読まず言うと、プレス席で「RIZINパートだけ」見に来る人は、格闘技業界を盛り上げようと思っているのか、朝倉未来選手らとその周囲のみを見ているだけなのか。疑問に思いました。(文・写真/久田将義)