岡江久美子さん遺作「車線変更‐キューポラを見上げて‐」上映 出演俳優村上弘明が能登半島地震の募金を呼び掛ける 

「その店にお互いの夫婦、四人で行きましょうという話をしていたんですけどね。あんなことになりましてね」と悼んだ。 村上が演じたのは、1964年東京オリンピックの聖火台も作った鋳物工業の街、埼玉県川口 市で鋳物工場を営む昭和風の世襲経営者。映画のサブタイトルの「キューポラ」は、鋳物工場の屋根から突き出た溶解炉の煙突のこと、鋳物の街川口を象徴している。

「胃袋が四つ欲しいなんて、控室では朗らかに 談笑していた岡江さんも撮影現場に向かうと 笑顔が消え、夫をたてる従順な妻に変身。 オンオフの切り替えも自在に役に没してました」 と回想した。

「この映画は地域の支えによって再生する家族の物語です。相互扶助の中で成り立っている社会。でも、今ネット社会になって、そういった本来の人と人との関係性が崩れかけているのではなかろうか。昭和の匂いを色濃く反映させたこの物語から今では失いかけた何かを見いだしてくれたら、大変嬉しく思います」とアピールした。

本作の製作自体が、地域の支えで再生したという経緯を持つ。2019年に撮影がほぼ終了していたにもかかわらず、コロナ禍で編集、仕上げが滞り、村上自身も本作品のお蔵入りを懸念した。

しかし、撮影舞台となった埼玉県川口市の市民団体などの支えで蘇り、村上は宣伝隊長に就任。それからは、クラウドファウンディングなどでいろんな媒体を通じ資金を募り、ついに2022年末に川口市で先行ロードショーを開催。その後、岩槻映画祭を皮切りに、岩手県盛岡、宮崎他を経て、東京初上演 に至った。

また、令和6年能登半島地震について、岩手県陸前高田市出身の村上は、「12年前の東日本大震災。あの光景は未だに私の脳裏に焼き付いています。今も避難場所で不安と悲しみの中で過ごしていらっしゃる方々の想いは察するに余りあります。なんとか道路が復旧して十分な支援が行き届くように願っています」と会場に設置した募金箱への募金も呼びかけた。)撮影・文@野島茂朗)