1月26日夕方、JR新宿駅構内で通り魔事件が発生したかのようなツイートが拡散した。しかし、「犯人は逃走中」とのつぶやきもあり、Twitterの一部では騒然としていた。そんなことをまったく知らなかった私は、夕方に新宿へ行き、夜まで歌舞伎町で飲んでいた。店内に入ってきた客に「新宿駅で通り魔事件があったようだ」と聞いて、そこでTwitter検索すると、一部のニュースサイトで真偽不明の情報が流れていたが、大手メディアは一行も報じていなかった。いったい何があったのか。
●ニュースメディアも報じた「事件」だったが詳細を調べてみると...
26日15時30過ぎに、一部のニュースサイトが報じたきっかけになったツイートがされている。そのツイートには新宿駅中央線のホームで、規制線が貼られて、たくさんの警察官がいる写真もあげられていた。たしかに、何かがあったようで、同じようなツイートは複数の人からなされていた。中には「犯人逃走中」とか、「刃物を持った通り魔がいる」といったものがなされていた。
それらのツイートを検索し、一部のネットニュースサイトでもそうした記事があがっていることを確認した。しかし、そのサイトも真偽不明とあった。では、大手メディアのニュースサイトではいったいどう報じられているのかと思い、アクセスしてみると、まったく報じられていない。可能性としては、発生したばかりで情報が混乱しているからと思ったが、ツイートは15時30分過ぎ。私がニュースサイトを見たのが22時過ぎ。いくらなんでも事実であれば、第一報が流れてもよい時間だ。
ニュース速報Japanの【新宿駅で通り魔事件か】というツイートが拡散。この原稿を書いている時点ですでに9000RT(リツイート)を超えている。それだけ拡散したとうことだ。私は新宿駅に向かった。駅付近はいつもよりも人が少ない気がしつつも、普段と変わらない様子だった。駅構内に入る時も何のアナウンスもなく、多くの人が自動改札機を通りかけていた。事実だとしても、時間が経っているし、現場検証は終わっている可能性もあるだろう。
ツイートにあった写真をみると、中央線の赤とシルバーのツートンカラーの車両だった。可能性があるのは、新宿駅7、8番ホームの(中央線快速のお茶の水・東京方面)、あるいは、16番線ホーム(中央線、総武線各駅停車の中野・三鷹方面)だ。両方覗いてみたが、何の変哲もなかった。駅員に「今日、なにか混乱ありましたか?」と聞くと、「え?」という顔をした。「Twitterで通り魔の情報が流れているんですけど...」とさらに突っ込んでみた。すると「自分は知らないっす」とそっけない。
実際は何もなかったのだろうか。このときもう一度、Twitter検索をしてみたら、「通り魔事件発生」と同時に、真偽不明で「デマか?」と疑問を呈するつぶやきや、デマと断定するものまであった。私もこれはデマだろうと思った。しかし、当初、写真をアップしていた人がいたが、仮にデマだとすると、その写真の出処はなんなのか。デマだとすれば、なぜ、このタイミングでツイートしなければならなかったのかが気になった。しかし、ツイートした人たちを見ても、意図的にデマを流しているようには読めなかった。
そこで、関係者に問い合わせた。情報を総合すると、30~40代の乗客が「セン千枚通しのようなもので足を刺された」と駅員に訴え出た。それを聞いた駅員が110番通報した。新宿署員が駆け付け、規制線をはった。写真はおそらく、このときもものだろう。ツイートの中には、アイスピックで人が刺された、とか、赤いアイスピックが落ちていたのをみた、といったものがあった。目撃者がいたとなれば、乗客の訴えた「千枚通し」が落ちていたのかもしれない。
しかし、署員が乗客に事情を聞いたところ、「わからない」と繰り返すだけだった。アイスピックで刺された跡もなく、乗客が主張する箇所が赤くなっているだけだったという。血も流れていない。報道規制がなされているのでは?というツイートもあったりしたが、「通り魔事件」そのものが事実として怪しいようだ。報道関係者は「他の乗客とぶつかって、刺されたと思ったのではないか」と見ているが、アイスピックが落ちていたことを目撃したというツイートもある。このアイスピックはいったい誰のものなのだろうか。
Written by 渋井哲也
Photo by Twitterアカウントより