「綺麗好き」万引き犯の呆れた言い訳　屁理屈をこねまくる男に家族はどう"整理"するのか

　事件当時無職だった清田亮(仮名、裁判当時32歳)は生活保護の申請が通り、簡易宿泊所で生活をしていくことが決定していました。しかし、彼は自分にあてがわれた部屋の汚さに我慢ができませんでした。彼は常にウェットティッシュを常備しているような綺麗好きな人間です。
　とにかく部屋を掃除しないといけない。そう感じた彼は掃除用品を手にいれるために近くの店にでかけました。

　この時の彼の所持金はわずか600円あまり。これでは欲しい掃除用品は買えません。
「バレなければいいや」
　彼は持参したトートバックにウェットティッシュ、消臭スプレー、軍手等を次々と入れていき、精算することなく店をでました。しかし、犯行の一部始終を見ていた保安員に店外で声をかけられ、彼は万引きの現行犯で逮捕されました。

　この窃盗事件の裁判が開かれたのが平成30年5月23日です。実は僕が清田の裁判を傍聴するのは二度目です。平成27年12月9日にも、彼が窃盗事件の被告人として裁判を受けていたのをやはり傍聴席で聞いていました。約2年半の時を経て、彼はまた法廷に帰ってきてしまいました。

　前回裁判の事件は、彼は自転車のライトを万引きしたというものでした。母親に会いに行くために自転車に乗っていた時にライトが点いたり消えたりすることに気づいて、途中にあったドン・キホーテで万引きをしたのです。この時もお金はほとんど持っていませんでした。
　当時、彼は上野のキャバクラ店で勤めていましたが『店の方針についていけない』という理由で無断で休んでいました。『強引な客引き』をさせられることに嫌気がさしたようです。しかし、彼はキャバクラの以前に勤めていた職場でも様々な理由をつけて辞めるのを繰り返していて、一つの仕事を長く続けるということはありませんでした。

　もし捕まったらどうなるのか、店にどんな迷惑をかけるか、そんなことを考えなかったのかと問われて、
「万引きをしているときは無我夢中で、他のことを考えている余裕はなかった」
　と供述していました。それほど無我夢中だった彼でしたが、防犯ゲートが作動しないように防犯タグを剥がす冷静さだけは何故か持ち合わせていました。今後、再犯をしないためにどのような生活をしていくつもりか問われた時には、
「今回の事件の原因は、職を転々として自堕落な生活をしていてお金を持っていなかったからだと思います。今後は、好きなネイル関係の資格を取ってネイル関連の仕事に打ち込みたいです」
　と話していました。そして公判の最後に言いました。

「もう二度と万引きはしないと誓います」

　前回裁判で資格を取り仕事に打ち込むと語っていた彼は2年半の月日を経ても、資格を取っていなかった上に、定職にも就いていませんでした。
　何故働かないのか。何故再び万引きをしたのか。彼によると、
「実は僕はタトゥーが入っていて、それを受け入れてくれる会社がありません。社会が僕を受け入れてくれないのが、今回の犯行に至ってしまった一番大きな原因だと思います」
　だそうです。

　今回の万引きでは、トートバッグに商品を隠して店外に出る前に、
「犯行を思い止まって店の出入口付近で2分ほど立ち止まっていた」
　と供述をしていました。おそらく、前回の事件のことを反省していない訳ではない、と主張したかったのでしょうが、実際は保安員を警戒して後ろから誰かに尾けられていないか確認していただけとしか思えません。今回の裁判でも彼に反省の色は見られず、更正できるとはとても思えませんでしたが、彼は公判の最後に言っていました。

「もう二度と万引きはしないと誓います」

　清田の母親は64歳です。夫と離婚し一人暮らしをしている彼女は今もコンクリートミキサー車の運転手として働いています。職にも着かず犯罪を繰り返す清田が少しでも親孝行出来る日は来るのでしょうか。母親は前回も今回も傍聴席で息子の裁判を見守っていました。（取材・文◎鈴木孔明）