ベトナムにいた3人目の金正恩 日本では全く報道されていないキム・タイランド国外追放(?)騒動
米朝首脳会談が行われたベトナムの首都ハノイに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のそっくりさんが登場したニュースは日本でも報じられましたが、そのそっくりさん、実は2人いたことはあまり知られていません。
ハノイでは2月27~28日に米朝首脳会談が開かれましたが、それにあわせてハノイ入りした金委員長そっくりさんの香港在住コメディアン男性ハワードXさんが、トランプ米大統領そっくりさんでカナダ人男性のラッセル・ホワイトさんとともにハノイ中心部に姿を見せた様子をニュースで目にした人も多いのではないでしょうか。
しかしハワードXさんは首脳会談前の25日にベトナム当局から国外追放処分を受けています。
そのちょうど同じ25日、ハワードXさんと入れ替わるようにハノイ入りしたもう一人の金委員長そっくりさんがいたのです。
タイ人のキム・タイランドさん、本名ウテーン・ルアンセーントーンさん(41)がその人です。このキム・タイランドさん、2月25~27日の日程で弟とハノイ観光に行こうと航空券を予約したのは1月のこと。その後、米朝首脳会談の開催地がハノイに決まり、日程も重なったのは全くの偶然でした。
ハノイ空港到着時には入国を拒否されないよう金委員長の扮装はもちろんせず、一般的な旅行者として怪しまれないようラフな服装にする用心深さは忘れませんでした。
ハノイ市内に到着して街歩きを始めると早速地元市民や外国人旅行者が握手や記念撮影を求めてくる人気ぶりだったそうです。
問題は滞在3日目の27日でした。夜にトランプ大統領と金委員長が通訳だけを交えた1対1の会談を行った日です。その日の朝、金委員長の扮装で観光名所のホアンキエム湖を訪れた後、トランプ米大統領の宿泊ホテル近くへ立ち寄ったところ、またもや市民や外国人旅行者が写真撮影を求めて大勢集まってきたのです。
騒ぎに当局が気付かないわけがなく、タクシーに乗せられ警察署に連行されてしまいました。取り調べは意図についてを中心に2時間に及びましたが、怪しいところはないという結論に至り、調書を取られただけで済んだのは幸いでした。
その後、当局に付き添われ宿泊先のホテルで荷物をまとめてからハノイ空港へ送り届けられ、自分で予約していたバンコク行きの飛行機に予定どおり搭乗してタイへと帰国したのでした。
バンコク・スワンナプーム空港到着時にはマスコミが待ち構えていました。キム・タイランドさんはベトナム当局の対応について、恰好が金委員長に似ていて不適切なので協力をお願いしたいとのことだったが、当局の対応は良く、拘束されたわけではないと語りました。
その際、3月24日に実施されるタイ下院総選挙を告知するプラカードを掲げていました。実はキム・タイランドさんは看板広告を得意とする広告代理店業の経営者でもあり、30億円を稼ぐ若き実業家として名を馳せているのです。
自社の看板広告の宣伝もちゃっかり兼ねるだけでなく自分自身をも文字どおり広告塔に仕立てて宣伝するあたり、キム・タイランドさんもしたたかさでは外交交渉でトランプ米大統領と互角に渡り合う本物の金委員長に引けを取らないかもしれません。(取材・文◎赤熊賢)