「輝いていた佐竹と予想外の結末」K-1格闘家が振り返る衝撃の第一回グランプリ
自民党圧勝に終わった先日の参議院選挙。皆さん投票に行きました? その中に「佐竹まさあき」という名前があったのを気づいていたでしょうか。
そうです。日本人K-1ファイターの先駆けとも言える”怪獣王子”こと佐竹雅昭です。残念がら落選してしまいましたが今後も勉強を続けて頑張って貰いたいです(上から目線ですみません)。
第一回K-1グランプリが開催されたのが1993年。フジテレビのLIVE UFOというイベントの中で行われました。当時、進学のために上京したばかりの私は行列に並んでチケットを買い求めていました。
通常3分5R、1日1試合で終わるのが主なキックボクシングの試合スタイルですが、K-1は3分3R、8人によるワンデートーナメント。初の試合形式、「誰が優勝するのか?」「一体どんな大会になるのか?」という空気に満ち溢れていました。
出場選手は、キックボクシングで前年まで8年間無敗のモーリス・スミス。そのスミスの無敗記録に終止符を打ったピーター・アーツ。そのアーツと前年引き分けた佐竹雅昭。異種格闘技戦で日本でも知名度のあったチャンプア・ゲッソンリット。巨漢のプロフットボーラー、トド・ハリウッド・ヘイズ。”キック界のタイソン”スタン・ザ・マンの欠場を受けての代打出場ながら、そのスタンと善戦した空手家の後川俊之。そして残る二人は無名のブランコ・シカテックとアーネスト・ホースト。
優勝候補はピーター・アーツ。モーリス・スミスと我らが期待の佐竹が対抗といった感じでした。
一回戦、佐竹VSヘイズ。佐竹得意のローキックが炸裂。KO勝利。
幸先の良いスタートに「うぉ!佐竹強ぇ!行けんじゃね?」と優勝の期待が高まります。
一回戦、シカティックVSチャンプア。シカティックがパンチでKO勝ち。
今では考えられない体格差の試合ですが当時はけっこう有りました。シカティックの見た目の不気味さが印象に残るものの「まぁ、体格違うから仕方ないよね。佐竹なら体格差がないしイケる!」と思ってました。
一回戦、スミスVS後川。スミス判定勝ち。
代打で緊急出場した後川が頑張るもののスミスが格の違いを見せつけて順当な勝利。
一回戦、アーツVSホースト。ホーストがテクニックを魅せつけて判定勝ち。優勝候補筆頭のアーツが負けたことによりざわつく場内。ざわ……ざわ……。
準決勝、佐竹VSシカティック。アーツが消えたことにより優勝の期待が高まった我らが佐竹。相手は無名のシカティックです。これはイケる! 誰もがそう思っていました。
が、結果はシカティックが衝撃のKO勝ち! これでシカティックの強さが印象づけられました。
準決勝はホーストVSスミス。
「アーツに勝ったホーストのテクニックは老練なスミスに通用するのか?テクニックならスミスのほうが上なんじゃないか?」
そんなふうに思って見ているとホーストの突然のハイキックにより糸の切れた操り人形のように力なく崩れ落ちるスミス。レフェリー即座に試合をストップ。これはK-1の歴史の中でもトップクラスの衝撃的なKOシーンでした。
その結果決勝はシカティックVSホーストという無名の二人によって争われることとなりましたが会場はしらけたムードはなく期待感に満ち溢れていました。
決勝はシカティックVSホースト。
アーツ、スミスという当時キックボクシング界の2トップを下したホーストが優勝する。そう思っていたシカティックの強烈なパンチがホーストにヒット。崩れ落ちるホースト。シカティック優勝、場内大爆発!
個人的にこの日一番印象に残ったのがホースト。細身の体でテクニックを魅せつけて衝撃的なKO勝ちの後に、これまた衝撃的なKO負け。これが後に前人未到のフォー・タイムス・チャンピオンを成し遂げるアーネスト・ホーストの日本初登場でした。
今振り返るとホーストはサップ戦、フィリォ戦など負けても印象に残るものが多かったような気がします。抜群のテクニックと打たれ弱さ。強さと脆さをもったところに惹きつけられます。
この後K-1は空前の格闘技ブームを巻き起こしていきます。
記念すべき第一回大会。筋書きのあるドラマや映画なら日本期待の佐竹がトップ選手のアーツ、スミスを下して優勝! となるところですが結末は全く違ったものに。
「観客の予想を越えた結末」それがK-1が発展した理由なのかもしれませんね。
(敬称略)
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Written by 大野崇
Photo by まっすぐに蹴る/角川書店
それが強さの秘訣