毎年この時期になるとテレビにはお馴染みの光景がある。多くの人が楽しみにしているのが「山ちゃん卒業」だ。
「ガキの使い」(日本テレビ)で、春の改編期前に放送される名物企画。山崎邦正(月亭方正)さんが番組を卒業するという発表があり、粛々とお別れの儀式が進む。降板の理由はよくわからないが、最後に長いメッセージを放つ。ワンマンショーも始まる。共演者をきょとんとさせる。
しかし最後に「山ちゃんは辞めへんで~」と絶叫して放送は終わる。今年も「無事」におこなわれた。もともとは視聴者へのドッキリだったというこの企画、回を重ねるほどバカバカしくてたまらない。
さて、今年は「山ちゃん卒業」の2日前に、似たような光景が他局で放送された。「古賀ちゃん卒業」である。27日のテレビ朝日「報道ステーション」でそれはおこなわれた。元経済産業省官僚の古賀茂明氏が、
《これまで本当に多くの方に激励していただいた。一方で菅官房長官をはじめとして、官邸のみなさんのバッシングを受けてきた。それを上回る応援で楽しくやらせていただきまして、本当にありがとうございました。》
と自身の番組降板について突然言い始めた。きょとんとする古舘伊知郎。古賀氏はさらに「I am not AbeI」や「マハトマ・ガンジーの言葉」をフリップで出し、ワンマンショーを始めた。困惑し、見守るしかない古舘。まったく「ガキ使」と同じ。
ただ、今回の騒動にはどこか既視感もある。古賀氏は3年前の2012年にも「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日)のコメンテーターを降板させられる、と主張して注目を浴びた。そのあと「無事」復帰して、
「一人一人の力は小さくてもみんなで動けば世の中が変わることがわかりました。財務省や電力や民主党の圧力は悪質化してます。いろんなルートで。 闘ってる人たちは孤立しがち。みんなの応援が命綱です。」(2012年3月23日)
とツイッターでつぶやいた。政治的な状況やら憶測をいっさい省き、「コメンテーター・古賀茂明」のキャラだけを考えてみると、「卒業」に対して抗うのが古賀茂明芸であることがわかる。「山ちゃん卒業」に対抗できるのは「古賀ちゃん卒業」しかない。
番組を卒業するという発表があり、長いメッセージを放つ。ワンマンショー(フリップ芸)を見せる。きょとんとする現場。古賀茂明の独壇場。
こうなると、「古賀ちゃんは辞めへんで~」と絶叫するラストもやっぱり見たくなる。毎年3月に「報道ステーション」でやってほしい。
Written by プチ鹿島
Photo by 田原総一朗責任編集 決別!日本の病根 (オフレコ!BOOKS)
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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