「餃子の王将」社長が25口径の拳銃で射殺されたニュースが話題になっているが、裏社会の取材をしていると銃器に関する情報に接することも多い。時には取材対象者から「金に困っていて20万円でチャカを買ってくれないか」などという本気なのか罠なのか判断のつかない誘いを受けることもある。
たびたび暴力団同士の抗争が繰り広げられていた一昔前は拳銃の必要性が高かったが、現在はそう簡単に銃を振りかざせるはずもなく、その割に刑期の重い銃器の扱いに困っている組織もあるようだ。
確実に懐に銃を忍ばせている人に接したことは何度もあるし、おそらくこの中に銃が入っているんだろうなという場所を目撃したこともあるが、実際に国内で目の当たりにしたことは一度しかない。
その人物は「ヤクザ」「シャブ中」「銃マニア」という三拍子揃った危険人物で常に銃を携帯していた。シャブ中特有のよどんだ眼差しで「試し撃ちさせてやろうか」などと銃をチラつかせるのだから困りもので、勘弁してくださいと逃げるのに必死だった。現在、銃に関する罪で服役中だが、それも当然である。
また、「一発拳銃」と呼ばれる単発式の改造拳銃の取材をさせてくれるという話があり、珍しいものが見られると喜んでいたが、その仲介者は約束の場所に現れず、待ちぼうけを食らわされたことがある。
あとあと連絡がついて話を聞くと、関西の暴力団関係者に一発拳銃を運ばせ、東京駅まで新幹線で来たのだが、ちょうど数日前に指名手配犯が都内に潜伏中という情報があり、東京駅のホームに上がる階段の脇に私服警官が何人も立っていたという。目立たないグレーのジャンパーを着ていても、皿のような目を水平に動かしながら周囲を探っている刑事の姿はわかりやすい。
そのため、一発拳銃を持った人間が新幹線の改札に向かってくる姿が見えた瞬間、仲介者は自分の額に拳を持っていき、すぐにその手を振り払うようなジェスチャーをした。額に拳を当てるのは「デコ」、つまり警察を指す隠語である。それを払ったことで「警察がいる。散れ」という合図を送ったのだ。一発拳銃の運び屋は関西にとんぼ返りすることになった。
「申し訳ない。もう少しで取材させることができたのに」
仲介者は平謝りしていたが、そんな危ない橋を渡って無理に取材をして相手が捕まったりしたらそれこそ目も当てられない。「滅相もございません。二度と拳銃など持ってこないでよろしい」と言いたい心境であった。
また、知り合いのジャーナリストは北関東の組織に取材に行ったとき、やけに気に入られてしまい、「あんただったら信用できる」と言われ、拳銃どころか機関銃や手榴弾まで披露されたことがあると言うし、海外から違法薬物などを仕入れてさばいていたブローカーは銃の試し撃ちが好きで、小型船で海に出ては空き缶を浮かべて撃って遊んでいたというから、裏社会と銃器はやはり密接な関係がある。
ちなみにわたしも韓国の室内射撃場で銃を撃ったことがあるが、その時、射撃場の職員にこんな質問をした。
「室内で撃つと音が凄いらしいですが、そんなに凄いんですか?」
職員はわたしを試すようににやりと笑い、「試してみたらいい」と言うので、こちらも頭に来て耳当てをせずに射撃に臨んだ。引き金を引くと、鼓膜に鉄の棒を突き刺されたような爆音に頭がしびれた。職員は言わんこっちゃないという顔で笑っている。
「耳当てするか?」
わたしは首を横に振った。
「これぐらい余裕だから、このままでいい」
最後まで弾を撃つと、職員は驚いた顔をしていた。わたしは平然とした顔付きで射撃場を後にしたが、しばらく耳鳴りがしていた。心中は意地を張って耳当てしなかったばかりに射撃に集中できなかったじゃないかと嘆き節でいっぱいである。
ま、銃に関する話は書きにくいことも多いので、全体的に小ネタを散らした感じで失礼しまーす。
Written by 草下シンヤ
Photo by wikipediaより引用
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