RIZINフライ級グランプリ総選挙 「プロ格闘技はエンタメか」論争

8月19日に『RIZIN WORLD GP 2025 FLY WEIGHT TOURNAMENT 2nd ROUND総選挙』(フライ級GP総選挙)が行われた。そこでは、フライ級の選手をファン・有識者が出場選手を投票で選ぶという形式が当用。イメージが最初は湧かなかったが、実際に見てみると「AKB総選挙」に非常に近いものだった。
扇久保博正選手、神龍誠選手、元谷友貴選手、アリベク・ガジャマト選手、伊藤祐樹選手の5選手のうち一人が「落選」するという事になる。結果、伊藤祐樹選手が落選したのだがSNS上で運営に一部のファンからその結果に対して、不満が起こるという事態が起こった。そこで気になったのが「RIZINはエンタメ団体なのですか」という批判。ただ、エンタメ自体はプロ興行は格闘技に限らず、プロ野球にしろ、サッカーにしろ、相撲にしろ少なからずエンタメ要素が必ず加わってくる。アマスポーツとプロの違いは、ここにある。
そもそもプロ格闘技とエンターテインメントの関係は、古くから密接に結びついてきた。競技性の高いスポーツでありながら、その興行的側面や演出によって観客を魅了するという点で、格闘技は単なるスポーツの枠を超えた存在となっている。
プロ格闘技は、勝敗を競うリアルな戦いであると同時に、人々の心を揺さぶる「物語」でもある。選手同士の因縁、試合前の挑発的なコメント、入場シーンの演出、そして試合後のドラマ――こうした要素が一体となって、観客に感情移入を促し、興奮や感動を生み出す。これは、まさにエンターテインメントの本質である。
特にアメリカのUFCや、日本のPRIDE、現在のRIZINなどは、スポーツとショービジネスの融合を強く意識して運営されている。たとえば、選手のキャラクター性を前面に出したプロモーション映像や、音楽と照明を駆使した入場演出は、観客の期待感を高める重要な要素だ。プロレスに近い演出も一部取り入れられ、ただの勝負ではなく「一つの作品」としての完成度が求められる場面も多い。
また、SNSの普及によって、選手個人が自らの物語を発信できる時代となった。試合以外の発言や日常の姿がファンの共感を呼び、観戦動機につながることも多い。エンタメ性のある発信は、試合の価値を高めるだけでなく、格闘技界全体の注目度を底上げする原動力にもなっている。
ただし、エンタメ性を重視しすぎるあまり、競技の純粋性が損なわれるという批判も存在する。実力よりも話題性のある選手が優遇されるケースや、過度な演出によってスポーツとしての信頼性が揺らぐこともある。このバランスをどう保つかが、プロ格闘技の運営における重要な課題の一つだ。
最終的に、プロ格闘技が人々を惹きつけるのは、「本物の戦い」を背景にした、誰もが共感できる人間ドラマが存在するからだ。その戦いをより多くの人に届け、感情を揺さぶるための手段として、エンターテインメントは不可欠な要素となっている。競技と演出、その両輪が揃って初めて、プロ格闘技は真の魅力を放つ。(文・写真@編集部)