ビートたけしの独立に端を発し、オフィス北野という会社の体質が話題になっています。筆者の私は、ある時代、オフィス北野に所属する芸人のライブや制作番組のお手伝いをしていた時期がありました。その経験から、多少はどういう会社なのか肌感覚として理解できる部分があります。
芸能事務所というのは、吉本興業を筆頭に大方が体育会系で、先輩・後輩の厳しい上下関係が存在し、一般社会の理解を超えたルールが存在しています。一例を挙げれば、先輩芸人を笑わせるために食い逃げを繰り返した芸人がいたくらいです。
その中で、オフィス北野には異次元過ぎるルールが存在しているように思いました。もっともそのルールを感じたのが鉄拳制裁です。よく、水道橋博士が著作の中で語っている"鬼軍曹、ダンカン"からの厳しいシゴキは有名ですが、それは二人だけの話ではありません。付き人についた複数の後輩芸人をはじめ、マネージャーから芸人、芸人からマネージャーという関係性でも発生していました。
もっとも印象に残っているのが、"暴力"とは無縁のように見える芸人Mからマネージャーへの鉄拳制裁です。当時、Mは一時期の人気が落ち込み、テレビへの露出よりもイベントや芝居へ活路を見出そうとしていた頃だったと思います。よく、後輩芸人にも昼夜を問わず電話をかけては芝居のチケットを売って欲しいとお願いをしまくっていました。後輩芸人は後輩芸人で、Mの愛くるしいキャラクターに免じて「面倒くさいですよー!」とハッキリと返答しながらも、嫌々ながらチケットを売っていたのを覚えています。
そんな頃、Mを担当していたマネージャーから会社に陳情が出たと言います。そのマネージャーさんがどんな人物で、どんなヘマをやらかす人だったのかは分かりませんが、とにかく注意をされるときに暴力をふるわれたと。それに対して、会社はM担当から外すことで対処をしたそうです。
Mですらこんな状況だったので、ほかの武闘派揃いのメンバーなら、どんな制裁があったのか......。軽く見積もっても、相当な苦労があったのではないかと勝手に想像し恐ろしくなったのを覚えています。
そのように考えていくと、普通の芸能マネージャーの報酬では割に合わなかったのではないか。たとえ、年齢やキャリアに見合わない報酬を得ていたとしても、それが妥当だったのではないかと、この騒動を見ながら感じてしまいました。(文◎石田健康)
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