よく言ったぞ菅田将暉! ドラマ「3年A組」最終回で柊先生が命を懸けて訴えたかったものとは――
日曜夜10時30分からというさほど、有利な時間帯でもないにもかかわらず、視聴率を常時、10%を越えていた「3年A組」が最終回。
舞台は高校。担任の柊一颯(菅田将暉)は普段、生徒にバカにされているようなダメ教師。その菅田将暉が爆弾を持って生徒全員を人質に立てこもる事件を起こします。それは、自分が担任しているクラスの、一人の女子生徒の自殺の原因追及の為でした。ガンで余命を宣告された柊先生の命を懸けた戦いが始まりました。
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果たして、女子生徒はなぜ自殺しなければならなかったのか。黒幕は誰なのか。生徒の一人なのか、先生の一人なのか。半グレが暗躍していたのか。一体、誰が女子生徒を自殺に追いやったのか。
ネタばれしないように言わなければなりませんが、最終回でようやく柊先生の口から具体的な名前が出ました。
「悪の教典」(貴志祐介著 主演伊藤英明)のような展開なのかと思いましたが、地上波でそんな残酷なことをやるはずもなく、それがかえって良い方向に行ったのではないでしょうか。
「3年A組」では事件の模様を人質である生徒がスマホでSNSに書き込み、それを見ていた不特定多数の人間にリプライを飛ばします。そして事件は拡散されていきました。
絶対勝ち目の戦いが世の中にいくつかあります。その中の一つは「不特定多数の匿名アカウントに喧嘩を売ること」です。しかし、勝ち目のない戦いに柊先生は命を懸けて言葉を発します。
立てこもり、10日目。ついにSNSのライブ配信でついに柊先生はなぜこんな事件を起こしたのか、不特定多数の視聴者に向かって明かします。
「俺がなぜ立てこもったのか全てを打ち明けます」
すぐリプライが柊先生に帰ってきます。「叩く準備は出来た」「楽しませてくれよ」「徹底的に糾弾してやる!」「死んで詫びろ!」
『3年A組』公式サイトより
「叩く準備は出来た? いいだろう、じゃあプレイボールってことで」と柊先生の最後の戦闘が開始されます。
柊先生が「犯人ではなくいい人」を証明する動画でした。流したあと書き込み「え? え? どういうこと」などが流れます。
「ハハハ! 混乱してるねえ! なのにけなすことは忘れない。これだよこれ!」「これが俺が立てこもった最大の理由だよ」。
立てこもり1日目。柊先生はSNSで叩かれます。
「お前たちは俺を凶悪犯としてネットで盛り上がった」(柊先生)
5日目。柊先生が立てこもってはいても生徒を誰も殺していない。そして実は他の教師が関わっていた(註・この事件の黒幕ではありません)ことが明らかになります。
「するとヒーローとして俺をネットで称えた」(柊先生)
6日目。某先生の犯行をにおわせたらネットでその先生に疑いが向けられました。
7日目。某先生を断定としてネットで追い詰めました。
8日目。某先生を証拠もないのにネットで徹底的に叩きました(註・叩かれる他に理由はあるのだが)。
9日目。柊先生が真犯人だと分かるとネットで叩きまくります。しかしどんでん返しの、10日目。全てが嘘だとわかりました。
「お前たちはこの10日間でどれだけ自分の意見を変えた? 信憑性のない情報を頼りにどれだけ心無い言葉をネットで浴びせた?」と柊先生。
リプライ「ウチら関係ねーし」。
その一人のリプに柊先生が即座に反応。
「関係ねえじゃねえんだよ。俺を娯楽としか思っていないあんたに言ってんだよ。おい、そこの! 周りに流されて意見を合わせる事しかできないお前に言ってんだよ!」
柊先生の最期の言葉が流れます。
「お前ら、影山(自殺した女子高生)の何を知ってんだよ。何にも知らねえだろ! 会った事もねえだろ! 話した事もねえだろ! 大して知りもしないのに何であんなに叩けるんだよ!」
リプライが書き込まれます。
「こいつウザい」「さっさと死んでくれよ」「キモー」
柊先生は呆れます。「ウザい、キモい、死ね。よくもまあそんなゲスなワードが出てくるもんだわ、恥ずかしい……」
そして再び、書き込みに対して、語りかけます。これ以上ないほど熱く。命を賭して。
「お前も! お前もお前も! 今までさんざん正義を振りかざしてたくせに分が悪くなった瞬間に子供のように責任転換を始める。自分を正当化するのに必死だなあ。つまんない生き方してんじゃねえぞ! 見苦いんだよ!」
「自分の親や友達に面向かって言えない言葉を見ず知らずの他人にぶつけんなよ! お前のストレスの発散に他人の心をえぐるなよ!」
「独りよがりに偏った正義感が束になることで人の命を奪えるかもしれないってことを。そこにいる君に! これを見ている貴方に! 一人一人の胸に刻んでほしいんだよ! 他人に同調するより、他人をけなすより、まずは自分を律して磨いて作っていくことが大切なんじゃないのか、てかそっちの方が楽しいだろ…」
柊先生が常々生徒に言っていた決まりセリフ「Let`think」は実はネットに書き込んでいる人、引いては視聴者に向けて言っている事が分かります。このライブ配信はその「Let`think」の言葉で終わります。
菅田将暉、渾身の演技でした。そしてテレビドラマの歴史に残る名セリフでした。この場面、何度も繰り返して見られます。柊先生はまさに「ヒーロー」でした。(文◎久田将義)