嵐のメンバーも「履歴書の郵送」から...ジャニーズ入り後の苦難とは?

2014年03月20日 ジャニーズ 履歴書  平本淳也

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 芸能音楽プロダクションを営んでいると色んな方が面接に訪れる。夢を抱いてくるのは老若男女と様々だが、中でも最近特に増えているのはジャニーズ系だ。「系」といっても、オレのところに来るのは、正真正銘の「元ジャニーズ」ある。オレの後輩にあたる年齢10代前半から20代後半の連中が、ジャニーズを辞めて行くところがなく彷徨っているうちに、いろいろな偶然が重なってオレのところにやって来るケースがじつに多いのだ。「元ジャニーズ」というより、「元ジュニア」といったほうがしっくりくる男たちだ。

 何度かここでも書いているが、ジャニーズ事務所を辞めた人間というのは芸能界ではひじょうに生き辛い。「元ジュニア」を自由に扱えるプロダクションは業界のほんの一部であり、制作側からしても、「天下のジャニーズで落ちこぼれた男」という見方になってしまう。それ以上に余計なキャスティングをしてジャニーズと揉めたくない、という心理的ブレーキもかかる。もっともである。

 万に一つの確率と言われるジャニーズの門はひじょうに狭い。そもそも、その入り方さえオフィシャルとして発表されることがなく、長い間ミステリアスなものとして語られてきた。もっとも多いのは、ジャニーズ事務所に写真付きの履歴書を送り、「書類審査」という第一関門を突破して返事が来るというパターンだ。人気絶頂の嵐の場合は全員がこれに当てはまる。ちなみに本人で履歴書を送った「自薦組」が大野智、櫻井翔、相葉雅紀で、「他薦組」は、親戚が勝手に郵送した二宮和也、姉が郵送した松本潤だとされている。なんとなく、現在の彼らのキャラクターと合致しているように思えてくる。ジャニーズであれば、こうした「履歴書郵送エピソード」は誰もが持っている。

 だが、この狭き門をくぐったとしても、それはあくまでゴールではなく、スタート地点だ。ひょんなキッカケでジャニーズに入ってしまったら? それはそれでまた大変なのだ。

 履歴書を送って合格通知をもらい、オーディションに参加して選ばれて目出度くジュニアとなるものの、ジャニーさんのおめがねに叶うものはほんの一握り。それは今も昔も変わっていないが、やはりジャニーさんに個人的に可愛がられると忙しいくらいの仕事にありつけるうえ、収入もそこそこ頂ける高待遇が待っている。

 しかしいつの日からか、何かのキッカケでまったく声がかからなくなってしまう。小学生が中学生なる時や中学生が高校生になる時のタイミングが多く、ジャニーズで生き残るには「成長」さえも障壁となってしまうのだ。さらに挨拶の仕方や立っている時の姿勢、ダンスの上達具合などもシッカリ見られているので、残っていく人間は実力もありながら、アイドルとしての資質がある連中だ。

 オレの時代はまさに「ジャニーズファミリー」というに相応しいアットホームな雰囲気で、ジャニー喜多川さんを長とする家族のような組織だった。ジュニアの人数も精鋭のみ30人程度の規模だったが、現在は700人からの大所帯に変貌した。今ではジュニア同士の交流さえないとのことだ。また、世間一般では、「レッスン」として知られているジャニーさんが立ち会う基本的なダンス稽古や振り付けなども定期的には行われていないと聞く。どこでどう自分をアピールしていいのか。そんなジレンマに陥りやすいのが現代ジュニアの特徴でもある。

 そしてジュニア内には絶対的なヒエラルキーが存在している。その頂点に立つのが、すでに仕事を持った「レギュラージュニア」と呼ばれる連中だ。そして、その下を支えるのが無数の「ただいるだけ」のジュニアなのだ。

「レギュラージュニア」は露出も多く、ファンも付いていることから将来的にも有望視されるが、箸にも棒にも引っかからず、「ただいるだけ」となった連中となったら、自分の居場所もなくなってくる。定期レッスンもなければ、ジュニア同士の横のつながりもないので、自分が何のためにジャニーズに所属しているのか分からなくなってくる。

 そんなジレンマに陥って自らジャニーズ事務所を辞めていく男たちが、オレの元へ訪れるのだ。だが、そこで驚くのが彼らと会ってからだ。定期レッスンが行われていないので、歌えないうえに踊れないという信じられない「元ジュニア」ばかりなのだ。やはり、ジャニーズで落ちこぼれるには理由がある。こんなところに、ジャニーズ・ジュニア内の格差社会を感じずにはいられなかった。

 ジャニーズ事務所は歌手や俳優、あるいはダンサーやモデルや声優を育てたいわけではなく、ジャニーさんが信じるエンターテイナーの理想像「ジャニーズのタレント」を作る、唯一のプロダクションだ。「履歴書郵送」という入り口も狭き門だが、入ってからもさらに大変なのだ。

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「帰ってきたカルチャースタァ☆平本淳也」

Profile●ジャニーズ出身の実業家、作家、投資家。10歳でジャニーズ事務所から芸能界入り、30歳過ぎまでアイ ドルを続け、現在もテレビや雑誌で活躍を続けるなか、月間100万アクセスを獲るカリスマブロガーとしても知られる。22歳のときに物書きデビューして以 来、34冊の書籍を発表。http://ameblo.jp/junya-hiramoto/

Written by 平本淳也

Photo by Romain Toornier

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