万引きで6度目の服役となる井上正子 盗んだものはキズナ...ではなくお皿がもらえるシールでした

2018年05月22日 シール 万引き 菓子パン

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 スーパーでの万引きで逮捕され常習累犯窃盗の罪で服役していた井上正子(仮名、裁判当時60歳)は出所後わずか3ヶ月で再び再犯を犯しました。罪名はまた常習累犯窃盗です。
 常習累犯窃盗とは、窃盗罪・窃盗未遂罪にあたる行為を常習的にする罪です。過去10年間に3回以上これらの罪で懲役刑を受けた者が新たに同種の罪を犯すと成立し、有罪判決が下れば3年以上の有期懲役に処せられます。執行猶予はつきません。彼女は今までに5回の服役経験があり、それらは全て窃盗でした。

 今回彼女はスーパーではなくコンビニで、菓子パンに付いている40枚集めて応募するとスヌーピーのお皿が貰えるシールを7枚盗んで逮捕されました。防犯ミラーを通して犯行を目撃していた店長によると、掌に貼ったシールを隠そうともせずに堂々と店を出ようとしていたそうです。

「物に執着、欲しいと思うと我慢出来ない。スヌーピーのお皿がどうしても欲しかった」

 このように犯行動機を語っていた彼女は、逮捕された段階ですでに30枚以上のシールを集めていました。犯行時、財布には70,000円以上の現金が入っていて特に生活に困っていたというような事情もなかったようです。残り10枚のシールを集めるためにパンを買うことは出来ました。お皿が欲しかった、という彼女の言葉は盗んだ理由にはなりません。

 ではなぜ彼女は盗んだのか。その理由を明らかにしようと被告人質問では様々な質問が彼女に投げ掛けられましたが、返ってくる言葉は要領を得ないものばかりでした。


――何でシールを盗んじゃったんですか?
「何でって言われても...まずシールが目について、掌がそこにあったからですかねえ」
――お金はあったんだからパンを買えばよかったんじゃないですか?
「パンは家にもういっぱいあって食べきれないからいらなかったんです。シールは......シールっていうかただの紙切れだと思ってました」
――パンがいらなくても、パンを買わないでシールだけ持っていっちゃうのはダメだってわからなかったですか?
「シールのことしか考えてなかったです。パンを買うっていう......ああ、そういう発想はちょっとなかったですね」
――犯行までに30枚以上シールを集めてたみたいですけど、どうやって集めたんですか? これも勝手にとっちゃったんじゃないの?
「違います! ちゃんと買いました!」
――そうですか。じゃあ買わないといけないのはわかってたんですね。キャンペーンが始まったのが6月16日、犯行が6月21日、この一週間で30枚って随分パンを買ったんですね。これじゃ食べきれないでしょ?
「食べきれないけど...早くしなきゃ、って焦って気持ちが高ぶってました」
――キャンペーンが9月18日までなんですけど、焦る必要ってありますか?
「そこまで気がまわりませんでした」
――あと10枚ならすぐ集められましたよね?
「冷静に考えればそうだけど、その時、道に迷ってて自分が何処にいるのかわからなくて、早くいっぱいにして家に帰りたかったです」
――道に迷ったって関係あるんですか?
「雲の上を歩いている気分だったんですよ。自分でも覚えてないですけど」


 掌がそこにあったから、買うという発想はなかった、道に迷った、などとよくわからないことを話し続ける彼女からは自分が窃盗という犯罪を犯したという意識や反省の気持ちをほとんど感じられませんでした。

 家族とは音信不通になっていて今後彼女を監督する人は誰もいないことと、60歳という年齢を考えると彼女が更正できる可能性は限りなくゼロに近い気がしてしまいます。

 過去に5回の服役を経験しながら出所後わずか3ヶ月での犯行に及んだ彼女の盗癖は深化している、として検察官は懲役3年6ヶ月を求刑しました。それを聞いた彼女は最終陳述でこう述べました。

「もうね、私、頭かち割って死にたいですよ」

 この言葉からも、残念ながら反省の気持ちは全く伝わってきませんでした。(取材・文◎鈴木孔明)

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