「芸能界のドン」はいまだにドンなのか?
週刊文春11月30日号にこんな記事が載りました。
『レコード大賞を私物化したあの男は許せない』
「あの男」とは、「芸能界のドン」という呼び名がすっかり定着したバーニングプロダクション周防郁雄社長です。
レコード大賞は周防氏の鶴の一言で決まるという事態を作曲家の叶弦大氏が告発しています。記事を読んだ限り「周防氏の威光は変わらないんだな」という印象を持ちました。
2001年にバーニング事務所に銃弾を撃ち込まれた時はさすがに、あまり業界内で声を出す事はしないかと思っていました。
また、大日本親政會という右翼団体の会長が「狼侠」という本で、名誉棄損もいとわない論調で周防氏を徹底的に攻撃しましたが、筆者である笠岡和雄氏は仁科亜希子を脅迫した疑いで逮捕されました(この件と周防氏が関わっているのかは不明です)。
バーニングが芸能界を荒々しく席巻してきたのはは25年くらい前からでしょうか。当時もジャニーズは全盛。そこにDA・PUMPをぶつけてきました。歌って踊れるアイドルです。もろにジャニーズとかぶっていました。が、当時テレビ局はジャニーズ一色。さすがのバーニングもジャニーズ頼りの壁は厚かったという結果でした。
因みに僕の元上司は「Up to boy」(ワニブックス)というアイドル雑誌の編集長でしたが、当時のジャニーズの勢いをこう語ってくれました。
「楽だったよ。表紙に光GENJIを載せておけばいいんだもん。凄い売れたよ」
羨ましい話ですね。今の出版業界では考えられません。
バーニングを徹底追求した結果......
僕は2000年に「ダークサイドJAPAN」という雑誌を立ちあげました。「気にくわない人には気にくわないと言う」というコンセプトの媒体でした。2000年10月号で「バーニング系元社員の告発 メディアを支配しつつあるバーニングの脅威」という記事を載せました。
少し抜粋してみましょう。
「俺が(編集部注・筆者)現役のスタッフだった当時。周防社長が熱心に語っていた言葉がある。それはメディア制覇の夢だ。『出版や放送、レコード会社など、主だったメディアは四半世紀(25年)の間に全て制覇する。俺はあらゆるものを自分の足元に置かないと気が済まないんだよ(以下略)』」(『ダークサイドJAPAN』2000年10月号より)
と元系列社員の言葉を告発という形で載せました。その後何回かバーニングの記事を連続で載せました。配達証明で抗議が来るまで。そして当時僕が在籍していた出版社の社長が逮捕されるまで。
「ダークサイドJAPAN」の記事のせいで逮捕という話は『東京スポーツ』や『噂の真相』に掲載されています。
レコード大賞を思いどおりに操る周防氏の支配欲は、「ダークサイドJAPAN」の記事によると20年前。いやもっとそれ以上からです。
芸能界だけではありません。僕が政治経済専門誌の編集部に籍を置いていたころ、外線電話がかかってきました。たまたま僕が電話を取ったのですが甲高い声で「周防です。お中元を贈りました」と言ったのには少し驚きました。芸能界だけではないんだな...政治専門誌にまで触手を延ばしているんだな...と、変な話ですが、少し感心したのを覚えています。それだけその専門誌が政治・経済界に影響があったという事なのでしょうが。
バッシングと言えばサンデー毎日も激烈でした。北村肇編集長(当時・現株式会社金曜日社長)の元、執拗なバーニングバッシングを行いました。内容はかなり過激で、取材記者が何者かに尾行されたという話もメディアの間で出回りました。
このように、一部メディアのみでしかバーニングのバッシング記事は載せていませんでした。
しかし、今回は天下の週刊文春です。
今後の展開はどうなるのでしょうか。
芸能事務所からの名誉棄損裁判には強い週刊誌です。
半世紀でメディアを制覇する――周防郁雄氏の野望はかなったのでしょうか。
取材・文◎久田将義
関西でも活躍