人は後ろめたい時に何回「正直」というのか 日大アメフト部・内田元監督と井上コーチの発言を検証

2018年05月28日 ぶっちゃけ 井上コーチ 内田正人 日大アメフト部 正直 記者会見 謝罪会見

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 怪我をさせられた関西学院大学アメフト部・QB奥野選手が男を見せました。復帰した試合後、「アメフトを辞めるな。また試合をしよう」というコメント。これがスポーツマンシップ。日大アメフトの前近代的指導とは真逆です。そして日大・宮川選手こそが篠竹元監督が言う、「侍」だったのではないでしょうか。二十歳の若さで一人で会見。答弁の内容も場所、日時など具体的でした(記者の質問がどうしようもないのがあったのでこれはこれで、ファクトチェックしました。http://tablo.jp/case/news003318.html )。

 それに比べて、日大の内田正人前監督と井上コーチの会見は、見るに堪えない、スポーツマンらしくない会見でした。一言でいえば、政治家の答弁のようでした。学生を見習えと言いたくなります。

 気になったのが「正直に言うと」という枕言葉を何回も使う点。「正直に言うと」は「正直に言っていない」から、時々出る言葉です。「正直に言う」のが前提の会見ですから、いちいち、この言葉を使う必要はないのです。
 会見でこのフレーズが出てきた時、僕は眉にツバをつけて聞くようにしています。取材や打ち合わせなどでも何回も「正直に言うと」はアヤシイ。何回も使う言葉ではないのです。一度くらいなものです。そこで、内田正人前監督と井上コーチの会見で何回「正直に言うと」を使ったかチェックしてみました。


ショージキ、「正直」の安売りが凄すぎ


 内田前監督「僕はその時、ボールを見てしまいまして、プレーの宮川選手のところを見ていなかったのが正直なところです。それであれよあれよと試合が進んでしまったのが正直なところです」(会見スタートから約10分14秒頃)。

 内田前監督「その時、正直言いまして、ビデオを見るまでどの程度の反則か正直、分からなくて。そのほかのときは正直、あの、抜け落ちていたのが正直なところです」(10分40~55秒頃)

内田監督「確かに(宮川選手は)来たのですが、彼が何を言っているのか正直分かりませんでした」(11分19秒頃)

井上コーチ「怪我をさせる事を目的としては、正直言うてません」(13分26秒頃)

井上コーチ「1プレー目で正直、向こうにボール(?)がいってああいう形っていうのは想定していなかった。ただ、そこで僕は彼をベンチを呼びもどすなり、正直その時は彼のその試合で僕は彼にやらしたかった」(15分26秒頃)

井上コーチ「最初から闘志を出して行けとか、正直、いろんな意味が込められていると」(17分22~32秒頃)

井上コーチ「試合二日前か、正直僕は彼に対して、向こうのQBは友達かとか」(17分58秒頃)

井上コーチ「心を育てるために正直、二日前練習をさせなかったり」(19分9秒頃)

井上コーチ「僕が同じ立場やったらそこは正直(ハウリング)......彼にとってはプレッシャーやったんやなと」(20分49秒頃)

井上コーチ「正直、僕はあの試合で彼が退場し試合終わって、彼が泣いていたところを見ても彼のために二日後に彼が辞めたいと漏らすまでは正直、じゃ、次どうしようと考えていませんでした」(21分6~45秒頃)。

井上コーチ「正直、つぶして来いと言うてます」(23分5秒頃)

井上コーチ「正直相手が怪我をするとかしないとか、正直そこは目的じゃなかったので」(24分46秒頃)

内田前監督「昔は(過激な言葉は)使っていました、正直申しまして」(26分40秒頃)

内田前監督「ルールを逸脱したような現象は起こっていなかったというのが正直なところでございます」(27分39秒頃)

内田前監督「(週刊文春の音声データに対し)あの時は正直言いまして資格没収という大きなペナルティがありましたので。(略)選手を守らなければならんというのが正直、あの時の僕の第一の目的です」(28分58秒頃)

内田前監督「正直言いまして、ビデオを見ないとあの当時は分からなかったんです」(29分14秒頃)

内田前監督「どのくらい(プレーが)酷かったのと正直(記者に)聞きました。酷さの加減が正直言いまして分かりませんでした」(29分22~30秒頃)

内田前監督「まさかああいう事になってしまったのは正直、予想出来ませんでした」(30分49秒頃)

井上コーチ「正直、彼の事を次のプレーにいかせたいというのが正直なところで」(32分20~39秒頃)

内田前監督「そういう純粋な考えでやっておりましたのでその場で正直言って考えておりませんでした」(47分40秒)

内田前監督「あの日で認識できたのは正直言いまして、最後の小競り合いで他のプレーは後でビデオで確認したというのが正直なところでございます」(50分00秒頃)

内田前監督「ネットにこういうビデオが出ているという報告がありました。何で? というのが正直な気持ちです」(50分53秒頃)

井上コーチ「正直、あのー、彼に色んな話をずっとしてきておりまして」(52分16秒頃)

内田前監督「(宮川選手の会見になぜ同席しなかったのか)出てくれという事であれば出たんですが、これはどうしようもないというのが正直なところです」(1時間05分44秒頃)

井上コーチ「(選手が)ベンチに帰ってくるときに、意味というのは正直なくて」(1時間06分46秒)

井上コーチ「頭をタッチした意味はですね、正直なくて」(1時間07分27秒頃)

井上コーチ「怪我という言葉を正直、どの場面で使ったのかは覚えていません」(1時間09分08秒頃)

井上コーチ「(怪我という言葉を使ったのかに対して)正直なところ......、怪我という言葉を使ったかというのは正直覚えていません」(1時間09分46~1時間10分00秒頃)


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宮川選手に対してどういう想いか


内田前監督「(宮川選手の会見をどういう気持ちで見ていたかについて)正直申しまして私も何回も繰り返しになりますが、四年生がよくやってくれて......」(1時間12分16秒)

内田前監督「不安定なところを我々が見抜けなかった、というのが正直なところです」(1時間15分44秒)

内田前監督「ネットで叩かれていたのは正直、非常にショックでした」(1時間19分47秒頃)

内田前監督「僕も正直言って、彼(宮川選手)もうちょっとやって日本を代表する選手になると思います。やっていればですよ」(1時間21分20秒頃)

井上コーチ「率直に言うと続けて欲しいと正直思っていまして。高校の時と彼に対する思いは正直何も変わっていないんで」(1時間22分55~1時間23分16秒頃)

内田監督「戻ってきてもらいたいというのが正直な意見です」(1時間25分12秒頃)

内田前監督「守り切れなかったというのが正直な結果だと思います」(1時間26分33秒)

井上コーチ「僕に何て言うてくるのかなと正直彼を見ていました」(1時間33分26秒頃)

内田前監督「どういう風になるのか正直言って我々の範疇を越えていまして」(1時間55分52秒頃)


 一般論になると「正直」は使用していませんが、「あの試合」に関して、もっと言えば「怪我をさせに行け」と言ったのか言っていないのか、という核心部分に触れると「正直」を連発しているのがよくお分かりになるかと思います。
 これは何を示しているのでしょうか。人は後ろめたい事を話すとき、あるいは本意でない事を話す時、「正直に」を過剰に発するのではないかと思っています。(文◎久田将義)

編集部調べでは「正直」の使用は、正直に数えて約50回でした!

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