2018年5月28日、神奈川県茅ケ崎市で90歳女性の運転する車に通行人4人がはねられ、57歳の女性1人が死亡、39~63歳の男女3人が負傷する事故が起こりました。(参照URL=http://tablo.jp/case/news003340.html )
運転していた斉藤久美子容疑者は「赤信号と分かっていたが、通行人が横断歩道を渡り始めていなかったので行けると思った」と供述したそうで、もう開いた口がふさがりません。この事故はちょっと"とんでも"すぎますが、高齢運転者による交通事故は本当によく耳にするようになりました。
そこで、今回は高齢運転者の現状がわかるデータをセレクトしてみます。
<グラフ1>警察庁「平成29年中の交通事故死者数について」の調査データをもとに、筆者がグラフ化しています
まず、グラフ1は65歳以上の運転者による死亡事故件数と全体比になります。事故件数自体は徐々に減少していますが、全体比は増加傾向。というか、死亡事故の5割以上が65歳以上の運転者というのは、ちょっとびっくりする結果です。
<グラフ2>警察庁「高齢運転者に係る交通事故の現状」よりの転載となります
そんな状況下において、高齢運転者の数は増えています。グラフ2は75歳以上の運転免許保有者数の推移を現したグラフで、平成17年は約236万人だったのが、平成27年には478万人に増加。平成28年からは推計値ですが、平成30年には530万人を超える見込みのようです。
<グラフ3>※MS&AD基礎研究所の調査データをもとに、筆者がグラフ化しています
そして、運転に関する高齢者たちの考えが伺えるのがグラフ3の調査。MS&AD基礎研究所が日常的に運転している全国1000人を対象に、「自動車運転と事故」をテーマにアンケートを行ったものです。そのなかの「運転に関する自信」という質問では、「かなり自信がある」「ある程度自信がある」「どちらともいえない」「あまり自信はない」「自信はない(不安)」の5つから回答。「どちらともいえない」を除いて、「自信がある」と「自信がない」に分類した場合、70歳以上の高齢運転者の多くが「自信がある」と考えていることが分かります。
これは運転キャリアの長さによる技術への自信や無事故歴の長さなどが理由だと推測されますが、「加齢による視力や反射神経の衰え」については思い至らなかったのでしょうか。
<グラフ4>警察庁「運転免許統計」の調査データをもとに、筆者がグラフ化しています
とはいえ、高齢運転者の交通事故が社会問題化したことで、申請による運転免許の取り消し件数、運転経歴証明書の交付件数は年々増えていることも事実です。
ちなみに運転経歴証明書とは、運転免許の自主返納後5年以内に申し込みをすることで、免許書に代わる公的な本人確認書類として利用できるもの。しかも、都道府県や団体によって条件は異なりますが、運転経歴証明書の提示でバス料金が割引されたり、商店街や施設の優待を受けられるなどの特典があるようです。
いろいろな事情があるでしょうから、「高齢者は運転するな」と一概に言えないのはわかります。でも、それまで普通に生きてきて、人生の終わりが見えてきたときに「容疑者」と呼ばれるのって、どんな気持ちになるのでしょうね。(文◎百園雷太)
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