ブログで書かれて、ツイッターで拡散された、芥川賞作家柳美里さんの「月刊創」の連載料が数年にわたって支払われていない件だが、僕も原稿料をチェックし、経理に届けるという作業、いわゆる編集長の職務であるが、それを十五年以上やってきた。
ただし『月刊実話ナックルズ』の場合、ページごとに様々なデザイナーさんが担当し、ライターさんもかなりお仕事をして頂いていた。巻頭のカメラマンさんも同様である。つまり、毎月、数十人のギャラを記載しなければならない。原稿料をつけるのも一大作業で下手をすると、一日がかかりになってしまうものだった。
ただし、編集の仕事というのは、「原稿発注、入稿、本が出来上がるまでで」はなく、ギャラを支払ってまでが仕事だと思っている。さらに言うとその後の抗議などの処理も含めて、であるが。
「原稿料のつけもれ」も出てくる。その場合はライターさん、デザイナーさん、カメラマンさんは担当編集に電話をし、僕が恐縮しつつ慌てて経理に持っていき、翌日にお支払するという事があった。しかも僕は、EXELが使えず、手書きなので、字が読めないと経理からよく苦情が来たものだ。
ただ、連載陣の「つけもれ」はほとんどなかったのではと記憶している。なぜなら、毎回つけていれば、習慣としてライターさん、コーナー名は覚えるものであり、まずは連載陣から原稿料をつけていたからだ。だから「つけもれ」があるとするなら、新規のライターさん、カメラマンさん、デザイナーさんの場合だったと思う。
そういう僕が伝統ある「月刊創」の原稿未払いについて言うのもおこがましいが、未払いの噂は数年前からあった。十年以上前に、創出版社長篠田さんから配達証明の抗議文を頂いた。僕としてはわだかまりがあったのだが、その事をすっかり忘れた様子でイベントで共演している篠田さんを見て、「この人はこういうのんびりキャラ」なんだなと拍子抜けしてしまっていた。
去年、「原稿を書いてくれないか」と言われた時、「『君の著書「関東連合」の宣伝も兼ねて書いてよ』と付け加えた。「ああ、原稿料払わない気なんだな」とすぐ悟ったが、OKしてしまった。数年前から原稿料払わないという噂は耳にしていたし、「そういうキャラ」なんだなと一人で納得してしまっていたからだ。僕の場合は、悪い意味で「物分りが良すぎた」のだろう。
毎月、入る定期的なギャラは生活する上で非常に重要だ。連載のギャラの未払いはちょっとキツ過ぎる。因みに、不定期連載気味に「創」に掲載している某人物に聞いたら「払われたり、払われなかったりだね」という事だった。
ツイッターを見ると阿曽山大噴火さんはギャラが払われている仰っているので、これの意味は篠田編集長に聞かないと分からないが、多分こういう問題は出てくるだろうなとは感じていたが、さすがに柳さんクラスには支払っていると思っていたのだが......。たまに、様々な社会問題についてのシンポジウムのお誘いのメールを頂く。シンポジウムももちろん大事だがギャラの支払いはもっと大事だと思うのは僕だけだろうか。
Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)
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