トクリュウはなぜ無くならないのか メディアは「闇バイト」という呼称をやめるべき

トクリュウという言葉の意味が変化しているので、ここで少し整理したいと思う。匿名流動型犯罪という名称を当局がつけたものの、犯罪形態ではなく集団を指すようになってきた。
「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」は、摘発が続いているにもかかわらず後を絶たない。なぜ無くならないのか。その背景には、社会構造の変化、テクノロジーの進化、そして人間の心理を巧みに突く仕組みがある。
まず大きいのは、犯罪の“分業化”と“流動化”だ。トクリュウは、従来の暴力団のような固定的な組織ではない。SNSや闇バイト募集を通じて一時的にメンバーを集め、役割ごとに切り分けて犯行を実行する。指示役、リクルーター、資金管理役、実行犯が互いの素性を知らないまま動くため、全体像の解明が難しい。ひとつのグループを摘発しても、別のメンバー構成で即座に再編される。組織というより“犯罪のプラットフォーム”に近い。
次に、デジタル環境が追い風になっている。匿名性の高い通信アプリ、使い捨てアカウント、暗号資産、海外サーバー。これらは正規の技術でありながら、悪用されれば足取りを追いにくい。リクルートはSNSのダイレクトメッセージや求人投稿で行われ、応募者は軽い気持ちで接触してしまう。「高収入」「即日現金」といった言葉が、経済的に不安定な若者や困窮者の心に刺さる。
経済的背景も無視できない。非正規雇用の増加、物価上昇、将来不安。短時間で大金を得られるという幻想は、リスク認知を鈍らせる。実行役の多くは、重大犯罪の一端を担っているという実感が乏しいまま関与する。自分は“受け子”“出し子”など一部を担当しただけだという意識が、罪の重さを分断する。しかし、分業であっても共同正犯は成立しうる。軽い参加のつもりが、重い刑罰に直結する。
さらに、被害対象の拡大も持続要因だ。特殊詐欺、強盗、口座売買、個人情報の売買。高齢者だけでなく、オンラインに不慣れな層や、逆にデジタルに慣れた若年層も狙われる。犯罪の手口は日々アップデートされ、社会の隙間を探し続ける。ニュースで手口が報じられると、次の変種が生まれる“いたちごっこ”が続く。
取り締まりが強化されても無くならない理由は、供給と需要の両面が回っているからだ。供給側には「すぐ稼ぎたい」人材が流入し、需要側には詐取できる標的が存在する。加えて、匿名的ネットワークが仲介することで、従来の暴力団対策の枠組みだけでは対応しきれない。警察は通信解析や資金追跡、国際連携を強めているが、法制度と技術のアップデートは常に時間差がある。
では、どうすれば減らせるのか。第一に、入口対策だ。闇バイト募集の早期検知と削除、SNS事業者との連携、学校や地域での啓発。具体的な勧誘文面や典型的な手口を共有し、「怪しい募集は即通報」という文化を広げる。第二に、経済的セーフティネットの強化。困窮が犯罪勧誘の入口にならないよう、相談窓口や緊急支援を見えやすくする。第三に、被害予防の底上げ。金融機関のモニタリング高度化、二段階認証の徹底、家族間での合言葉設定など、日常的な対策の積み重ねが効く。
そして何より、社会全体で「軽い加担も重大犯罪」という認識を共有することが重要だ。トクリュウは固定的な“悪の組織”ではなく、私たちの周囲にある不安や分断、技術の隙を栄養に増殖する。摘発だけでは根絶できない。勧誘に乗らない、被害に遭わない、見かけたら通報する。その積み重ねが、流動する犯罪の土壌を痩せさせる現実的な道筋となる。(文@編集部)















