寝そべって自分より身体の大きな西洋人を助ける漁師さん
助けたあとは一礼して颯爽と去っていく姿に誰もが感動
タイの海岸の干潟で泥に足を取られ動けなくなっていた外国人観光客を身を挺して助けたことでヒーローとして話題になった漁師が3年後の今、思わぬ境遇に陥っていたことから再び話題となっています。
2015年10月、ノルウェー人夫婦の観光客がビーチリゾートとして人気のタイ・クラビを訪れ、海岸の干潟で趣味の野鳥撮影をしていたところ、泥に足がはまり身動きが取れなくなってしまいました。それどころかゆっくりと体は沈んでいき、膝まで泥に埋まってしまいました。
人だかりができて騒ぎを知った地元漁師が2人のもとに歩み寄り泥から引き抜こうとしますがビクともしません。そこで泥の上に横に寝そべった自分の体の上に2人を這い上がらせることで救出したのでした。救出後、漁師男性はさっそうとその場を去り漁に戻ったことからヒーローだと当時タイでは話題となったのです。観光スポーツ省が表彰し、クラビ県知事や有名ニュースキャスターが慰労金を贈ると語ったことが報じられたほどでした。
その漁師男性チャット・ウドンジンダーさん(47)が3年後の今、再び話題になっています。地元メディアがチャットさんはノルウェー人夫婦を救出して以来、背中が痛むことから漁ができなくなり、日に千円あるかないかの収入で家族を養うという困窮に陥っていることを伝えたのがきっかけでした。
2人を助けた時に腰から背中にかけて痛みを感じ、その後悪化。病院の診察を受けたところ筋断裂と診断されました。チャットさんは体の大きな外国人が自分の腰に膝を押しつけて乗ったのが原因と見ていますが、人命救助をしたかったのでそのことについてはあまり考えたくないと語っています。
チャットさんが再び時の人となったのを受け12月18日、地元クラビ県知事が保健所職員を従えてチャットさんの自宅を訪問して激励するとともに応急的に日用品を贈りました。
さらには医師の診断によると週2回のリハビリで2か月後には症状が改善されるものの漁師の仕事に戻れば再び悪化させることになるとのことから、県知事は医師に対してチャットさんの治療を懸命にするように指示するとともに、関係職員に対して仕事の世話もするように命じました。
チャットさんの家族はシーフード料理の腕が良いことからシーフード料理関連の仕事になるかもしれません。
しかしいくら時の人とはいえ、県知事が一人の個人のためにここまで手を尽くすとは驚きです。法令や道徳観念、あるいは政治的思惑などどういったことが背景にあるのか窺い知れませんが、日本との違いが興味深いです。県からの手厚いケアを受けてチャットさんが収入の良い仕事を得られる日がそう遠くはなく訪れることでしょう。(取材・文◎赤熊賢)
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