万引きがやめられない! 摂食障害による女子大生万引き犯の告白

2018年04月13日 万引き 万引きがやめられない 女子大生 摂食障害

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 摂食障害の影響で万引きしたと主張する被告に対する温情判決は、もはや珍しいものではなくなった。

 たとえ執行猶予中に再犯を重ねたとしても、治療を継続することなどを約束して反省の弁を述べれば、再度の執行猶予を得られるケースが増えているのだ。相場より安い処分が下される事案も散見され、そのような病気であれば万引きをしても仕方ないのだという世論が、いつのまにか定着してきている。
 こうした背景には刑務所における処遇困難者を、これ以上増やせないという事情も垣間見える。しかし、社会的地位の高い人や外国人が万引きで捕捉された場合の厳しい末路を思えば、その犯罪格差に首を傾げたくもなる。

 摂食障害を抱える女子マラソン選手による執行猶予中の再犯事件以降、現場における被疑者の言い訳にも変化がみられる。報道の影響だろうが、摂食障害や認知症などの病気を理由に居直り、犯意を否定する被疑者が増えているのだ。
 実際の犯行現場を数多くみてきた筆者からすれば、彼ら(そのほとんどは女性であるが)の主張を鵜呑みにすることはできない。周囲を気にしながら商品を死角に持ち込み、鬼気迫る表情で素早く商品を隠す様子をみれば、明確な悪意と犯意をもって盗んでいることは明白なのだ。

 摂食障害を抱える万引き常習者は、1回の犯行で大量の商品(弁当、惣菜、菓子、パン、ドリンク、ダイエット食品、サプリメントなどが人気)を盗んでいく。捕まるまでの成功例を加味すれば、許容できないレベルの損失を生じさせており、その被害は深刻だ。
 コンスタントに損失を膨らませていく彼らに対する怒りや憎悪は、換金目的の窃盗団に対する感情と同列にあるといえるだろう。被害者である店舗側からすれば、万引き常習者の病気など関係なく、それに同情して許容することもない。


万引きするためだけに外出し、盗んできたモノを食べては吐く...


 つい先日、都内にあるスーパーで、若い女性を捕捉した時の話だ。素直に犯行を認めた彼女を事務所に連れて行き、大きめのトートバッグと持参したレジ袋に隠した商品をデスクに出させると、惣菜や健康食品、菓子パン、果物、ヨーグルトなど、計24点、およそ5千円相当の食品が出てきた。

――今日は、どうしたの?

「すみません。悪いことだとはわかっているんですけど、病気の影響だから仕方ないんです。どうせ吐いてしまうモノだから買うのがもったいなくて......」

 身分を確認させてもらうと、この店の近所に家族と住んでいるという彼女は、21歳の女子大生だった。捕まった経験があるか問うと、2週間ほど前にも万引きで捕まっており、その時は両親が迎えに来てくれて微罪処分で済まされたという。
 それをきっかけに家族との関係はギクシャクしてしまったようで、もし両親が迎えに来てもらえなかったらおばあちゃんに来てもらうと話していた。短期間での再犯は逮捕される可能性もあるのだが、無知なのか自分の立場を都合よく解釈しているようだ。

 多くの万引き常習者同様、同じ商品をふたつずつ盗っているので、その理由も尋ねてみる。すると、自分の好きなものをできるだけ多くストックしたいからと答えた彼女は、在庫がある間は食べ物がなくなる不安がなく気持ちが落ち着くのだとはにかんだ。

「学校にも行けなくなっちゃったので、ずっとひとりで部屋にいました。外出するのはこういう時くらいで、人と話すのも久しぶりなんです」

 若く可愛らしい女性が家族と接触することなく部屋に引きこもり、万引きするためだけに外出し、盗んできたモノを食べては吐き出すという毎日を送っている事実が重い。そんな日々を過ごしていれば、抱える病気も悪化の一途を辿るほかないだろう。


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――余計なことを聞くけどさ、どうしてそうなっちゃったの? ちょっと前までは、ちゃんと食べられていたわけでしょう?

「はじめはダイエットのつもりだったんですけど、失恋してから拒食と過食を繰り返すようになっちゃって......」

 生気を感じさせない真っ白な顔と痩せこけて突き出た目、そして割りばしのように細い手と脚をみれば、彼女の話が作り話でないことはわかる。それでも保安員の立場からすれば、これを最後にしてほしいという願いを込めて被疑者と接するほかなく、適切な治療を受けるよう勧めるくらいのことしかできない。

「病院にも行ってみたんですけど、お金がかかるし、治る感じもしなかったのでやめました。お金のことで家族に迷惑をかけるわけにはいかないので仕方ないんです」

 家族には迷惑をかけられないと今後も窃盗を重ねて生きていくつもりらしい彼女は、警察署で調書をとられたあと、母親が身柄を引き受けることで帰宅を許された。今回は簡易送致されたので、おそらくは罰金刑に処されることだろう。彼女が、万引きの呪縛から逃れる日は、いつの日か。刑務所に入る前に、心身の健康を取り戻してもらいたいものだ。(文◎伊東ゆう)

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