2020年のオリンピックが東京に決まったが、直前まで「福島第1原発の汚染水漏れ」がツッコミの激しい海外メディアで注目されていた。
私は今「ツッコミの激しい海外メディア」と書いたが、元来報道する側ってそういうもののはず。
というのは、今回の汚染水問題で「海外メディアの追及に日本はどう答えるのか」という論調が日本にあったのが不思議だったのだ。
なぜ海外メディアの虎の威を借りるのだろう。なぜガイアツ(外圧)頼りなのだろう。自分達がまず厳しくツッコめばよいではないか。
この感じ、つい最近もあった。
従軍慰安婦問題で物議をかもした日本維新の会・橋下徹代表の日本外国特派員協会での記者会見だ。
あの時も「海外メディアの記者の激しい追及が注目される」という論調で日本のマスコミは固唾を飲んでいた。なんなら期待してる雰囲気だった。最初から自分達が橋下徹に堂々とツッコめばよいのに。
「外国人記者頼み」の最たる例は「田中角栄金脈スキャンダル」にさかのぼる。
1974年の文芸春秋11月号に、立花隆による「田中角栄研究 その金脈と人脈」という記事が載った。日本のマスコミがその記事について報道することはなかったのに日本外国特派員協会での記者会見で追及されて火がついた。あの記者会見にどんな国際的な思惑があったのかはともかく、あの後やっと日本メディアが動いたのは確か。
さて。
「外国人のツッコミは容赦ない」と前フリしてきたが、ここで逆の見方を提起したい。
IOC総会での最終プレゼン。東京のパフォーマンスは絶賛された。安倍首相は「福島について、状況はコントロールされています。」と述べた。しかしそのあとノルウェーのIOC委員が「根拠を示してほしい」と質問が出た時は「さすが日本の痛いところをきちんとツッコんでくる」と誰もが思った。
あの質問に安倍首相が数字を列挙して「安全」を宣言したことによって多くのIOC委員が納得したと伝えられる。
私はハッとした。「もし、あのノルウェーのIOC委員の質問が「ツッコミ」ではなく日本への「パス」だとしたら」と。
調べてみるとあの質問者の名前は「ゲルハルト・ハイベルグ」という。94年リレハンメル五輪組織委員会会長を務めた大物。しかも現在はIOCのマーケティング委員長を務める。
マーケティング委員長......。これは何を暗示するのか。検索してみると昨年7月に、『マーケティング委員長を務めるゲルハルト・ハイベルグ氏がロイターのインタビューに応じ、IOCが五輪スポンサーへのアジア企業の参入拡大を目指して、中国企業と契約交渉を行っていると明らかにした。(略)また、韓国や日本企業とも交渉していると述べた。』
という記事があった。
もし安定したスポンサーを獲得するのが氏の任務なら、日本でオリンピックをすることは確実にスポンサーが見込める「楽な展開になる」のではないだろうか。
だとしたら、氏は東京開催を支持する。
そこで他の誰よりも早く「汚染水」について質問する。それにうまく安倍首相が答えて周囲に「安全」をアピールし、他の委員の不安を払しょくする。
あれは厳しい質問と見せかけて本当は「セレモニー」だったのではないか?
すべてが終わったあとハイベルク委員は「風評が耳に入っており、誰かが聞かなくてはならなかった。首相は問題をきちんと理解し、答えは的確で、危険がないことが伝わった」とコメントしている。
私は「セレモニー疑惑」を糾弾しているのではない。
「ロビー活動が不得意だった日本が今回は頑張った」と伝えられているのなら、もしその実例があの「最後の質問者・ゲルハルト・ハイベルグ」を抱き込んでの作戦だったと想像してみたら......。
なかなかの推理小説、トリックではないか。
というわけで、ハイベルグ委員がイスタンブールに投票していたら本当にただの下世話な妄想話でした。
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Written by プチ鹿島
Photo by IOC: オリンピックを動かす巨大組織