Photo by 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(DVD)
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(マーティン・スコセッシ監督)はご覧になっただろうか。
原作はジョーダン・ベルフォートの『ウォール街狂乱日記―「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』という回想録。
ウォール街で猛烈なスピードで成り上がり、転落していく男をレオナルド・ディカプリオが熱演。
ハチャメチャすぎて清々しささえ感じるこの人生、日本で対抗できるのは誰だろう。私は千代の富士(九重親方)しかいないと思う。
中学生の頃「飛行機に乗せてあげる」と親方に言われて上京した北海道の少年はそのまま相撲部屋に入門した。この時点でもうハチャメチャ! 子どもの頃にこのエピソードを「相撲大百科」で読んだ私は、相撲界に心底ビビった。
幾多の怪我を克服したあとの千代の富士のスピード出世といったらなかった。
初優勝した1981年初場所、北の湖との優勝決定戦の視聴率は52.2%、ハチャメチャなウルフ・フィーバーを巻き起こす。そのあと国民栄誉賞まで受賞した『ウルフ・オブ・ウォールストリート』大横綱伝説。
それほどの英雄がなんと今年1月の相撲協会理事選で落選したのだ。いったい何が!?
《国民栄誉賞に輝いた優勝31回の大横綱で、実績や知名度を考えれば、落選は波乱と受け取れる。だが、相撲協会内の力学から見れば予想通りだった。配慮を欠くような言動で親方衆の信頼は薄かった。》(2月1日・デイリースポーツ)
スポーツ紙は遠慮がちに「配慮を欠くような言動」と書くが、あれだけ実績ある人が落選するくらいなのだから、映画のディカプリオに負けない成り上がりのふるまいが日常的にあったのだろう。なんとなく、わかる。千代の富士(九重親方)を同時代で見てきた世代なら。
しかし、それはそれとして、落選の別の理由が出てきた。それが「北の湖理事長の右腕といわれる相撲協会顧問X氏の謀略」説である。
「X氏の理事選での狙い? ずばり九重親方の失脚です。協会の実質ナンバー2で、X氏のやり方に猛反対しているからです。X氏にとっては目の上のタンコブ。だから理事選で落選させ、その影響力をそごうとしている。」(1月31日・日刊ゲンダイ)
人望の無さにプラスし、この仕掛けによって千代の富士は落選したという。しかし事態は急変する。X氏の「裏ビデオ」がユーチューブに流出したのだ。パチンコ業者から500万を受け取る生々しい現場が何者かによって公開された。
遂に朝日新聞も3月7日に報道した。
《日本相撲協会の顧問がパチンコ業者との肖像権に関わる契約を巡って現金を受け取る動画がインターネットに流出している問題について、相撲協会は6日の理事会で協会の「危機管理委員会」(委員長=宗像紀夫・元東京地検特捜部長)が、情報収集に当たることを確認した。》
記事の続きがアッと思わせる。
《理事会では、九重事業部長(元横綱千代の富士)が調査を求めた。動画には、50代の協会顧問が業者との仲介をしていた広告会社男性から現金を受け取る映像が映っていた。理事会後、九重親方は「名前が出てきた人(協会顧問)のためにも、ちゃんと調査をすればいい」と語った。》
これは......。北の湖側に対する千代の富士の逆襲なのか!?
《九重親方の理事職任期は今月末まで。その前に裏金問題を調査させ、顧問と理事長を失脚させるのが目的なんです。理事のイスが1つ空けば、自分が返り咲けると踏んでいる》(3月7日・日刊ゲンダイ)
もしこれが本当なら、春場所真っ最中のいま、土俵よりも激しいガチンコ相撲が北の湖と千代の富士のあいだで繰り広げられていることになる。視聴率52.2%をとったあの大一番が! キムタクの「宮本武蔵」を見てる場合ではない。
千代の富士がうっちゃりを決めるのか、やっぱり北の湖が寄り切るのか。相撲版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、千代の富士(九重親方)の理事職任期が切れる3月末まで絶賛公開中です。
【前回記事】
清原に薬物疑惑報道、番長キャラの功罪か!? プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.34
Written by プチ鹿島
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。ニッポン放送「プチ鹿島と長野美郷 Good Job ニッポン」金曜18:00-20:50 ◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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